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記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
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こんなテレビアニメを見た〜2024年(令和6)第2四半期〜春篇

梗概

 筆者が2020年から執筆・編集してきた「テレビアニメ視聴記録」のルール見直し及び再構築した、一年を3か月ごとに区切って「全話視聴したテレビアニメ」のみを記録として残すことを意図して執筆されたテキストである。

【警告】

 筆者の備忘録的性格を持つテキストのため、物語に関わる展開や結末について言及する、いわゆる「ネタばれ」が含まれることをあらかじめ断っておく。
 また、物語に関する記述も主に筆者の主観に照らし合わせて執筆されるため、必ずしも正確に描写されていないこともあることを併記するものである。

あわせてお読みください

「わんだふるぷりきゅあ!」(2024年〜)ほか「プリキュア」シリーズは、独立記事として公開するものとした。参照:「プリキュア友の会(仮)


未試聴タイトル(50音順)

 以下は「1話も視聴していない」タイトルである。主に「〜2期」や「〜第2シーズン」などの“続編”がこれに当たると考えてもらって良い。
 放送(配信)時期の備忘録としてここに掲載した。

「アイドルマスターシャイニーカラーズ」
「おしりたんてい8期」
「鬼滅の刃〜柱稽古編」
「テレビアニメクマーバ」
「黒執事〜寄宿学校編〜」
「この素晴らしい世界に祝福を!3」
「時光代理人- Link Click - Ⅱ」
「シャドウバースF」
「じゃんたまカン‼︎」
「シンカリオン チェンジ ザ ワールド」
「聖闘士星矢 Knighits of the Zodiac バトルサンクチュアリ Part2」
「ちびゴジラの逆襲」
「デート・ア・ライブ Ⅴ」
「転生したらスライムだった3期」
「刀剣乱舞 迴-虚伝 燃ゆる本能寺」
「にじよん あにめーしょん2」
「パズドラ第7シリーズ」
「ひみつのアイプリ」
「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂(5期)」
「僕のヒーローアカデミア(7期)」
「ポンコツクエスト〜魔王と派遣の魔物たち(シーズン8)」
「魔王学院の不適合者Ⅱ」
「魔法科高校の劣等生(第3シーズン)」
「ゆるキャン△ season3」

視聴を打ち切ったタイトル(50音順)

以下のタイトルは、いくつかの理由により全話視聴には至らなかった。( )内は視聴した話数。

「アストロノオト」公式Webサイト(2話)

「当て馬キャラのくせして、スパダリ王子に寵愛されています。」公式Webサイト(1話)

Unnamed Memoryアンネームド・メモリー公式Webサイト(2話)

WIND BREAKERウィンドブレイカー公式Webサイト(1話)

「ヴァンパイア男子寮」公式Webサイト(2話)

「狼と香辛料 Merchant Meets The Wisewolf」公式Webサイト(1話)

「怪獣8号」公式Webサイト(2話)

「神は遊戯に飢えている」公式Webサイト(2話)

からすあるじを選ばない」公式Webサイト(2話)

「グリム組曲(Netflixアニメ)」公式Webサイト(3話)

「喧嘩独学」公式Webサイト(1話)

「ささやくように恋を唄う」公式Webサイト(1話)

The New Gateザ・ニュー・ゲート公式Webサイト(1話)

「ザ・ファブル」公式Webサイト(2話)

「じいさんばあさん若返る」公式Webサイト(1話)

Shibuyaシブヤ ラブ Hachiハチ公式Webサイト(1話)

「戦隊大失格」公式Webサイト(1話)

「ただいま、おかえり」公式Webサイト(1話)

「出来そこないと呼ばれた元英雄は、実家から追放されたので好き勝手に生きることにした」公式Webサイト(1話)

「転生貴族、鑑定スキルで成り上がる」公式Webサイト(1話)

「転生したら第七王子だったので気ままに魔術を極めます」公式Webサイト(1話)

「バーテンダー 神のグラス」公式Webサイト(1話)

High Speed Etoileハイスピード・エトワール公式Webサイト(1話)

「ブルーアーカイブ The Animation」公式Webサイト(1話)

「変人のサラダボウル」公式Webサイト(1話)

「まぁるい彼女と残念な彼氏」公式Webサイト(4話)

「忘却バッテリー」公式Webサイト(1話)

「魔王の俺が奴隷のエルフを嫁にしたんだが、どう愛ればいい?」公式Webサイト(1話)

「夜桜さんちの大作戦」公式Webサイト(1話)

「夜のクラゲは泳げない」公式Webサイト(2話)

「龍族〜The Blazing Dawn〜」(日本語字幕版)公式Webサイト(1話)

Re:Monsterリ・モンスター公式Webサイト(1話)

「リンカイ!」公式Webサイト(1話)

Lv.レベル2からチートだった元勇者候補のまったり異世界ライフ」公式Webサイト(1話)

「ワンルーム、日当たり普通、天使つき。」公式Webサイト(1話)

視聴完了タイトル(ネタバレ注意!)

「響け!ユーフォニアム3」

メインビジュアル(公式サイトより)

 テレビ放送をリアルタイム視聴。同名小説原作のアニメ化作品。
 「現代日本を舞台に、吹奏楽に青春の全てをかける高校生たちの群像劇を描く」青春アニメ。全13話。(テレビシリーズ通算39話+未放送2話)
 2015年第2四半期および2016年第4四半期放送のテレビシリーズ並びにその総集編劇場版(2016年・2017年)と、原作小説第二部を二部構成で映画化した「リズと青い鳥」(2018年)「響け!ユーフォニアム〜誓いのメロディ〜」(2019年)、原作第三部までの幕間を描いた特別編「響け!ユーフォニアム〜アンサンブルコンテスト〜」(2023年)の続編。公式Webサイト

【ここまでのあらすじ】
 制服にセーラー服が採用されているという理由で「北宇治高等学校」に入学した「黄前久美子おおまえ くみこ」は、友人たちに誘われるまま「吹奏楽部」に入部する。
 新しい顧問の音楽教諭「滝昇たき のぼる」に半ば促される形で「吹奏楽コンクール全国大会金賞」を目指すことになった吹奏楽部は、彼の厳しくも的確な指導のもと着実に実力をつけていく。
 しかし、コンクール曲のトランペットパートソロ奏者に一年生の「高坂麗奈こうさか れいな」を抜擢した滝の方針に、部の一部から公然と不満の声が上がる。
 三年の「中瀬子香なかせこ かおり」が吹くべきだという部内の圧力に屈せず、むしろ「実力があるから選ばれたんです」とさえ言ってのける麗奈。
 折悪しく、麗奈と滝が親同士の知り合いであるという事実も判明し、部内の雰囲気が最悪となるなか改めて開かれたオーディションの結果、麗奈がソロを吹くべきだとかおりが納得したことで事態は一応の収拾を見る。
 そうして臨んだ京都府大会。北宇治高校は「ゴールド金賞」を勝ち取り、関西地区大会に向けて更なる練習を重ねていく。(テレビシリーズ「響け!ユーフォニアム」+劇場版「響け!ユーフォニアム〜北宇治高校吹奏楽部へようこそ〜」)

 強豪ひしめく関西大会に向けて練習を積み重ねていた低音パートの教室に、元部員の2年生「傘木希美かさき のぞみ」が現れる。
 一年前に当時の三年生と対立して退部した希美は、副部長兼ドラムメジャーの「田中たなかあすか」に部への復帰を願い出るが、あすかはこれを突っぱねる。
 関西大会を前に、部内で波風を立てたくないあすかは、希美の親友でクラリネットパートの「鎧塚よろいづかみぞれ」への影響を考慮していた。
 部活を辞める際、一言も相談しなかった希美に見捨てられたと思い込んでいるみぞれはそれ以来、彼女の前では情緒不安定になってしまうのである。
 同じ2年の親友「吉川優子よしかわ ゆうこ」(トランペット)や「中川夏紀なかがわ なつき」(ユーフォニアム)たちの尽力もあって、希美との誤解を解いたみぞれの想定外の奮起などにより北宇治高校吹奏楽部は、関西大会でもゴールド金賞を受賞。全国大会出場を決める。
 しかし、今度はあすかが退部するかもしれないという噂が部内に流れる。あすかの母親が娘に退部を迫り実際に退部届も提出されたが、あくまでもあすかの意思を尊重すると言いはる滝が、これを受理しなかったというのだ。
 全国大会が迫るなか、休部しているあすかの家を訪ねた久美子は、彼女がなぜユーフォニアムを始め、どうして部活動を続けてきたかを打ち明けられる。
 離婚して出て行ったユーフォニアム奏者の父親(全国大会の審査員でもある)に自分の演奏を聞いてほしいと願いながら、一方でそんなことできるはずがないとどこかで諦めているあすかに反発し、絶対に吹くべきと強く主張する久美子。
 そして迎えた全国大会。さまざまな思いが交錯するなか運命の演奏が始まる。(テレビシリーズ「響け!ユーフォニアム2」+劇場版「響け!ユーフォニアム〜届けたいメロディ〜」)

 全日本吹奏楽コンクール全国大会で「銅賞」に終わった北宇治高校吹奏楽部に再び春が巡り、2年生に進級した久美子たちは、部長の優子や副部長・夏紀らと共に再び「全国大会金賞受賞」を目標に練習を開始する。
 低音パートに集まる良くも悪くも個性豊かな後輩たちに振り回されながら、部の内外をまとめていく久美子たち。
 しかし、演奏にまつわる想定外の事態によって吹奏楽部は、関西大会で思いもよらぬ結果に甘んじてしまい……。(劇場版「リズと青い鳥」「響け!ユーフォニアム〜誓いのフィナーレ〜」)

