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愉快な仲間達とはっちゃけライブ
バンドを組んでライブをやったことある方は同じような経験ありませんか?高2の冬、仲間と組んでいたバンド活動のお話です。
はっちゃけたライブはいつ思い出しても笑ってしまいます。
※ 話はうる覚えと個人情報となるため、一部フィクションを含みます。
1. 登場人物
124くん(ボーカル) 帰宅部:毎日何気ない日々を送っている
ニヒル(ギター) 軽音部:ロン毛で普段は物静か、124くんの親友
ポップ(ベース) 軽音部:坊主頭でいつもニコニコ。落ち着きがない
ボウ(ドラム) 軽音部:前髪で顔があまり見えない。常にマイペース
タチくん(見守り人) 他学校:音楽プロデューサーでもないのにその風貌
友人A&B 帰宅部:124くんの親友
今の124くん(ナレーター) 想起している124くん
2. バンドを組む切っ掛け
2-1. とある日、学校の休み時間
ナレーター:確か、切っ掛けは他愛もない話からだったと思う。
高2のときからいつも3人の親友と過ごしていた。
その日は自分の席の近くでいつもの2人と話していて
隣の席にいたニヒルが休み時間でも机で寝ていた。
(話を終えたあと、ニヒルがすうっと起きだして寝起き顔のまま話しだす。)
ニヒル:124くんってさぁ、いつも暇そうじゃん。バンド組まない?
前から興味あったじゃん。バンドやってみたいって言ってたし。
124くん:えっ!いきなり何?いやっ、楽器弾けないからなぁ…。
ニヒル: 今のメンバーさぁ、いちいちうるさくてさぁ、だから解散だよ。
メタルやりたいんだよね。あっ、ボーカルね。叫べばいいよ。
楽器はそのうちで、簡単でしょ?出来るって。
124くん :今日はやけにごり推し。
確かに暇だし…いけっかなぁ?
ニヒル:余裕でしょ。
124くん:(友人A&Bも話を聞いていたので話を振る)他やる? メタル?
友人A&B:やらな~い。
ニヒル:じゃあ、決まりで。
ナレーター:そんなどうでもいい話から軽はずみで
バンドを組む事になった。
2-2. 次の日、学校の廊下で
ナレーター:ニヒルと前のバンドメンバーのひとりが会話していた。
何気なく124くんは通り過ぎようとしたとき、
ニヒルが話を中断してこちらに向かってきた。
なぜかその後ろでは別のクラスだったポップがひょっこりと
付いてきていた。
(ポップがニヒルの後ろでニコニコしながら跳ねている。)
ナレーター:ポップもニヒルと同じ部活でベースを弾いていた。
124くんは特に部活に入っていなかったが、彼とはニヒル
を通じて、時折、学校の何処かで出会えば、適当な話をする
仲だった。この時、ニヒルはポップがいるとは気づかずに
話をしてきた。
ニヒル:あのさぁ、ベースとドラムなんだけど、ドラムは部活の後輩でボウ
って子がいるんだけど、余計な事言わないし、ちゃんとやってくる
から、ボウにしようと思う。ベースがいなんだよね。
124くん: 前のメンバーとか部活で誰かいないの?
ニヒル:あぁ~。ダメだよ。前のメンバーはべったりだからね。
(ニヒルがポップがいることに気づく)
あっ!なんだよ。ポップいるじゃん?
ポップ:あっ、いいよ。
ニヒル:じゃあ、決まり。
124くん :えっ、軽いな。って言うか大丈夫なの?他のバンドとか?
