東京九州フェリーを攻略してきた③
起床~朝食
寝ている間に外海に出たのか、揺れが絶えず襲い掛かってくる。山生まれ山育ちには堪える環境だ。
天気は雨曇り。風もあるため、屋上のデッキには出られない。
コロナ対策として、マシンルーム(ジム)、プレイルーム、カラオケルーム、サウナといった、密閉した個室の設備が使えない状態だった。ここで自転車を漕いだら最高に楽しかっただろう。そしてカラオケも歌いたかった。無念である。
朝食時間は8時から9時の1時間となっている。
どの設備がいつ使えるのか、4階案内所の近くに掲示されているので、迷ったり困ったりしたらここで確認するといい。
朝食は8時から9時の1時間。普段早めの時間に朝食を食べる人には、待ち遠しい時間設定だ。
昨夜酒を飲んで寝たので、朝は軽くおかゆの朝食にする。
添えられた薬味は、青菜、梅干し、柚ごしょう、肉味噌と、バラエティ豊か。優しい美味しさだった。
海を眺めながらおかゆを啜る。不思議な感じがする。初めての体験なのに、妙に懐かしい。赤ちゃん連れには離乳食としてもいいかもしれない。
朝食は洋食モーニングや、しっかりめのメニューもあるので、コンディションとお好みで。
しかし、ここからが船旅の真骨頂。
とうとうアレが始まるのだ。
そう。船酔いである。
船酔い
目が回る。座っているとしんどい。船内をゾンビのように彷徨いながら落ち着く場所を求める。
プラネタリウムや映画の上映を行う部屋には、ヨギボがごろごろ。ここは何かの上映中でなくても出入りすることができるので、ヨギボに体を預けて楽な姿勢を探る。しばらくはよかったが、根本的に船が揺れているので気分の悪さは募る一方であった。
船内を歩き回る。歩いていると脳が騙されてくれて、少しだけ楽になる。
オーシャンビューのサロンで気分を変える。
雨が窓に吹き付けてきて、どこまでいっても灰青の景色。船に襲い掛かってくる波が見える。こんな高波がぶつかってくりゃ、揺れるのもやむかたなしとは思うけれど。
いかん、悪い方向に気分が変わる……
船の揺れが多少楽に感じられるようにするためには、どうするといいのか、必死で頭を巡らせる。二日酔いでもないのに頭が痛い。
結論としては、横になるのが一番マシだった。
もう寝るしかない。立てば船酔い歩けば眩暈、歩く間もゲロ寸前なのだ。実りある活動など一切できない。せっかく食べた朝食を無駄にしないためにも、無理は禁物だ。
【心得!】船酔いしたら、寝る。
また、後でわかったことだが、フロントでは酔い止めを販売していた。
この船のフロントは、テレビ視聴時に使用するイヤホンの貸し出しや、船内を楽に過ごすためのスリッパの販売も行っている。困ったことがあったら、フロントに尋ねてみるのがいちばん良い。
【心得!】困ったらフロントへ!
私は、ここで酔い止めを買ったら負け、という変な意地が発動したため、薬は購入せず自力でなんとか工夫する方向へ舵を切った。良い子はマネしちゃいけません。
午前10時の邂逅
ベッドでうつらうつらしているところ、船内放送が入る。
「この船はあと4分ほどで、はまゆうとすれ違います」
はまゆうとは、私が乗ったそれいゆと共に東京九州航路を支えるフェリーの名前だ。お互いが横須賀と新門司を行ったり来たりして、毎日の運行を叶えている。そのはまゆうとすれ違うのが、ちょうど午前10時。
それは、この船旅が、ちょうど半分の折り返しを迎えることを意味する。
ぐらぐらする床を踏みしめて、船が見えそうな場所を探し、結局展望サロンに入ることにした。
きたー!