 全国大会出場を逃してしまった北宇治高校吹奏楽部は、来年を見据え活動を再開する。優子と夏紀から新しい部長に指名された久美子は、副部長の「塚本秀一つかもと しゅういち」やドラムメジャーの麗奈らと共に新体勢の確立を急ぐ。
 そんな久美子たちの最初の仕事は、少人数構成バンドメンバーによる「アンサンブルコンテスト」通称“アンコン”の代表チーム選びだった。
 校内予選をすると決めたものの、チーム編成からさっそく問題が続出し、対応に追われていた久美子は、気がつけば所属するところも決まっていなかった。(特別編「〜アンサンブルコンテスト〜」)

そして……次の曲がはじまるのです。(「つづく」)

【テレビシリーズ3期のあらすじ】
 再び春が巡ってきて、3年生となった「黄前久美子」(おおまえ・くみこ)は、北宇治高校吹奏楽部の部長として副部長「塚本秀一」(つかもと・しゅういち)やドラムメジャー「高坂麗奈」(こうさか・れいな)らと共に新たなスタートを切る。
 直近二年の実績により吹奏楽の強豪校と目されるようになった部には多くの入部希望者が集まる。総勢90名を擁する大所帯のリーダーとして「全国大会金賞」を目指す事になった久美子は、校内でユーフォニアムの流麗な演奏を聴く。(1話)

「第1回」公式サイトより
久美子(左)と麗奈

 ユーフォニアムを吹いていたのは、吹奏楽コンクール全国大会の常連校・清良せいら女子からの転校生「黒江真由」(くろえ・まゆ)だった。「楽しく演奏したいから」吹奏楽部に入部するかどうか迷っているという3年生の真由に違和感を覚えつつ入部を勧める久美子。
 サンライズフェスティバル(マーチングバンドイベント)の準備や、コンクール曲の選定ほか雑多な用事に忙殺される部長に変わって自称「可愛い後輩」の2年「久石奏」(ひさいし・かなで)が真由に探りを入れてみるが、巧妙にかわされてしまう。(2話)

「第2回」公式サイトより
黒江真由

 サンフェス本番に向け、ドラムメジャーの麗奈の指導が日に日に厳しさを増していく中、そんな麗奈に苦手意識を持つ新入部員も少なくなかった。
 そんなある日、久美子は1年の「釜屋すずめ」(かまや・すずめ)から、1年生が部活動をボイコットするかもしれないと相談を受ける。
 久美子の頭をよぎるのは数年前に起こった“集団退部”の再来(久美子は直接は知らないが)。程なくしてクラリネットの「義井沙里」(よしい・さり)を中心とした4名の一年生が部活を休んでしまい……。(3話)

「第3回」公式サイトより
義井沙里

 「(田中)あすか先輩を超える」ドラムメジャーぶりを発揮した麗奈の指揮のもと、今年のサンフェスでも北宇治高校は好評を博す。
 しかし、北宇治高校の前に演奏するのが「龍聖学園」だと知った低音パート2年の「月永求」(つきなが・もとむ)は不機嫌さを隠そうとせず、周囲と衝突してしまう。
 龍聖学園の顧問で「源ちゃん先生」と生徒たちから慕われる求の祖父「月永源一郎」(つきなが・げんいちろう)と孫の間の確執には、3年前に夭逝ようせいした「姉」の存在が関わっていることを知った久美子と低音パートリーダーの「川島緑輝」(かわしま・さふぁいあ)は、それぞれ求と話し合ってみるが……。(4話)

「第4回」公式サイトより
緑輝(左)と求
「(死んだ)姉はどこかみどり先輩に似てるんです……」という求に久美子は何も言えなくなり…

【備忘録】
 月永家の事情。志半ばで夭逝した「求の姉」や、滝から求を龍聖学園に引き抜きたいという源一郎の申し入れがあったことが久美子に伝えられる件などはアニメのオリジナル展開。
 原作では深掘りされなかった個々のキャラクターに光を当てるスタッフワークには目をみはる。

 3年生になってもこれといった進路が決められない久美子。コンクールに向けたオーディションのことで頭がいっぱいなのもあるが、大人になって働いている自分の姿を想像できないというのが本当のところだ。
 特に今年は、全国大会金賞を達成するために「大会ごとにオーディションを行なう」という初めての試みもある。全国大会までいくための都合3回のオーディション。しかし真由は「私もやるんですか?」となぜか表情がくらく……。(5話)

「第5回」公式サイトより
「私が入ると(ユーフォニアムの)一枠が埋まってしまうから」
という理由で辞退したいという真由に久美子は苛立ちを覚えてしまう…

 コンクールに向けた第1回オーディションが迫る中、真由の「オーディションを辞退した方がいいのかな……」という煮え切らない態度が久美子を悩ませる。
 「北宇治は実力主義だ」と説いても納得してくれない(ように見える)真由に次第に苛立ちを募らせていく久美子。
 オーディションの結果、チューバのコンクールメンバーに1年のすずめが抜擢され、2年の「鈴木さつき」(すずき・さつき)が落選したことに部内では少なからぬ衝撃が走る。
 滝のカリスマ性を肌感覚で知らない1・2年生たちにとって、この結果がどう転ぶか半信半疑のまま、今は練習を重ねていくしかないが……。(6話)

「第6回」公式サイトより
久美子と低音パートの2年生・鈴木美玲みれい(右)
「三年生ほど一、二年は滝先生を信頼してませんよ…」

 京都府大会を突破し、コンクールBビーメンバーこと「チームもなか」も府大会で金賞を受賞するなどまずは幸先の良いスタートを切った北宇治高校は、例年通り夏の盆休みを迎える。
 休みの初日に大学説明会に「加藤葉月」(かとう・はづき)たちと参加した久美子は目ぼしい結果が得られないどころか、むしろ「保育士になる!」とあっさり進路を決めた葉月との差を思い知らされることに。
 翌日、麗奈たちと一緒にプールへやって来た久美子は、真由による「リズと青い鳥」の解釈の中に、自分が感じている苛立ちの訳を理解する。(7話)

「第7回」公式サイトより
久美子は今年も“成長”しなかった…(って何が?)

【備忘録】
 第6回では、中学の同窓生「佐々木梓」(ささき・あずさ)から「音大に行かないの?」と尋ねられたり、(本エピソードでは)大学を辞めて美容師学校に通う姉の「黄前麻美子」(おおまえ・まみこ)から「好きなことを優先すればいい」とアドバイスを受けたり(「それ、お姉ちゃんが言う?」と久美子いもうとに反論されているが)するなど、本シリーズでは久美子の進路問題も並行して描かれていく。
 「久美子は先生になると面白いかもね……」と言う葉月の一言が伏線になっているかどうかは議論の余地ありといったところか。

 関西大会に向けた3日間の合宿が始まる。
 すっかり顔馴染みとなった、打楽器担当の「橋本真博」(はしもと・まさひろ)や木管楽器担当「新山聡美」(にいやま・さとみ)ら学外の指導者も参加し、なお一層練習に打ち込む部員たち。
 1日目の夜に行なわれる第2回オーディションに向けて緊張が高まるなか、「ソリ吹きたい?」と聞いてくる真由に対してつい声を荒らげてしまう久美子。
 だが翌日のコンクールメンバーの発表の場で部内は騒然となって……!(8話)

「第8回」公式サイトより
自身や友人に起こった経緯を思い出し
ついに声を荒らげてしまう久美子

【備忘録】
 求が緑輝を呼び出して語ったことは何か。「姉とよく似ている先輩」に彼が伝えたいこととは……。全ては緑輝の胸の内にしまわれるという幕間劇が良い。原作とアニメとの違いに「月永求」というキャラクターの描かれ方があることを指摘しておく。

 真由がユーフォニアムのソリストに抜擢されたというよりも、久美子が担当を外されるというシビアな結果に部内で再び大きな衝撃が走る。
 完全な実力主義……とは言いながらも全面的に承服できないという部内の空気に「みんなピリピリしてるね!」という橋本の軽口も冗談では済まされなくなっていく。
 もちろん「真由が(ソリストに)選ばれてもおかしくない」という部員もいるがそれはあくまで少数派。滝への不信や不満を隠せない部員はその後の練習にもあまり身が入らなくなってしまう。
 「滝先生が間違っていると思う?」と訊ねてくる麗奈ドラムメジャーに、部長として持論を述べる久美子。
 そんな久美子に麗奈は「部長失格ね……」と言い残し去っていくのだった。(9話)

「第9回」公式サイトより
真由と釜谷つばめ(右)
孤立を感じ不安になる真由を労うつばめ

 大会ごとに演奏メンバーが変わる制度の是非を巡って議論百出する部内はもちろん、久美子たち幹部メンバー内でも意見をまとめられないままでいた。
 「全国できんを獲るために最適な答えです」という滝に本当に聞きたいことを聞けなかった久美子は、ついに残された起死回生さいごのカードを切ることに。
 「困ったときは一回だけ助けてあげる」という、何でも知っているやり手の先輩「田中あすか」(たなか・あすか)の下宿マンションを訪れた久美子は、自らが思いもしなかった「側面」を指摘されて……。(10話)

「第10回」公式サイトより
麗奈と秀一
部長(久美子)の補佐役にありながら対立してしまう二人

 「無責任にわがまま言えるのが黄前おおまえちゃんの強み」というあすかの指摘に良くも悪くも“開き直った”久美子部長の言葉で再び一つにまとまった北宇治高校吹奏楽部は、関西大会で金賞を獲得し全国大会出場も決める。
 全国大会金賞という目標にまた一歩近づき喜びにわく部内とは裏腹にソリストになれなかった自分の実力に疑問と焦りを感じる久美子。
 緑輝さふぁいあや麗奈が進路を次々と決めていくなか、音大に進学した先輩「鎧塚みぞれ」(よろいづか・みぞれ)から受けた何気ない一言に、久美子は自分に音大へ進学するという選択肢がないことを唐突に確信する。
 全国大会に向けた第3回オーディションは間近に迫っていた……。