ポップ:うん、大丈夫。
ナレーター:その日の放課後、ボウを連れ出し、あまり話さないボウ
に対して、Noがない質問でほぼ強制的に決まった。
2-3. 強引な段取り
ナレーター:それから数日間は放課後、学校帰りの近くの喫茶店で集まる
のだが、そこで話す度にどんどん勝手に決まっていく。
124くんはみんなの話を聞くが、わからないのでうなずく程度。
ニヒルの推しの選曲ですぐに2曲が決まる。
ポップがやりたいと言っていた曲で2曲が決まる。
ライブの日と場所は「はい、西荻で」のひと言でポップが決めてきて、みんなで割り勘してポップにお金を払い、チケットも手渡された。
練習場所もポップが住んでいる近所のスタジオに決まった。
ボウは話を受け流すように暇になってはかばんからスティックを取り出し、ずっと想像でドラムを叩いていた。
ナレーター:こうして何事もなかったようにバンドメンバーもライブの
日取りも決まる。このとき、全く練習もしていないのに
ライブの日まで既に2ケ月をきっていた。
3. バンドの練習
3-1. 謎の見守り人の言われるがまま
ナレーター:124くん以外は、平日は部活がある日々を過ごしていたため、
スタジオの練習は毎週、土日だった。
練習初日は強引な段取りから2週間後だったかと思う。
練習初日の音合わせで知らない人物がひとり。
ポップと一緒にスタジオ前で待っていた。
その人物はポップの友達でタチくんと紹介された。
しかし、素性を知らないメンバーは不思議がるも挨拶早々に
気にも留めず、一緒にスタジオに入った。
ニヒル:やろうか。最初はメタリカのSo What。いい?
タチくん:じゃあ、ちょっとやってみて。
124くん : …? あっ、あぁ…。
ナレーター:タチくんのひと言には誰も触れず、
そのまま、初回の演奏を始めた。
(演奏中、タチくんは目を瞑りながら腕を組んでリズムを刻んでいる。)
ナレーター:初回ながら、さすがの軽音部。それぞれの音もブレずに
すんなり演奏していたので良いのか悪いのかわからない
124くんはCDで聴いていた感じで歌いあげた。
(パチパチパチパチと拍手と共にタチくんご満悦の表情。)
タチくん:いいじゃん、いいじゃん、もう出来るね。これいいよ。
124くん:えっ、ほんと?今のでいいの?
タチくん:うん、いいね。いいよ。
ニヒル:じゃあ、次やっちゃおうか。
タチくん:うん、聞かせて。
(次の曲を演奏する)
ナレーター:残念ながら、当時の印象に残っているのはこの1曲で
他の曲はもう忘れてしまった。
確か、ポップ推奨は70年代のポップカルチャー系で
ニヒル推奨はハードコアとメタル。全て洋楽。
(先ほどと同じようにタチくんは目を瞑りながら腕を組んでリズムを刻んでいる。今度は時折、目を瞑りながらも眉間にしわを寄せる。)
タチくん:う~ん。
ニヒル:じゃあ、次ね。
ナレーター:後の曲はこの繰り返しでタチくんが表情を変えることは
なかった。
(全てを歌い上げたとき、タチくんは首をかしげる。)
(タチくんはニヒルからギターを借りる。)
(タチくんはいきなり速弾きソロを奏でた後、ひとり頷いている。)
124くん:タチくんって、ニヒルみたいにギターできるんだぁー。
すげぇーなぁ。
タチくん:うん、そうね。
もう1回、メタリカのSo Whatをやってみて。
ナレーター:タチくんに言われるがまま、最初にやったメタリカの
So Whatを演奏した。
タチくん:やっぱ、いいね。これ最後だよ。
他はなんか違うんだけど、この感じと同じようにならないの?
