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何をするかではなく誰と働くか

毎年この時期に思い出す言葉がある。

よくある話だが僕も20代後半くらいのときに会社を辞めようか悩んでいた。
当時一緒に働いていた人たちは良い人ばかりで大好きだった。

でも、「ずっとこのまま会社にいていいんやろか?」と不安になった。
仕事にも慣れて社内の評価も高い方だった(はず)。
同級生とか社外の友人たちを見ると、なんか凄そうな実績を残していたり、海外に赴任したりしていて。羨ましくて焦ってしまって、取り残されている感じ。ちょうど今くらいの春直前のソワソワする時期だった。

僕は思い切ってそのときの上長(Aさん)に相談の時間をもらった。

Aさんはいわゆる社内のライジングスター(死語?)的な人で、社内の軋轢なんかものともせずに次々と変革を行っていた。

カッコよくて憧れていた。

僕の何を気に入ってもらっていたか分からなかったが、ずっと目をかけてもらっていた。
いただいた時間の中で、自分の思いの丈を話した。

「仕事は楽しいし、やりがいもあります。
でも、、何か足りないんです。。
何が足りないのか分からない。
頑張って将来いつかあなたみたいになりたいけど、今の環境にいても一生追いつけないと思う。
だから違う経験をした方がいいのかなと思うし、自分の視野を広げるために違う世界に飛び込みたいんです。」
みたいな。

30分くらい、20代のただただ溢れ出る心の内を話した。いま振り返れば稚拙で若過ぎる発言の数々。
すごく勇気を振り絞って話した。
Aさんはずっと黙って聴いてくれた。
(ちなみに普段の会議では結構ぶった斬られていたが、このときは全く口出しせずに傾聴してくれた。)

Aさんは少し間をおいてゆっくり話してくれた。

「気持ちはめっちゃ分かる。俺が津田と同じ歳で今の立場なら同じように行動すると思う。津田がそうしたいなら、今すぐそうすべきだよ。」

「えっ。。?」
少々面食らった。
なんなら少し引き留められるかと覚悟していたけど、
「あれ、俺会社辞めんの?」

みたいな感情に一瞬なった。自分で言ったくせにと(笑)

その後もしばらく話していると、
「この人は本気で僕の立場や価値観を理解して一緒に考えてくれている。」
そう話し方や態度から伝わってきた。

Aさんは、さらに言葉をかけてくれた。

「ただ一つだけ。いま津田は将来自分が何をするか、何ができるかとか、自分のことしか考えられてないように見える。俺は、"何をするかよりも誰と働くかが大事"だと思うよ。次の会社に行ってもそれが一番大事だよ。」と。

”それが一番大事マンブラザーズ”の歌が頭に流れる中、若過ぎた僕にはこの言葉に込められた真意がよく分からなかった。

でも、僕の話に真摯に向き合って、誠実にアドバイスをくれたAさんに感動し感謝し、

「こんな人は世の中にそういない。まず、この人にちゃんと恩返しをして、いつかこの人に認められるような仕事がしたい。でないと後悔する。」と思い会社に残ることにした。
自分で言うのもアレだが生真面目な男である。

そこからの僕は迷いが吹っ切れてAさんや会社に恩返しをするため、認められるために、できることを考えて寝る間も惜しんで本気で仕事に向き合った。その中で少しは成長できたように思う。

辞めるか迷っていたときは、自分を育ててサポートしてくれる周りの人に感謝もせず、ただ自分のことだけ考えて狭い世界にいたことに気づいた。そしてようやくAさんにもらった言葉の真意が分かってきた。

Aさんは「俺と働いた方が勉強になるよ。」と言いたかった訳ではなく、
「もっと周りを見ろ。一緒に働いている人から学べ」と言いたかったんだと気づいた。
会社や組織には色んな人がいる。

できる上司も、先輩も、同期も、後輩も、変わった人も、普通の人も。誰にでも良いところや学ぶべきところがある。

良いところを見習って周りの全員から学んでいく姿勢が大切。

それは自分の仕事が何であろうとできることだし、貴重な人生の時間を使って働く上で最も大切なことだと。優秀な人の下でカッコいいやりたい仕事をやれば勝手に成長するなんて幻想でしかない。

どんな内容の仕事でも結局自分次第なんだと。

それに気づいてから社内外で関わる人の良いところを探して、どんどん真似るようにしていった。人と関わるたびに学びがあり、今の自分は自分と関わってきた人が創っていると言っても過言ではない。

あのときのAさんの言葉があるから今の自分があるし、いつでも誰とでも楽しく働けていると、あの言葉に感謝し続けている。

40代突入を節目に会社を卒業して今の会社を新しい仲間と創業した。前の会社で学んだことを軸に、もっと色んな人と関わりながら成長し続けたいと思ったからだ。日々出会う社外の経営者や担当の方、大好きな社内メンバーと日々切磋琢磨しながら僕はまだAさんの背中を追いかけている。

「働く」とは、「人と動く」ということ。

何をするかではなく、誰とどう働いてどれだけその人たちから自分が多くを学べるか、それに尽きる。

それが、人が働く本当の意義であると思う。

春は別れと出会いの季節。

新しいフィールドに立つ人も多いと思うけど、仕事の内容に囚われず、周りの人とどう調和して一緒に成長していけるかを考えれば、きっと惑わずに自分の道が開けると思う。

働くを楽しもう。
人と関わることを楽しんで生きよう。


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