「第11回」公式サイトより
「私は(久美子)先輩にソリを吹いてほしいんです!」
と本人に言ってしまう(自称)可愛い後輩「久石奏」(右手前)

 二年前のあの日「二人で特別になる」と誓った久美子と麗奈のかんけいに変化が訪れようとしていた。
 「麗奈は特別」に疑いの余地はない。でも自分が同じ道を行くことはできないことに気づいてしまった久美子は、3回目のオーディションで真由と共にソリに選ばれた結果を受けて、顧問の「滝昇」(たき・のぼる)に再オーディションではやり方を変えてほしいと願いでる。
 それは実力主義を掲げここまで指導してきた滝にすら思いつかない苛烈なものであったが、真由も今度は辞退するとは言わなかった。
 同情も心配も遠慮もいらない。負けるつもりのない二人の奏者、再オーディションの結末は……(12話)

「第12回」公式サイトより
奏者をカーテンで隠して「耳」でどちらが良いかを部員に選ばせる
という久美子の申し出に滝は「私もまだまだです…」と漏らしてしまう

【備忘録】
 アニメ独自の展開が話題になったエピソードである。
 原作において「3回目のオーディション」は最後の最後に少ししか書かれず、良くも悪くも「ありきたり」な展開になっているが、アニメでは真由のキャラクターを深く掘り込み、久美子と真由はお互いがよく似ていることに気が付くという独自の解釈に至っている。
 スタッフによると真由の過去に起きたことは原作者(武田綾乃)と相談した上で作り上げたものであるという。
 主人公に挫折を味あわせるという衝撃的とまではいかなくても、リスクを取るだけの価値はあるか。これは視聴者に判断を仰がねばならないだろう。
 再オーディションで「真由」に票を投じる部員の顔ぶれにも注目したい。

 最後の全国大会を間近に控え、あすかから託されたオリジナル楽曲「響け!ユーフォニアム」をかなでに託す久美子。再びソリストに選ばれた真由に何の後悔も躊躇いも感じない久美子は、部長として最後の舞台ステージに臨む。
 北宇治高校吹奏楽部は悲願の全国大会金賞を果たせるか?(13話)

「第13回」公式サイトより
北宇治ファイトォ(オーーッ)

 そして……何度かの春を迎えた北宇治高校吹奏楽部の教室には“副”顧問「黄前久美子」の姿があった。教師となった久美子はいつかの“あの一言”で生徒たちを出迎える。

「北宇治高校へようこそ!」

おわり

【評】
 9年にも及んだシリーズの堂々の完結である。毎週「つづく」で締められる物語を見るというテレビシリーズの醍醐味を味わえないとなるとやはり惜別の念に堪えない。
 「音楽もの」「部活動もの」必然的に「青春学園もの」の一つの到達点というべき傑作をより高みへと至らしめたのは、やはり主人公・黄前久美子の「二度の挫折」と言えるだろう。
 第三部から登場する「黒江真由」という謎めいたキャラクターに深く切り込む過程で生まれたオリジナルの展開に古き良き「青春の蹉跌さてつ」を見出す視聴者はどれだけいるか。見応えという点で筆者は断然「支持」するタイプである。

 ちなみに、アニメではなんとなく「悪役」もしくはライバル的なポジションとなってしまった黒江真由だが、今年(2024年)発表された短編集小説「〜北宇治高校吹奏楽部のみんなの話〜」では原作者による解釈が多く盛り込まれているので、併せて読むことをお勧めする次第である。

 本シリーズを語る上で避けることのできない「あの事件」の影響について別項を設けるべきか検討中だが、5年の制作期間で何も無いということはできないと思われる。
 特に90名を超える吹奏楽部員を全員(たぶん)映す最終回の演出には、産みの親キャラクターデザイナーである故・池田晶子氏への哀悼の意志が切々と感じられた。

 あらためてここに事件の犠牲になられたスタッフへの哀悼の誠を捧げます。
 ありがとうございました。

視聴完了

「ガールズバンドクライ」

メインビジュアル(公式サイトより)

 「dアニメストア」で視聴。アニメーション発オリジナル作品。
 「現代日本を舞台に、音楽を通じた自己表現に執念を燃やす5人の女の子アーティストの活動を描く」ガールズバンド系音楽アニメ。
 全13話。公式Webサイト

【あらすじ】
 「井芹仁菜」(いせり・にな)17歳。熊本の高校を中退して、東京に来たまではよかったが、降りる駅を間違えたりさんざん道に迷った挙句、下宿にたどり着いた時にはすでに夜だった。
 管理人と連絡がつくまで家に入れない仁菜は、ほんの偶然から、路上ライブで自分の好きな歌を歌っていたストリートミュージシャン「河原木桃香」(かわらぎ・ももか)と知り合う。
 田舎に居場所を無くした自分の背中を押してくれたのが桃香の歌だった、と熱い想いを語る仁菜に「今日が最後のライブだったんだ」と答える桃香。
 牛丼を食べたりカラオケしたりと朝まで盛り上がって別れる二人。だが下宿を引き払い田舎へ帰ろうとしていた桃香を引き止めたのは、桃香から貰ったギターを携えた仁菜だった!

 大学受験に向けて予備校通いすることを条件に上京を許してもらった仁菜だったが、バンド活動で頭がいっぱいになってしまい勉強に身が入らない。
 蛍光灯の替えを貰いに桃香の下宿に立ち寄った仁菜は、そこで自分と同い年くらいの女の子「安和すばる」(あわ・すばる)を紹介される。
 バンドをやるならドラムがいるという桃香に対し、感情を爆発させてしまう仁菜。常に不満を抱え、素直になれないがために苦労してきた仁菜は、自分を変えるため3人でバンドを組むことに同意するのだが……。

 言いたいことを飲み込んで、知らない人とバンド活動を続けていけるほど仁菜は器用ではない。そんな仁菜に「バンド、やめた方が良いのかな?」と挑発してくるすばる。気を遣われるのが一番イヤという共通点を見出した二人は、とことん話し合い妥協点に到達することでようやく打ち解けるのだった。
 そんなある日、ストリートライブをやると桃香が宣言する。楽器ができないのに「歌なんて歌えません!」と言ってしまう仁菜をなだめすかしてその気にさせる桃香。かくしてガールズバンド「新川崎(仮)」が本格的に活動を開始する。(1〜3話)

 桃香は、現在人気絶頂のガールズバンド「ダイダス」こと「ダイアモンドダスト」のリーダーだったが、メジャーデビュー直前に方向性の違いからバンドを脱退しソロ活動をしていた。なぜ辞めたのかと仁菜が尋ねる前に、今度はすばるが「バンドを辞める」と宣言する。ベテラン俳優「安和天童」(あわ・てんどう)を祖母に持ち、自身も芸能スクールに通う手前、すばるはバンド活動をしているなどと大っぴらには言えなかった。(後ですばるは祖母の黙認を取り付けた)
 そんなある日、桃香が知り合いの経営するライブハウスから出演のオファーをもらってきた。
 チケットノルマで四苦八苦していた仁菜はとある伝手で「ダイ・ダス」のライブチケットをもらい、すばると共に見にいく。
 ライブ会場で見た現在のダイアモンドダストのメンバーに、激しく動揺する仁菜。新ボーカルをつとめる「ヒナ」は、仁菜の同郷の“絶交した”友達だったのだ。
 「命の次に大事な」ダイアモンドダストに(大嫌いな)あの子がいる!ライブ会場を中座した仁菜は居ても立ってもいられない、やり場のない怒りを爆発させる。
 過去はともかく今は目の前の対バンライブに集中するしかない。実力もメンバーもまったく足りない「新川崎(仮)」は、いかにしてステージに「爪痕」を残していくのか。(4〜5話)

 がむしゃらにもがきながら初ライブを終えた「新川崎(仮)」は、バンドの目標に「打倒ダイアモンドダスト」を掲げてそれを活動方針とする。だがそれは同時に「プロ」にならなければならないことを意味していた。

 そんな仁菜に、3人のライブを見たという「海老塚智」(えびづか・とも)と「ルパ」が声をかける。ルームシェアをしながら「beni-shouga(紅しょうが)」なる謎のボーカルユニットとしてネット上で活動していた二人は、音楽性の近しい「新川崎(仮)」とのコラボを希望してきたのだ。
 ベースとキーボードが加わってくれるなら「新川崎(仮)バンド」にとってまさに渡りに船。さっそく音を合わせてみた5人は、バンド名も決まらぬままライブフェスへの参加を決める。

 下宿に戻った仁菜を待っていたのは熊本から上京してきた姉「井芹涼音」(いせり・すずね)だった。成績の下落と予備校の無断欠席を心配した両親から様子を見てこいと言われて来たという姉に「バンド活動をしている」と答える仁菜。
 ライブ会場へ向かう車内でもサービスエリアでもその事について考え続けた仁菜は、勢いで命名したバンド「トゲナシトゲアリ」のライブ終了後、ついに決断を下す。(6〜7話)

 「わたし予備校やめます」プロを目指すため、敢えて退路を断つ仁菜。
 だがその言葉が桃香の逆鱗に触れて二人は大げんかしてしまう。同じように高校を中退した桃香は、売れるための路線変更を受け入れられずにバンドを続けられなかったあやまちを仁菜に繰り返させたくなかったのだ。
 そんな桃香に喰ってかかる仁菜。あなたを信じる自分の気持ちを過ちだと言ってほしくない。あなたを信じる私から逃げないでほしいという仁菜の言葉に、桃香はやる気を取り戻すのだった。