ナレーター:よくわからないタチくんの指示でそのまま何度となく同じ繰り
返しをしてその日の練習が終わった。
練習が終わった後は、ポップとタチくんとは早々に別れ、
ニヒルとボウで少し食事をとりながら何気ない話をして
切り上げた。
ボウは相変わらず想像でドラムを叩いていた。
タチくんがスタジオにきたのは、この1回限りだった。
3-2. 進展がない練習と足りない時間配分
ナレーター:これ以降は練習を重ねるも特に進展なく毎回同じ感じだった。
練習の後半はひと通り流しては15分程度で全ての曲が終わって
しまう。実際のライブでは1組25分だったので10分の穴埋めで
後2曲追加するか話し合ったが、結局、ニヒルの
「どうにかなるでしょ」でそのまま本番を迎える事になった。
4. 本番当日
4-1. 緊張のライブ会場
ナレーター:本番当日は晴れた日の午後だった。
他のバンドや観覧者と共にライブ会場のある地下に入った。
重い扉を開けるとそこにはチケットを渡した友人達がいた。
簡単な話をしながら周りを見渡すと、奥で椅子に座っている
タチくんとボウ、その近くにニヒルとポップが立っていたので
声をかけた。
(ポップはいつものように跳ねてない。ニコニコもしていない。不安そう顔をしてふらふらしている。)
ニヒル:おぉ、きたー。
タチくん:So Whatいいね。あれで頑張って。で何番目だっけ。
ニヒル:4番目。師匠がその後でとりなんだよね。
124くん:えっ!師匠?
ニヒル:そう、中学のとき、ギターを教えてくれた近所のひとって
あのひとだよ。
124くん:そうなんだぁ。
ポップ:なんか緊張してる。
124くん:あれっ、今日は跳ねてないね。
自分もだよ。すげ~緊張してる。
てか、高校生自分たちだけじゃん。
他みんな、大学生とか社会人じゃん。やべ~よ。
ニヒル:いや~、たまんないね。すぐだよ。すぐ…。
あっ!師匠のところ、ちょっと行ってくる。
(そうこうしているうちに最初の演奏が始まる。)
ナレーター:MCは特にいなくそれぞれのバンドが簡単に挨拶したら
演奏を始めた。
最初からメタルの叫びで「うぉ~!」と共に観客のノリもよく
雲泥の差を見せ付けられた。
124くんの近くに戻っていたニヒルに不安をぶつけて
緊張している自分を抑えようとしていた。
124くん:やべ~って、すげ~うまいじゃん。あんな叫びでねぇよ。
あぁ~、緊張する~。
ニヒル:大丈夫だって。すぐだよ、すぐ。わくわくするなぁ~。
(ポップは無言で不安そうに観ている。)
(ボウは少し顔を上げながら、じっと見つめている。)
(タチくんはリズムを刻みながら腕組みをして見ている。)
ナレーター:3組目がはじまってライブ会場の後ろにいくまで
もう何があったかあまり覚えていない。
緊張はほぐれることなく「やべ~」しか言っていない。
4-2. 出番
ナレーター:もう、早く終わることを祈るだけだった124くんは、
舞台に上がる頃には落ち着きを取り戻していたが、
もうすでに頭が真っ白で歌詞をほとんど忘れていた。
もうそれ風に歌うしかなかった。
ある程度の準備が整うと、メタル好きの観客はソワソワしなが
ら、その視線が自分たちに向けれているのを痛く感じた。
ニヒル:じゃあ、やっちゃう?行くか!
