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木村主審のアクシデントに対する横浜F・マリノス喜田選手の心遣いと神対応

みなさんこんにちは。家本です。

8月7日のフロンターレ v マリノス戦は、日本を代表する両チームらしい本当に素晴らしい試合でした。得点も全てスーパーゴールでしたよね。そんな中、これまで見たこともないような美しい光景を目にしたので、note することにしました。

それは、74分の "アクシデント" から生まれました。

川崎Fのコーナーキックから遠野選手がシュートを打ってゴールキックになったとき、この試合を担当していた木村 博之主審が急に足を気にした素振りをみせました。

多くの選手がゴールキックに備えて陣形を整えようとする中、横浜FMの喜田選手はその異変にいち早く気づいて、木村主審に声をかけました。

喜田選手と会話をした木村主審は、直後に笛を吹いて試合を止めました。その後すぐに、川崎Fの小林選手が木村主審のもとへ歩み寄り、声をかけたり配慮ある仕草を見せているタイミングで、喜田選手は "木村主審が交代" というゼスチャーをベンチ方面に向かって行いました。その後、続々とダミアン選手、高丘選手が木村主審のもとへ歩み寄って声をかけました。フロンターレ、そしてマリノスらしい光景でした。

レフェリーには専属のドクターやトレーナーがいないので、試合中に負傷したとしても負傷の程度の確認や処置は行われず、自分でどうするか判断して自分で決断しなければいけません。

このときも木村主審自身がどうするか決断したと思いますが、それを受けて喜田選手の判断で、自チームのドクターやトレーナーに声をかけ、横浜FMのチームドクターやトレーナーの方が木村主審の負傷の程度の確認を行われていました。喜田選手のリーダーシップや心遣い、そして的確かつ迅速な判断と行動力は、選手として、人として、理想といえる素晴らしいものでした。

その後木村主審は、痛めた足をかばいながらゆっくりとフィールドを出ました。フィールドを出たところに真っ先に鬼木監督が、その後ケヴィン監督が木村主審に声をかけていました。こういったシーンも国内外含め、僕は見た記憶がありません。両監督の人柄が表れた、素晴らしい心遣いだと思いました。

会場におられた方はいったい何が起きているのか、今どういう状況なのか、よくわからなかったと思います。とはいえ、応援している選手たちの様子から「何らかのアクシデントがおきている」ことは感じられたと思います。

この木村主審のアクシデントによって急遽出番が回ってきたのが、まだJ1の主審を一度も担当したことがない、この試合の4thオフィシャルを担当されていた佐藤 誠和さんでした。

川崎F v 横浜FMという日本を代表するチーム同士のビッグゲーム。それまで素晴らしい試合が行われていたことに加えて1-1の緊張感ある試合状況。自分がこのハイクオリティの試合で主審をすることなど全く想像も想定もしていなかった中での突然の交代。本当に複雑かつ不安いっぱいの心境だったと思います。

突然のアクシデントだったので、佐藤さんは心と体のウォーミングアップも全くできないまま主審を務めるわけですが、そんな不安いっぱいの佐藤さんを少しでも何とかしようと思ったのか、まずはケヴィン監督が佐藤さんをグータッチで、続いて鬼木監督も佐藤さんをグータッチで送り出しました。こちらも、ケヴィン監督、鬼木監督の人柄がよく出ていた本当に美しいシーンでした。

たいてい、審判をされている方が負傷して代わりの方がフィールドに入られる場合、「みんなに迷惑をかけられないから、とにかく早く試合を再開させなきゃ!」と焦って、パニック状態のまま試合を再開することが多いのですが、佐藤さんは違いました。

まず両チームのキャプテンに声をかけて、協力をお願いしました。谷口キャプテンも喜田キャプテンも、この試合の意味も今の状況も十分わかったうえで、佐藤さんを温かく迎い入れました。佐藤さんのこのアイデアは、本当に素晴らしいアイデアでした。なかなかできるものではないです。そういうことからして、心配をしているのは僕を含めた周りだけで、実は佐藤さん自身は、冷静かつやる気に満ち溢れた状態だったのかもしれません。本当に心の強い方です。そういう佐藤さんの素晴らしい機転とパフォーマンスと両チームの選手たちの理解と協力もあって、その後の試合はそれほど難しくなることもなく、川崎Fの劇的な勝ち越しゴールで試合は終了しました。

僕はこの試合とこの状況を DAZN でリアルタイムで見ていたのですが、喜田選手はじめ、多くの方の木村さんと佐藤さんに対する配慮や心遣いに胸がすごく熱くなりましたし、フットボールの美しさや素晴らしさを目の当たりにすることが出来ました。

木村さんの負傷が元になっているので言葉を選ぶ必要はありますが、フットボールはどうあることが望ましいのか、勝負以外に大切なことはあるのか、選手や関係者が取る行いはどういったことが望ましいのか、人は何に感動して胸を熱くするのか、というようなことを考える上で、とても参考になるといいますか、考えさせられたシーンでした。

別の言い方をするならば、スポーツマンシップとは何か、リスペクトとは何か、フェアネスとは何か、ということを喜田選手をはじめ、両チームの選手や監督、スタッフ、そしてファン・サポーターの方が示して下さったと思います。

木村 博之さんの軽傷と、一日も早い回復を願いながら、この試合に関わった全ての方に敬意を表します。美しさと誠実さ、そして心が熱くなる感動をありがとうございました。佐藤 誠和さんも大役お疲れさまでした。素晴らしいパフォーマンスでした。

最後に、喜田 拓也さん。あなたは本当に素晴らしい選手であり、模範となる選手です。そしてそれだけではなく、素晴らしい人間性を持っておられる方です。心の底から尊敬していますし、かつて同じフィールドに立てたことを光栄に思います。これからもチームのために、日本サッカー界のために、もっといえば日本社会のために、喜田さんらしい素晴らしいプレーと行動を続けていって下さい。元審判としてではなくひとりの人間として、喜田さんのことをこれからもずっと応援しております。


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