 こうなったら後には引けない。「ダイアモンドダスト」に宣戦布告だ!「トゲナシトゲアリ」はサマーロックフェスティバルに向けて活動を再開する。
 苦手だったギターも智の熱血指導(?)で克服できるようになった仁菜のバイト先に両親が訪ねてくる。下宿の鍵を変えられてしまった仁菜は、バンドのメンバーに諭され渋々実家に戻る。
 しかし、似た者同士の親子は互いに主張を繰り返すだけで話は並行線を辿るばかり。
 世間ではカリスマ教師として知られていた「井芹宗男」(いせり・むねお)が、娘が起こした不祥事やその後の不登校を受け入れられないとしながらも、父親なりに仁菜むすめのことを心配している。と姉に教えられた仁菜は、自分の覚悟のほどを父に告げ実家を後にする。(8〜10話)

 仁菜の復帰後、フェスに向けて猛練習を重ねた「トゲナシトゲアリ」は遂にステージ出演当日を迎える。結果を残せなければ後がない状況の中でも、あくまで「間違ってない」自分を証明することに拘る仁菜。
 「怒りとかウソとか悲しみとか全部吐き出してぶち込んでやる!」

 ライブ前から打診があった事務所との契約が本決まりとなり、プロのバンドとして本格的に活動を開始する「トゲナシトゲアリ」の5人。
 しかし曲作りで思うような成果が上げられず、プロとしての方向性に迷いが生じ始める。初詣で「打倒ダイダス」と頼みがら、ダイダスとの対バンライブで話題作りをしなければならない屈辱の中で、ようやく完成した曲に自信をのぞかせる5人。
 だが、リリース直後の再生回数はたったの「103回」しかなく、対バンライブのチケットの売り上げは想定の半分にも満たなかった。
 チケット完売を達成したダイアモンドダストとの圧倒的な差。厳しい現実を突きつけられた仁菜はライブを前にして「ヒナ」から呼び出しを受ける。
 「認めたら?私が間違っていたと」と頭を下げることを要求してくるヒナに対して、この期に及んでも仁菜はどうしても屈服することができない。
 退所願を提出してまで自分たちを貫き通す5人は、すでに負け戦となった対バンライブのステージに臨む。(11〜13話)

【評】
 セルルック3DCGのキャラクターと、よく言えば朴訥ぼくとつだが早い話が訓練されていないアマチュア声優(歌手ではあるらしい)が織りなす足掻きと敗北の物語は、リアルというよりは身も蓋も無さすぎると切って捨てるかどうかで賛否の分かれるところである。
 主人公たちが事務所に入ってプロに転向するという展開は新しいと思った。
 アマチュアバンドジャンルが弱点としてきた「経済」の視点を盛り込みたい制作者の意図は大いに評価したいが、本作では上手く機能していないように思えた。
 キャラクターの掘り下げに時間がかかり、バンドメンバーが揃うまでに1クールの半分を費やしてしまったのが原因なのではないか。
 個人のドラマは主人公のみとして、プロ同士の「対バンライブ」に集中すれば物語として焦点の定まったものになったように思う。
 「バンド」ありきの企画だという事情があるにしても、現実バンド虚構アニメ双方ならび立たずでは勿体ない可能性を秘めた作品である。

視聴完了

「終末トレインどこへいく」

「メインビジュアル」公式サイトより

 「dアニメストア」で視聴。アニメーション発オリジナル作品。
 「環境が激変した現代日本を舞台に、行方不明となった友達を探す女の子4人組の冒険を描く」SFファンタジーギャグアニメ。
 全12話。公式Webサイト

【あらすじ】
 世界セカイをつなぐ夢の技術「7Gセブンジー回線」の開通にともなう暴走事件により、セカイは文字通り“一変”した。

 それから2年___生活環境は大きく変化し、日本(そしておそらく世界中)の政府機関はその機能をほぼ失なった。
 21歳3ヶ月を越えた人間は“動物”になってしまう埼玉県・吾野あがのに住む高校2年生「千倉静留」(ちくら・しずる)は、池袋に行ったまま行方不明となっていた親友「中富葉香」(なかとみ・ようか)の姿を新聞で発見する。
 町の外のことを知っているという元運転士の「平善治郎」(たいら・ぜんじろう)の力を借りて、吾野駅に放置されていた電車を発車させる静留。葉香のためならと集まった「星撫子」(ほし・なでしこ)「久我玲実」(くが・れいみ)「東雲晶」(しののめ・あきら)に葉香の飼い犬「ポチさん」も加わって、電車は一路「池袋駅」を目指す。

 町と町をつなぐ線路も景色もすっかり変わってしまった世界で、「頭にキノコが生えた住人がいる東吾野」「すごい形相のヤギ人間が襲ってくる武蔵横手」「奇声をあげる人参が出迎える高麗」……と沿線の駅を次々と通過していく静留たち。
 病気になった晶のために稲荷山公園で「ドクター」を探す途中、ミニチュアの軍隊に襲われた静留たちは、「ポンタロー」という人物がこの世界を仕切っていることを知る。救出したドクター「甲把(ガッパ)・マコト・オングストローム」も、すべての元凶は(ポンタローが開発推進した)7G回線にあると証言する。(1〜5話)

 電車に「アポジー号」と名付けて池袋へ向かう一行。その言葉は葉香が静留に教えてくれたものだった。葉香が池袋に行った理由に心当たりがあるという静留は、仲違いで喧嘩別れしてしまった2年前の事情を皆に話す。「それは静留が悪い」という3人と言い争いになった静留は勢いで電車を降りてしまう。
 ポチさんを連れて近道を行こうとする静留は、途中の森で、各地を渡り歩く生けるしかばね“渡りゾンビ”の群れに遭遇する。
 ゾンビの女王(実は人間)「黒木美都」(くろき・みと)から聞いた「池袋の女王」という存在に気になるものを感じながら池袋を目指す4人と一匹。
 一方、池袋では、7G事件の中心人物となってしまった葉香が「ポイズン・ポンタロー」という人物に軟禁されていた。
 ポンタローは、自らが開発・推進していた7G回線の(予期せぬ)暴走により発現した葉香の「世界を自在に作り変える」能力を制御し、世界を破滅に導いた(あるいは導きつつある)責任を回避する目的も兼ねて、葉香を「池袋の女王」に仕立て上げていたのである。
 洗脳されて「女王」に祭り上げられている葉香の記憶を取り戻して、世界消滅の危機を回避しなければならない。いつの間にか世界の命運を背負わされた静留たちはアポジー号を池袋駅へ走らせる。(6〜10話)

 混沌の坩堝・世界の中心たる「池袋駅」に到着した静留たちは、葉香との2年ぶりの再会を果たす。しかし記憶を奪われ全くの別人となってしまった葉香は、静留たちを敵として認定してしまう。
 逃げながらも葉香と世界を救わなければならない静留たちに、マコトと善治郎から「世界を元に戻す方法」が伝授される。
 「葉香にボタンをもう一度押させろ」……葉香を拉致して装甲列車に乗って逃げるポンタローを追ってアポジー号で追跡する静留たち。
 記憶を取り戻した葉香は、静留への想いを吐露し二人は無事、和解するのだった。(11〜12話)

中富葉香(池袋の女王)

 葉香がボタンをもう一度押したことで7G回線は停止し、世界に再び変化が訪れた。しかしそれは世界の“完全な復元”を意味しなかった。
 新しく生まれ変わった世界に想いを馳せながら5人と1匹は吾野へと帰っていった。

【評】
 アニメーション発のオリジナル企画は何よりも優先して見るべきという方針に従って視聴した。0から1を作り出すことの難しさに敢えて挑んだスタッフワークは見事成功しているように感じた。
 基本的なプロットは「女子高校生たちの股旅・巡礼もの」すなわち美少女版「銀河鉄道999」である。ゆきかえりし神話の構造で固められた物語で縦横無尽なイメージを炸裂させる個々のエピソードが非常に楽しい。連続テレビアニメーションのかがみというべき快作である。

視聴完了

「声優ラジオのウラオモテ」

メインビジュアル(公式サイトより)

 「dアニメストア」で視聴。同名ライトノベル原作のアニメ化作品。
 「現代日本を舞台に、現役女子高生声優の友情と仕事のトラブルその他を描く」コメディ系お仕事アニメ。
 全12話。公式Webサイト

【あらすじ】
 「夕陽ゆうひと〜」「やすみの!」
「「コーコーセーラジオ〜!」」
 偶然にも同じ高校、同じクラスの二人の声優によるラジオ番組の収録現場は、いつも和気藹々あいあい。……というのはオモテの顔で、見た目も性格も正反対の二人は口を開けば大喧嘩してしまうような間柄だ……。

 現役“女子高生”ギャル声優「歌種うたたねやすみ」こと「佐藤由美子」(さとう・ゆみこ)は、地味目なクラスメイトの「渡辺千佳」(わたなべ・ちか)が人気声優「夕暮ゆうぐれ夕陽」と知らずに口論となり、その後、ようやく決まったラジオパーソナリティの仕事で共演することになったと知る。非常に気まずい。第一印象は最悪な二人……でもそんなのお客さんの知るところじゃない。現役女子高生声優“夕陽とやすみ”は、今日も営業スマイルでラジオの公開録音に臨む。(1話)