(ニヒルの掛け声と共に演奏を始める。)
(いつもより速いビートを刻むボウ)
124くんはボウの方を向きながらアイコンタクトをボウに送る
ボウはちらっとこちらを見ると徐々にペースを戻すもまだ速い。
ニヒルは自分の奏でているギターに酔いしれている
ポップは顔を下向きにただベースを奏でている
メタル好きの観客は前のバンド程盛り上がりはなく、じっと見つめている
(3曲終えるまでMCなく淡々と演奏をこなしていく)
4-3. 暴走
(3曲終えた後、ニヒルのMCが入る。)
ナレーター:ニヒルだけが最後まで楽しそうにみえた。
観客の変化がみられたのは、4曲目のメタリカのSo What
からだった。
そう、盛り上がる切っ掛けはニヒルの暴走から始まった。
ニヒル:いやぁ、最後になっちゃったね。
はやいねぇ~、じゃあ、行こうか。
(4曲目の演奏を始める。)
(序奏からメタル好きの観客が音に合わせて「おぅ!」って叫びだす。)
ナレーター:今迄の演奏と明らかに違って観客のスイッチが入っていた。
それに便乗したニヒルは間奏に入った頃、暴走しだした。
(間奏中)
ニヒルが舞台の前方、ぎりぎりまで出て行って練習にはなかった速弾きソロを加え、間奏が練習のときよりも長くなった。
それに加えてボウのビートがより速く刻み、全く124くんを見る事なく、リズムを刻むことだけに集中していた。
ポップは緊張を通りこして、ベースを首にかけたまま、両手を上に挙げだしていた。もうベースを弾く気がない。海で揺れている昆布のように踊りだしていた。
それらに便乗した観客の多くがステージ上に上半身が入り込んできた。
(ニヒルの長めの間奏からようやく演奏が戻る)
興奮した観客がマイクスタンドを掴みだし、124くんに飛んで来いの合図をやたら送ってきた。
124くんは半分中腰になり、マイクスタンドを投げないよう必死で抵抗しながら、絶対飛びにいかないと首振りしながら忘れてしまった歌詞で歌い続けた。
後半、曲の流れから観客が掴んでいたマイクスタンドがようやく外れた。
(ここまでの演奏時間で15分)
ニヒル:いやぁ、終わっちゃった。
まだ時間あるんだよね。どうする?
観客:もう1っ回!もう1っ回!やれよ~!
ニヒル:じゃあ、もう1っ回やるか!
124くん:おうよ!
ナレーター:残りの時間はもうどうでもよくなれ状況で同じ曲を演奏した。
この盛り上がりは終わることなく、みんな最後までこんな調子
で幕を閉じた。
(ライブが全て終わったころ)
友人達:最後、よかったよ。
124くん:ありがとう。歌詞全部忘れた。
友人達:英語分からないからわかんねぇよ。
タチくん:メタリカのSo What、やっぱ、いいね。
おい、ポップ!
おまえ、最初から最後まで踊ってただけじゃねぇか。
124くん:えっ!そうだったの?
ポップ:緊張するとベースが弾けなくなっちゃうんだよね。
124くん:ニヒルの暴走に参ったわ。観客も暴走するし、わけわからんよ。
ニヒル:はははっ、楽しくてさ。楽しいとついつい暴走しちゃうんだよね。
あっ!師匠の演奏だ。ちょっと行ってくるね。
ナレーター:このライブを切っ掛けに、あまり会話に参加しなかったボウは
前よりも話すようになったが、空想ドラムの練習はいつも通り
あった。それで高校が終わるまで4回ぐらいライブやってみた
けど、この盛り上がりを示すほどではなかった。
5. それから
ナレーター:高校卒業後、このバンドメンバーは「まだやろうよ」と言って
くれてたが、124くんは断って解散となった。
それからはニヒル、ポップ、ボウのそれぞれでバンド活動
していた。
ニヒル
インディーズでバンド活動していたが仲間とのそりが合わなく脱退。
脱退後、プロの試験を受けるが、「基礎を知らないから、なになに進行で弾いてみてと言われてもわからないからだめだった。」って言っていた。
今でも趣味で子供たちと一緒に音楽を楽しんでいる。
ボウ
プロ入りして活動しているらしい。卒業後はあっていないのでわからない。
ポップ
ポップは自分たちとバンドを組む前後にタチくんと3人ぐらいでバンド活動していた。高校卒業後、ライブに何度か観に行ったが、行くたびに観客が増えていて、いつの間にかメジャーデビューしていた。ただ、ポップは途中で脱退した。この辺りはまた聞きで会っていないのでわからない。
いつになってもみんなに会えば、その時だけでもこの頃に戻るような気がしています。あの頃ではないとできないような貴重な体験は、今を生きる自分にとって大切で素敵な思い出のひとつ、今も人生の糧となっています。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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