この船と全く同じ造りの船が、右舷側に姿を現し、すれ違っていく。
外に出られたなら、きっと手を振りに出ていたのに。
そしてもし自分が男だったら、右舷側に風呂があるのをいいことに、このタイミングで露天風呂にダッシュしていただろうに。
波が高い海を、お互い相当な速度で動いているため、本当に一瞬の邂逅だったが、間違いなく目的地に向かって船が進んでいることを実感できた、そんなひとときだった。
とても貴重なタイミングなので、これは見逃すべからず、だ。
【心得!】午前10時のすれ違いは必見。
昼食
さて、昼食タイムは12時から1時の1時間となっている。
朝食に消化がいいものを選んだので、船酔いしつつもお腹ペコペコである。我ながら何が食べたいか、食欲が迷子だが、とにかく酸味のあるものを食わねば、と自分を励ます。
吐き気には酸味だ……つわりにレモンの方程式だ……
フラフラになりながら食堂へ向かい、湘南ナスのピザとパンをオーダーする。パンは注文画面と違うものが出てきたので、少し驚いてしまった。(画面ではクロワッサンとロールパンだった)
ナスにトマトソースが染みてて美味しかった。酸味よりは甘味のほうが前に出る、食べ応えのある味。ワインにも合うだろう。
この船のレストランメニューには、神奈川や九州のご当地食材がふんだんに使われている。お酒のラインナップもご当地ものが充実しており、関東へ行く人にとっても、九州へ行く人にとっても、嬉しいメニュー構成だ。
それにしても野菜食ってねぇなぁ(トマトのカプレーゼはあるけどあれはワインのつまみだろ)……果物も食いてぇなぁ。こんなに新鮮なものを食べたくなるとは思わなかった。果物必要だな。
【心得】バナナかみかんを持ち込め!
船酔いを攻略する
さて、昼食を済ませてもなお、船酔いは治まる気配を見せなかった。胃袋が落ち着くまで再び横になる。
ああ、早く陸に降り立ちたい。山に行きたい。もう二度と乗るもんか少なくとも今年いっぱいは、などと益体もない夢を見る。
(温泉行きてぇ……)
山崎は火山の民である。一週間に一度、温泉に入らなければ生きていけない難儀な体を持っている。関東での活動の間、温泉など見果てぬ夢だった。ああきっと、温泉に入ったら、こんな船酔いなんかすぐに治るだろうに。
お湯の中で揺られて、癒されたら……きっと……
(揺られて?)
ここで天啓。
そうだ。船が揺れているなら自分も揺れればいいのだ。
船の揺れの緩衝材となる、湯の中で。
こうして再びの大浴場。時間は午後2時。
当たり前だがこんな時間に風呂に入ろうという酔狂はいない。ひとりで大浴場を満喫だ!
当たり前だが、船が揺れれば風呂も揺れる。
お湯が波打ち、逆巻き、容赦なく湯船から溢れていく。一般的な風呂場では見られない景色すぎて笑いが止まらない。
湯船の淵が20センチほど立ち上がっているが、そんなものものともせずに、湯がじゃんじゃん床へ流れていく。
露天へ出ると、デッキへの出入り禁止もむべなるかな、という強風がお湯を吹き飛ばす勢いで吹き込んでくるので、
船の揺れで湯が溢れて船の外に出る+そのお湯が風で吹き飛ばされて砕ける
という刺激的な眺めが楽しめる。
そして湯の中に座っていても、ちっとも体勢が定まらない。ワカメになった気分で身を任せていると、船酔いが少しずつ和らいでいく。
目には目を。歯には歯を。揺れには揺れを!
体も温まり、外の新鮮な空気をたっぷりと吸って、ようやく生き返った心地になったのだった。
【心得!】風呂はいいぞ……!
<本日の成果>
〇乗船したらまずビールと枝豆で自分慰労会をやる
×プラネタリウム見る
〇大浴場を満喫する
〇この船ならではの景色を楽しむ
×ジムで体を動かす!
・楽しんでいる様子を発信する
つづく!
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