 由美子(やすみ)の次の仕事が秋放送の新番組と決まった。役所は準主役と申し分ないものの、主役があの「夕暮夕陽」なのが気になる由美子だったが、新人声優がぶつかる「四年目の壁」の四年目にあたる「歌種やすみ」に仕事を選り好みできる余裕などあるはずもなかった。
 別のアニメで姉妹役を演じていた縁で結成された声優ユニット「ハートタルト」のイベントの舞台袖で「アイドル声優は声優の仕事じゃない」と自論を展開する千佳(夕陽)に、由美子(やすみ)は「仕事は仕事」だと反論する。
 長女役でやすみ(三女)と千佳(次女)の先輩に当たる「桜並木乙女」(さくらなみき・おとめ)が体調不良を起こしながらも“お客さんのために”ステージに立つ姿を見た後輩二人は、プロ意識と覚悟のほどを思い知るのだった。
 そんな二人のラジオがあと4回……1ヶ月で打ち切られると決まり、収録現場にはギスギスした空気が流れる。折あしく「夕暮夕陽」(千佳)に枕営業(いわゆる性接待)疑惑が持ち上がり、いわゆる「炎上」状態となってしまう。
 くだんの相手は、彼女の実の父親でアニメ監督の「神代」だったが、公にしたところで今度は縁故キャスティングの疑いをかけられてしまうというジレンマに陥っていた夕陽(千佳)に、同じ学校の身元特定暴露系Y○uTuberが追い打ちをかけるように突撃配信取材(もちろん無許可で)を敢行する。
 横暴で無礼な生徒をその場の勢いで殴り倒して逃げ出した千佳(夕陽)は「声優を辞める」とまで言い出してしまう。アイドル声優としてもはややっていけないと判断した二人は、声優生命をかけた「ラジオ出張版」と称した動画生配信に挑む。(2〜4話)

 ラジオ番組の継続が急きょ決まり、結果オーライとはいえアイドル声優「歌種やすみ」の命運は文字通り尽きたも同然だった。
 覚悟の上での行動だからと由美子は自分を納得させるが、けじめをつけるためマネージャーの「加賀崎りんご」(かがさき・りんご)と共に夕陽が所属する事務所に謝罪に行って知らされたのは、(事務所同士で)手打ちはすでに済ませてあるということだった。
 自分の行動では何ひとつ変えられなかったことに衝撃を受ける由美子(やすみ)に、先輩声優「柚日咲めくる」(ゆびさき・めくる)からも辛辣な言葉がかけられる。「あんたのせいで声優(全体)が疑われる」
 反論したいが正論ゆえに何も言い返せない由美子。こうなったらラジオで挽回するしかないと気を取り直した二人だったが、めくるのラジオ番組へのゲスト出演収録前でも「尻ぬぐい」と露骨に嫌味を言われてしまう。
 悔しさを滲ませながらも、めくるの仕事に瞠目するところがあると気が付く二人。「お前が目指すべき(声優の)姿だ」というマネージャーの指摘も納得だが、彼女の様子なんか変だ……。
 一方、夕陽の事務所では、千佳の声優活動休止について話し合われていた。娘を心配する母親の気持ちも理解できるが、今辞められるのは困ると喰ってかかる由美子に千佳の母親から「ある条件」が提示される……。(5〜6話)

 「やすみ(由美子)と千佳(夕陽)の二人で学校から商店街まで歩いてその間、誰からも声をかけられなかったら、活動休止は撤回する」という千佳の母親が出した条件はクリアできないことが前提なのは明らかだが、それでもチャンスはまだある。先の見えない不安に慄く千佳の気持ちを察しつつとりあえずは目の前の仕事に集中しようと発破をかける由美子。しかし彼女もまた、ギャルの“素”を出して仕事をすることにやりづらさを感じていた。
 そんな由美子の前に挙動不審の熱烈な「やすみ」ファンが現れ、今のやすみは“違う”と指摘する。「歌種やすみが好きなファン」への裏切りが違和感の正体だと気がつく由美子。(ちなみに熱烈なファンの正体は声優マニアのめくるちゃんでした!)
 そして迎えた試練の時間___様々な感情が入り混じったファン注視の中、学校から出る二人はしかし、自分たちの仕事が決して間違っていないことを実感する。
 声優活動をかけた二人の挑戦は業界の内外でさまざまな反響を呼び、これまでの騒動もようやく沈静化していった。
 由美子は音響監督の推薦で受けたオーディションで、今まで演じたことのない「悪役」に挑戦することになった。同じくオーディションを受ける千佳へのライバル心から力が入りすぎたのか、うまく結果が出せず焦る由美子。居残りでもリテイク続出で判断保留持ちかえりますと言われてしまった由美子は、雨の中、悔し涙を滲ませる。(7〜8話)

 事務所に戻った由美子は加賀崎にアドバイスを求める。「演じる」んじゃない役を「降ろせ」という演技のセオリーを自分なりにどう解釈するか。加賀崎からこんを詰めすぎるなと釘を刺された由美子は、クリスマスイブに久々に友人たちとカラオケに行って気分転換をする。
 強引に誘った千佳とデュエットしたりして盛り上がった由美子は、帰り道に千佳の家に連行される形で二人で神代アニメのBlu-rayBOXを徹夜で視聴する。
 神代監督の新作アニメ「幻影機兵ファントム」に声優として参加することになった由美子。リテイク数は相変わらず多いがそれでも何とかやってきている……と思いたいが、自分の演技に自信が持てず、めくるや乙女姉さんに助言を求める。
 「夕陽(千佳)に聞けばいい(なぜ聞かないの?)」と言われるが、由美子は素直に従うことができない。
 そして、やすみが演じる「シラユリ・メイ」が“壮絶な”最期を遂げるエピソードの台本を受け取った由美子は音響監督の「杉下」(すぎした)から「魂の演技」を求められる。先輩声優からも「シラユリが次回の主役だ」と念を押され、プレッシャーから再び袋小路に迷い込む由美子。
 なりふり構っていられなくなった由美子は、恥も外聞もかなぐり捨てて千佳に助けを求めた。
 「アンタのそういうところキライよ……」最強のライバルにして最高の同士ともだちの力を借りて、由美子は再収録に臨む。(9〜11話)

 由美子の演技には遠慮がある。「ブレーキを踏まない(アクセル踏みっぱなしの)全力の演技」をこそ監督たちは求めているんだという、忌憚のない千佳の意見を参考に由美子は初めて全身全霊の演技をすることができた。
 由美子の演技に「あなたのそーいうところホントにキラい!」と膨れる千佳に、声優として何とか続けていけそうという予感を得る由美子。
 私たちの戦いはこれからですよ!(12話)

【評】
 「友情」「努力」「勝利」という成長の方程式に忠実なエンタメのお手本のような作品。マンネリズム大いに結構ルーチンワークだからどうした。浮世の憂さ晴らしに見るのはこういう作品でなければならない。
 二度みたいとは(しばらくは)思わないが、暇つぶしを求めている人には勧められるテレビアニメとは言える。

視聴完了

「となりの妖怪さん」

本編映像(公式サイトより)

 「dアニメストア」で視聴。同名マンガ原作のアニメ化作品。
 「現代日本を舞台に、妖怪と人間(と神様)が共存する社会で繰り広げられる日常生活のあれこれを描く」ファンタジーアニメ。
 全13話。公式Webサイト

【あらすじ】
 妖怪と人と八百万やおよろずの神が共存する、山あいの風がよく吹く町「縁ヶ森」(ふちがもり)で20年以上生き、妖怪猫又ねこまたに新生した「ぶちお」は、新米妖怪として先達の化けぎつね立花百合」(たちばな・ゆり)から化け学(変身術)のレクチャーを受ける。
 一方、幼い頃に父親が行方不明となった過去を持つ人間の小学生「杉本睦実」(すぎもと・むつみ)こと「むーちゃん」は、森の入り口に立つ不気味な影からの視線を感じていた。
 そんなある日、近所に住むカラス天狗の「縁火山次郎坊」(ふちびやま・じろうぼう)こと「ジロー」の後をつけていった睦実が、白いヘビの妖怪に心を乗っ取られてジローの母体である大杉の標縄しめなわを切ろうとする事件が発生する。
 100年ほど昔、ジローに退治されて怨霊と化した大蛇「水神」の怨嗟のこえを聞き届けたジローは、生まれ変わったら彼女をこの地に受け入れることを約する。(1〜3話)

 諏訪湖に住む神様「竜神」が目覚める季節。
 魔界にいる12人の魔王のひとり「山本五郎左衛門」(さんもと・ごろうざえもん)から「東京に来ないか」と誘いを受けたぶちおは、彼との会話の中で自分が猫又になった経緯いきさつに想いを馳せる。ジローに連れられて挨拶に行った竜神から山本さんもととの関係を問われたぶちおは「(彼には)心を許すな」と忠告を受ける。
 同じ頃、縁ヶ森では時空間の異常が発生し、並行世界もしくはパラレルワールドからの「来訪者」が頻繁に出入りするようになる。
 そんなある日、百合が訪ねてきた“人間の”自分と入れ替わってしまう事象が発生。半妖の百合は反動で紛れ込んだ人間の世界で思いがけず(こちらの世界で)音信不通となっている自分の家族と向き合うことに。
 妖怪になったぶちおは、人間との生きる時間の違いに悩み、いずれ来る家族との別れへの不安を飲み会の席で漏らす。妖怪ならば一度は至る悩みと慰められるが、同じ悩みは「西谷和彦」(にしや・かずひこ)の愛車で付喪つくも神の「西谷千彰」(にしや・ちあき)こと「ワーゲン」も抱えていた。
 数百年を生きるジローもまた同じように他人には言えない秘密を抱えている。
 ジローが大切に持っていた写真を見つけた睦実は、そこに写っているのが自分の曾祖母「ハル」であることを知る。別れの際に「私のことは忘れて」と大切なハルに言われたことがずっと心に引っ掛かっていたジローは、睦実の祖母(ハルの娘)「杉本こづえ」がその後見つけた手紙に綴られた「叶うならば、ずっと貴方のとなりにいたい」という一文に救いを見出すのだった。(4〜9話)

 杉本家の近くに現れた黒い影に、むつみが飲み込まれてしまった。ジローと鼻高天狗の「縁火山太善坊」(ふちびやま・たぜんぼう)こと「おっちゃん」が間一髪で救い出したものの、影が執拗に「むーちゃん」に拘るのか理由が全くわからない。
 影と対話を試みたジローは、影が仕事で出張中に失踪したむーちゃんのお父さんであることを知る。
 「虚無」と呼ばれる黒い空間に引き摺り込まれたお父さんは、身体と記憶を奪われたのちも「(誰かに)会いたい…」一心で現世に留まり続けていたと言うのだ。
 自我に目覚め妖怪「ベトベトさん」となった「誰か」に「まーさん」という名前がついたものの、妖怪それを「お父さん」と呼ばなければならない睦実の心情は複雑だ。
 「境界線崩壊」の調査で時空間研究所員が町に来ていると聞いた大石家の次男「大石たくみ」(おおいし・たくみ)は噂の真相について尋ねるが答えをはぐらかされてしまう。研究職以前は映画監督になりたかったものの「運がない」ことを理由に諦めてしまっていたたくみは、山本さんもとに呼び出されて東京に行くぶちおに付いて行ったところを、空が文字通り「裂ける」異常現象に遭遇する。(10〜11話)

 裂けた空の境界線から異界の怪物「鬼」が大挙して現れ、人々を襲い始める。
 境界線崩壊で発生した謎の空間「ニエンテ」より生じた鬼によって分身のことごとくを失った魔王・山本は「災害が迫っている」という言葉を残し姿を消す。
 山本の言葉通り、次々と身体を失っていく妖怪たち。そして「鬼の正体」に気が付くジロー。
 「鬼はおそらく元はひとだ」
 世界の反転により、言霊ことだまから生まれた妖怪たちは次々と倒れていく。そして言霊を生み出す人間たちもまた何も無い空間へと引きずり込まれていた。
 しかし、睦実、たくみ、「佐野龍」(さの・りょう)たちは“言葉”を思い出すことで世界の反転を食い止める。(12〜13話)

 マーさんから父「大杉真守」(おおすぎ・まもる)の言葉を受け取った睦実は、見送ることだけはできたという苦い現実と折り合いをつけることで生きていくことを誓う。
 夏はもう、近くまで迫っていた。

【評】
 人間と妖怪と神様が共存する世界観の構築が見事。分断と対立の象徴である「時空間」の突然の現出など現代性を取り込みつつ、基本はやはり人間同士のつながりや絆であるというストーリー構成が好ましい物語であった。
 妖怪など「異形」を扱うアニメとしては出色の出来栄えで、地味だが重要な作品であると記録しておく。

視聴完了

「怪異と乙女の神隠し」

メインビジュアル(公式サイトより)

  「dアニメストア」で視聴。同名マンガ原作のアニメ化作品。
 「現代日本を舞台に、超常現象に起因する不可思議な事件の謎を解く少年と小説家の活躍を描く」オカルトファンタジーアニメ。
  全12話。公式Webサイト

【あらすじ】
 書店に勤めるアルバイト店員「緒川菫子」(おがわ・すみれこ)と「化野蓮」(あだしの・れん)は、閑にあかせて今日も無駄話に花を咲かせる。曰く「オカルトはポルノ。つまりオカルト好きは淫乱……」などなど。
 15歳で新人賞を獲得して以来、新作を10年以上出せていない小説家でもある菫子に、店長から「ぎゃく万引きの本」がプレゼントされる。
 万引きの逆で誰かが置いていった謎の本を自宅へ持ち帰った菫子は、処女のまま28歳になった午前0時にその本を開いてしまう。
 翌日から無断欠勤が続く菫子を心配した蓮が彼女の自宅を訪ねると、そこでは子供の姿となった菫子らしき“何か”が、取り憑かれたように小説を書いていた。
 呪われた本の影響で自在に肉体年齢を若返らせる「変若人をちびと」となってしまった菫子を妖しげな術式で救い出す蓮。彼は当然、この世界の人間ではないのだろう……。(1話)

 蓮は、人に仇なす『怪異」の痕跡である“呪物”を集めて妹の「化野乙」(あだしの・おと)を何処かへ送り出そうとしていた。だが菫子の呪物(逆万引きの本)程度では其処へ行く「切符」は買えないらしい。
 新たな怪異を探すことになった蓮は、乙が通う「コオネ女学院」で起こる生徒の集団不登校の謎を解くために菫子に協力を依頼する。
 小説のネタ集めを兼ねた花の女子校ライフにご満悦の28歳(処女)小説家は、怪異の正体が中等部の女性教師「畦目真奈美」(うなめ・まなみ)であることに気がつく。罠を張って真奈美を誘き出す蓮。しかし彼女は怪異の中でも“格が違う”「牛鬼うしおに塵輪鬼ちんりんき」の末裔だった。呪いを引き受けてなんとか調伏に成功する化野だったが、その代償に大きな深傷ふかでを負ってしまう。(2〜3話)

 花見酒をしながら創作意欲を整えていた菫子に「おとを2、3日預かってほしい」と蓮から連絡が入る。乙を預かることになった菫子は、謎めいた彼女の複雑な事情の一端を垣間見る。
 一方、蓮は傷ついた体を癒すために異界にいる「時空のおっさん」の元を訪れていた。蓮のダメージは想像以上に深刻で、このままでは目的を果たす前に死んでしまうだろうとおっさんから警告される。だが乙を両親のもとへ帰すという蓮の意志はいささかも揺るがない。
 蓮のいない間、乙を守るという口実でコオネ女学院に潜り込んで女子高生ライフを満喫していた菫子は乙と共に、畦目の自宅でお泊まり会をすることになった。
 そこへ姿の見えない謎の訪問者が現れる。雨の夜に家々のドアをノックしてまわる“何者”かを追っている女「早見シズク」(はやみ・しずく)と遭遇した菫子は、蓮に連絡を取る。
 一年前の雨の降る日に行方不明となった親友の「トモコ」を探しているというシズクのスマートフォンに残されたビデオ通話の画像から、「紅衣少女孩フォンイーシャオニュイハイ」という怪異ではないかと推測する蓮。だが、元となった台湾の怪談にはノックや雨の要素はないため調査には慎重にならざるを得ない。
 トモコを探しているのがシズクだけだということ。行方不明者が出るたびにどこかで遺体が出ること。海を越えて変質したと思しき紅衣少女孩がトモコであることに気づいていたシズクは、敢えて彼女のノックに応じる。
 育児放棄ネグレクトされていた自分を救ってくれた親友トモコの成れの果てに髪を切ってもらうシズクは、そのまま消えてしまう運命にあるのか?

 蓮の機転で、呪物・シズクのハサミを「切符」と交換して紅衣少女孩と化したトモコを「きさらぎ駅」から送り出すことができた。蓮と乙が「故郷」へ帰るとなれば、特級の呪物が必要となるだろう。蓮は自分が乙と一緒に帰れないことを知っているが、今はそれを明かすことはできない。(4〜7話)

 菫子が本屋でアルバイトをしている理由の一つに、心の片隅に残る「ある本」を探しているというものがある。幼いが故に不用意な言葉つかいで周囲とトラブルになりがちだった菫子が、友達と喧嘩して走り逃げているうちに辿りついた書店「玉心堂ぎょくしんどう書店」で読んだその本が、物書きとなった今の彼女を作ったといっても過言ではないという。
 蓮は書店の名前からその本屋が“本好きの姫”こと「書籍姫ほんひめ」の店ではないかと推測する。「だとしたら一冊寄贈しないといけないかもしれません」(8話)

 おとの友達で、両親から将来を嘱望されている大病院の令嬢「天地のどか」(あめつち・のどか)の唯一の気晴らしは、Vtuberブイチューバー姫魚よるむん」(ひめうおよるむん)の動画配信をみることだった。「アイドルになりたい」という夢をよるむんに応援されて高揚感に満たされるのどかだったが、突然発表された「よるむん引退」の報に衝撃を受ける。
 その日以来、周囲が驚くくらい活発になったのどかを心配した乙が、「団地妻だんちづま(菫子の別称)」に相談すると全国で同じような現象が発生していることが判明する。
 粗末な扱いを受けた器物に取り憑くという“付喪つくも神”……この場合は廃棄されたデジタルデータ=よるむんが何か関係しているのではないか?調査を進める蓮と菫子たちをよそに被害は次々と拡大していく。
 のどかを救うため手を尽くす乙に必死で抵抗するのどか。そこに畦目が車椅子に乗った女性を連れて現れる。Vtuberよるむんの“中の人”こと「花村美甘」(はなむら・みかも)は、難病で自由の利かなくなりつつある身体に無理を押して「画霊」であるよるむんの“神上げ”に協力してほしいとのどかに言う。
 降りてきた神を天にお帰りいただく神上げの儀式が「よるむん卒業ライブ配信」という前代未聞のかたちをとって、全世界注視のなか執り行われようとしていた。(9〜10話)

 よるむんが取り憑いたタブレットを呪物として携え「きさらぎ駅」へと向かう蓮だったが、駅の「係員」からは「まだ足りない」と言われてしまう。
 一方、執筆中の小説がまもなく仕上がりそうな菫子は、最初の読者は蓮をと想定していた。最新作「怪異と乙女の神隠し」を完成させた菫子は、さっそく蓮にメッセージを送る。しかし待てど暮らせど返信はおろか既読すらつかない。
 蓮からきさらぎ駅を出る電車の切符を渡された乙は、畦目の自宅を訪れ「団地妻(=菫子)へのメッセージ」を託す。
 きさらぎ駅で、蓮を目の敵にする「猫の王」と対峙した乙は、傍にいる蓮が「本当の兄」ではないことを唐突に思い出す。彼は戦争で死にかけた乙を救うために生まれた「化野蓮という怪異」だったのだ。

 読む人を失って放心状態にあった菫子は、再び玉心堂書店を訪れ自作の小説を献本する。「店員」が読んでいる間、気になっていた「あの本」を見つけた菫子は我知らず突然発生した闇に向かって叫ぶ。君が必要だ、と。

 後日、相変わらず客のいない書店には暇を託つアルバイトの菫子と化野蓮の姿があった。
 菫子の新作が書棚に並ぶ一方、書店では「逆万引きの本」がまた出てくる。
 その本には誰かの肉筆で「私はしはわせにくらしてゐます」と書かれていた。(了)

【評】
 「数々の怪異をめぐるささやかな友情と別れの物語」と冒頭で語られる通りの少々やるせ無い抑制の効いた物語が楽しめる一作。都市伝説と古典怪談がミックスされた怪異との対峙や謎解き要素も現代的で良い。
 原作と違い、物語に一定の区切りをつける(ここで終わっても差し支えない)ため一部の登場人物、具体的には「猫の王」などの扱いが中途半端になってしまったのが少し残念な気はする。

視聴完了

「おーい!トンボ」

本編画像(公式サイトより)

 「dアニメストア」で視聴。同名マンガ原作のアニメ化作品。
 「現代日本を舞台に、独学の天才ゴルフ少女と訳あり元プロゴルファーの交流その他を描く」スポーツ(ゴルフ)アニメ。
 全13話(未完)。公式Webサイト

【あらすじ】
 九州地方某県の海のはて、トカラ列島の「火之島ひのしま」へ就職のためにフェリーでやって来た訳ありの男「五十嵐一賀」(いがらし・かずよし)は、スーパーもコンビニもない島の其処かしこに何故か「ゴルフ」の施設があることに違和感を覚える。
 かつてゴルフプレイヤーだったらしい五十嵐は、手作りの本格的ゴルフコースで、一本のクラブ(三番アイアン)でショットからパットまでこなす脅威の中学3年生「大井とんぼ」(おおい・とんぼ)と出会う。
 互いへの興味からすぐに知り合いとなる二人。だが五十嵐はライセンスを剥奪された元プロゴルファーであり、とんぼもまた両親をゴルフがらみの事故で失うという過去を背負っていた。とんぼに秘められた(とんでもない)ゴルフの才能を伸ばしてやりたいと思う五十嵐に対し、彼女はあくまで「どこにも行かない」と言い張る。(1〜2話)

 とんぼにゴルフの楽しさを教えようと、五十嵐はプロのテクニックを彼女に伝授する。とんぼとほぼ毎日コースを回る中、五十嵐は彼女の自由闊達なゴルフに感心する一方で「負け」や「失敗」に対する恐怖プレッシャー感の欠如を問題視していた。
 「とんぼ……お前がやっているのはゴルフじゃない!」あくまでも「遊び」の延長でしかないとんぼのゴルフは“競技ゴルフ”では通じないと忠告する五十嵐。五十嵐イガイガは真剣になると顔が怖くなるのだ……
 中学校卒業まであと8ヶ月となったとんぼを島の外に出て行かせるにはどうすればいいか。島の診療所の看護師「安谷屋洋子」(あだにや・ようこ)との会話の中で五十嵐は発想の転換が必要だと感じる。(3〜5話)

 とんぼに必要なのは強敵ライバルという存在だ。フェリーに乗って鹿児島までとんぼに匹敵するプレイヤーを探しに行った五十嵐だったが、目ぼしい成果は得られない。
 帰路のフェリーでたまたま(?)乗り合わせた洋子から、一人心当たりがあると聞いた五十嵐は火之島に招待してほしいと頼む。
 数日後、フェリーに乗ってやって来た洋子の姪「安谷屋つぶら」(あだにや・つぶら)は、とんぼと同じ歳ですでに九州ジュニアを制した正真正銘の逸材ゴルファーだった。世界一のプロになって親孝行をしたいという目標モチベーションを持つなど何もかも自分とは違うつぶらと初対面ながら意気投合したとんぼは、さっそく島のゴルフコースで一緒にラウンドをまわる。
 自由奔放なとんぼのゴルフに驚きながらも、徹底した理論に裏打ちされた基本に忠実な「負けないゴルフ」スタイルを貫くつぶらに、とんぼもまたこれまで感じたことのない感情が芽生えるのだった。(6〜7話)

 「とんぼはもっとゴルフをするべき!」と自分の5番ウッドを贈って火之島を去ったつぶらや、「とんぼは何をして生きていくんだ?」と中学卒業後の進路について訊ねてくる祖父「大井権三」(おおい・ごんぞう)の言葉が、とんぼの心境に変化をもたらしつつあったある日、五十嵐が島のゴルフコースに隠された新たなコースの設計図を発見する。とんぼと一緒に隠されたホールをラウンドしてみた五十嵐は、コースの設計者に会ってみたいと思う。
 火之島ゴルフコースの設計者「クタ」さんが住むトカラ列島の「悪礫島あくれきじま」まで行こうという五十嵐に、とんぼはまだ島外に出ることに抵抗を感じていた。
 そんなとんぼに、五十嵐は自らの過去を打ち明ける。
 進退がかかった後輩からスコア操作という八百長を持ちかけられ、たまたまスコアが伸びなかったために結果として彼を廃業から救うことになった五十嵐は、謝礼金として振り込まれたお金を返金しなかったことが協会に問題視されてライセンス剥奪処分を受けていたのである。
 結果、妻子とも離婚し着のみ着のままで火之島にたどり着いた五十嵐は、後悔だけはしてほしくないととんぼに言う。
 つぶらが大会で優勝し、自分の夢に着実に近づいていることを知ったとんぼは、五十嵐と共にフェリーに乗り島を出るのだった。(8〜9話)

 世俗を離れ、海の涯のそのまた涯の悪礫島の山奥に暮らすクタさんは、二人を快く迎え入れる。クタさんがデザインした1ホールだけの特別コースに向かった二人は、その超難易度ぶりに苦戦を強いられる。独創的なショットでコースを攻略していくとんぼのゴルフに舌を巻きつつ、やはり「とんぼのゴルフスタイルは競技ゴルフの世界では通用しない!」と断言するクタさん。
 複雑な起伏と強烈な傾斜を持つ「カップに寄せる明確なラインのない」練習グリーンで、自己流の強いこだわりが却ってとんぼのゴルフを損ねてしまうことを教えたいクタさんに、「無いはずのライン」を文字通り「皮膚感覚」で探し出して対抗するとんぼ。
 クタさんからパターを贈られて火之島に戻ってきたとんぼは、両親の墓前で「知らない世界」を見に行くと誓う。(10〜11話)

 火之島には中学校までしかないため、中学3年生になった島の子供は「最後の夏休み」という作文を書くことになっていた。とんぼは作文の中で故郷への想いとゴルフを通じた将来の夢と決意を語る。
 「島で暮らす夏休みはこれで最後」と締め括った作文に島の住人は驚きつつも一方で嬉しく思うのだった。
 五十嵐がとんぼを受け入れ先を選定するなどバックアップに奔走する一方で、島の住民もとんぼのために何かしてやりたいと考える。
 そして迎えた卒業式。とんぼは卒業証書を手に出発たびだちに向けた準備を始める。
 旅立ちの朝、権三への置き手紙を認めたとんぼは、4本のクラブとともに島を後にする。(12〜13話)

第2シーズンに続く

テレビアニメシリーズ第二期放送決定。2024年秋(第4四半期)予定。公式サイト告知

【評】
 放送局(テレビ東京系)ならではのゴルフアニメで、実践的描写に力を入れているのが意外といえば意外だし、らしいと言えばらしいとも言える。いずれにせよ「いい歳した大人が見る」アニメの枠があることが大変すばらしいと思う。
 作画や演出が一定水準をやや下回る出来なのが残念だが、ビルドゥングスロマンという王道の物語が補っているのでコレはこれでアリだと思う。
 第2期も一応視聴予定である。

視聴完了

「花野井くんと恋の病」

メインビジュアル(公式サイトより)
ほたる(右)と花野井くん

 Netflixで視聴(最速配信のため)。同名マンガ原作のアニメ化作品。
「現代日本を舞台に、恋を知らない高校生男女の危ない?!恋模様を描く」ラブコメアニメ。
 全12話。公式Webサイト

【あらすじ】
 隣のクラスのイケメン高校生「花野井颯生」(はなのい・さき)が、カフェで彼女と別れ話をしているところを目撃した高校1年生「日生ほたる」(ひなせ・ほたる)は、雪が降るなか茫然自失している彼に傘を差し出したことをきっかけに翌日なぜか「告白」を受け、とりあえずお試しで付き合うことになった。
 だが、ほたるは生まれてこの方「恋」をしたことがない、人を好きになる気持ちというものがよく分かっていない女子高生だった。
 一方、花野井くんも、ほたるに言われるまま髪を切ってきたり無くしたピアスをいつまでも探し続けたりと、頭も顔も偏差値80オーバー(そんな値ないけど)だけどやることがちょっと?極端な変わった男の子だった。人の気持ちがよく分からないサイコパス気質な二人の前途には不安しかない……。(1話)

 分からないなりに自分で調べたり友達や花野井くん本人に聞いてみたりと涙ぐましい努力を重ねるほたるだったが、(お試し期間中の)彼氏は本心を全く見せてくれない。
 一方、クリスマスを祝うために自宅にほたるを招いた花野井くんの自室には「ほたるちゃんゾーン」という秘密の本棚が存在していた。
 クリスマスイブがほたるの誕生日であると何故か知っていたり、突然「お姫様抱っこ」してみたりと、花野井くんの異常性に気づかないまま、ほたるは「お試し期間」を延長する。
 正月の初詣で「恋が少しでもわかるように」と神様にお願いしてみたりしながら、本屋でアルバイトを始めたほたるは、そこで思いがけず小学校時代の同級生「八尾創平」(やお・そうへい)と再会する。
 ほたるのことを「ほたこ」と親しげに話しかける創平に敵意むき出しで迫る花野井くん。彼の豹変ぶりに小学校時代のトラウマを思い出したほたるは、バレンタインデーのチョコを一緒に作ろうと誘う。
 一生懸命チョコを作る花野井くんにようやく「好き」と初めて伝えられたほたる。お試し期間は終わりということで二人は晴れて恋人になる。(2〜6話)

 ……にもかかわらず、ほたるのいう「好き」が本当に恋なのか疑ってしまう花野井くん。ほたる以外の人間にはまるで興味を示さない彼にとって「恋」とは自分の独占欲の発露でしかない。
 一緒にいる時間を増やしたいがために、ほたると同じ書店で働くことにした花野井くんは、八尾は言うに及ばず店長の「黒江」とうまくコミュニケーションが取れていない。
 一方、花野井くんとどこかで会ったと感じていた八尾は、小学校時代の卒業アルバムの中にその答えを発見する。6年5組の目立たない眼鏡の男の子は紛れもない、花野井颯生その人だった!(7〜8話)

 新年度を前に、花野井くんの誕生日を祝うついでに花見に行こうと盛り上がる二人。だが、ほたるは当日どうしても抜けられない用事ができてしまう。
 海外出張中の医者の両親からの愛情に恵まれず、人一倍「誰かの一番」や「いつも一緒にいてくれる人」に飢えていた花野井くんは、用事を切り上げて駆けつけてくれたほたるに、一番じゃなくてもいいから一緒にいてほしいと懇願する。
 2年生になっても相変わらず周囲と距離を置く花野井くんに、ほたるは友達と一緒に弁当を食べようと誘う。ほたるの笑顔が見られるなら……という理由で応じる花野井くんの真意などほたるに通じるはずもない。
 一方、花野井くんが小学校時代の同級生だったことを確認した八尾は、もっと仲良くしたいとほたるを含むバイト仲間で親睦会をしようと提案する。(9〜10話)

 親睦会が開かれたボウリング場で、八尾と花野井くんの間に何かあることに何となく勘づくが、敢えて問わないほたるに「自分が本当は何者なのか」話すべきかどうか迷う花野井くん。
 意を決して「まだ君に言ってない事がある」と言っても彼女に「無理して言わなくてもいいよ」と返されてはどうしようもない。それよりも……「大切な人はたった一人でいい」花野井くんは彼女ほたるを、誰もいない教室でついに押し倒してしまう。
 初めてのキスの余韻にひたる花野井くんの脳裏に浮かぶのは、小学校時代。引っ込み思案で人見知りの彼に優しく接してくれた「あの子」のことだった。
 しかし彼女がいじめを受けている現場で何もできなかったことへの負い目を感じていた花野井くんは、まさかその女の子と“再会”できるなどとは思っていなかったのである。
 一方、自分に一生無縁だと思っていた「恋」を教えてくれた彼とのキスで幸せの絶頂となったほたるは、大切なことを何も知らない(「嫌だったら言わなくていいよ!」と言っちゃったし)まま、無邪気に揃いの指輪アクセサリーを一緒に買ってしまう。
 「大好きだよ、ほたるちゃん!」二人の前途に何が待ち構えているか見るのが怖い……。

【評】
 「恋がわからない女子×愛が重すぎる男子」の初恋ラブストーリーと公式サイトのキャッチコピーにある通り、最悪の組み合わせで繰り広げられる恋愛模様に戦慄を禁じ得ない。「混ぜるな危険!」とラベルを貼っておくべきな、近来稀に見るラブストーリーの怪作である。
 愛は執着にも似て必ずしも尊いとは言えないという教訓ならば、物語としてアリなのだろうが本作は……。
 怪作と書いたが、アニメ化されるほどの人気作品ならば、一定数の支持を集めているということになるのだから、世の中には「恋」が何なのかよく分かっていない人が一定数いるとも言えるわけで、もしかすると事態はもっと深刻なのかもしれない。

視聴完了

T・Pタイムパトロールぼん」(Netflixアニメ)

メインビジュアル(公式サイトより)
凡(右)とリーム(中央)と「ブヨヨン」

 Netflixで視聴。独占配信タイトル。同名マンガ原作のアニメ化作品。
「現代日本を舞台に、時空間パトロール隊員となった少年少女の活躍を描く」SF(すこし、ふしぎ)アニメ。
シーズン1(全12話)が公開中。シーズン2も24年7月より同サイトで公開予定。公式Webサイト

【あらすじ】
 平凡を絵に描いたような中学生「並平凡」(なみひら・ぼん)は、思いがけずタイムトラベラーを目撃したことから、タイムパトロール(T・P)の見習い隊員として先輩の正隊員「リーム・ストリーム」らと共に、歴史の中で「不幸な死に方」をする対象者の救助任務に当たることになった。(1〜11話)

 数々の任務をこなすことで、正隊員に任命された凡を見届けたリームは、未来へと帰っていく。(12話)

第2シーズンへつづく。

【評】
 生誕90周年記念作品にして、約30年ぶりの「新作アニメ」という触れ込みの藤子・F・不二雄ワールドの復活をまずは言祝ことほぎたい。テレビシリーズでなくネット配信オンリーとなった事情はさておき、原作のエッセンスを漏れなく拾い上げた作画と演出は見事の一言。特に、手書き作画で描かれる藤子・F美少女の健全?なエロさ(褒め言葉)は、嬉しいところである。
 斯様に子供向けの内容ではないため、時にシビアな状況や描写も散見されるが、基本的に性善説に則った世界観なので安心して見ることができるところも評価したい。
 タイムトラベルにつきものの「歴史改変の恐怖」を描いたオチが見事な第4話「古代人太平洋を行く」が出色の出来。
 7月公開予定の第2シーズンも引き続き視聴する予定。

視聴完了

「死神坊ちゃんと黒メイド(3期)」

メインビジュアル(公式サイトより)
坊ちゃん(右)とアリス

 レコーダー録画で視聴。ABEMA独占配信タイトル。
 同名マンガ原作のアニメ化作品。「現代もしくは近過去の外国を舞台に、呪いをかけられた貴族の少年と彼に仕える美貌のメイドの日常を描く」ファンタジーラブコメアニメ。
 全12話(通算36話)。2021年第3四半期ならびに2023年第3四半期放送のテレビアニメの続編にして完結編。公式Webサイト

【ここまでのあらすじ】
 幼い頃に「触れた生き物を全て死なせてしまう」呪いを魔女「シャーデー」にかけられた貴族の「坊ちゃん」は、周囲から死神と蔑み遠ざけられ、森の奥の大きな館で孤独な隠遁生活を余儀なくされていた。
 そんな坊ちゃんの目下の悩みは、自分に仕える美貌のメイド「アリス・レンドロット」の距離が“近すぎる”ということ。抜群のプロポーションに扇状的なコスチュームを身にまとって明らかに僕のことを誘惑している……思春期を迎えた男の子でもある坊ちゃんにとって、彼女に触れられそうで触れられない状況はある意味、呪いよりも辛いのであった。
 様々な出会いと知己を得る中で、ついに自分の呪いを解く手がかりを得た坊ちゃんは、「次の春までに呪いを解いてアリスと結婚します」と当主代理を務める母「ガーベラ」の前で宣言する。
 魔女・シャーデーの双子の妹「ダレス」から「シャーデーは既に死んでいる」という衝撃の真実を明かされ、万事休すと思われた坊ちゃんだったが、時を操る魔法を駆使する魔女「ザイン」やシャーデーから“不老不死の呪い”をかけられた魔術師「ニコ」の協力を得たことで、かろうじて(主にアリスとの)未来に希望を見出す。

【第3期あらすじ】
 シャーデーに不老不死の呪いをかけられた人間の魔術師「ニコ」が運営する魔術学校で、魔術を学ぶ「坊ちゃん」たちの修行の日々が続いていた。
 一方、坊ちゃんの弟「ウォルター」のために人間になる方法を入手した魔女「ダレス」が魔界に戻ると、シャーデーの呪いで長き眠りについていたアリスの母「シャロン」が目覚めていた。
 シャロンは坊ちゃんに、彼の祖父「ヴィクトル」に仕えていた時に、頻繁に訪れていた「双子のシスター」のことを語る。病弱だった娘・アリスのために呪いのリンゴを食べたシャロンはなぜ今目覚めたのか?死せるシャーデーは、自分の分身をシャロンに埋め込んで復活を目論んでいたのである。
 シャーデーはまた、ヴィクトルとも契約のろいを結んでいた。幽霊となって、先に死んだ祖母「リズ」と共に永遠に地上を彷徨い続ける祖父と会った坊ちゃんは、自分が魔女の横恋慕かたおもいのために、触るもの全ての命を奪う呪いをかけられたことを知る。(25〜28話)

 過去に戻って、呪いをかける前のシャーデーを殺すというニコ主導の計画は着々と進行していた。決行を一週間後に控えて、全てが終わってからの身の振り方に想いを巡らせていた坊ちゃんは「家を継いでほしい」という母からの意外な言葉に戸惑いを覚える。しかしガーベラは同時にアリスとの結婚は認められないとも言うのだった。
 疎遠となっていた「フィリップ」とも再び友人関係に戻れた坊ちゃんは、シャーデーとも友達になれないかと考えるようになる。
 そしていよいよ過去へと向かうことになった坊ちゃんたちは、メンバーを3班に分け、まずは「話し合いによる説得」から作戦を決行する。
 呪いをかけられて以来の再会となるシャーデーに「友達になって未来へ行こう」と誘う坊ちゃん。しかしヴィクトルを失った魔女シャーデーは孫(坊ちゃん)の説得に耳を貸そうとしない。
 だが、ダレスが未来からやって来た少年ウォルターに説得される場面を見たシャーデーは、「どうして他人を信じられるのか」と疑問が生じる中でニコたち討伐隊と真っ向からぶつかり合う。
 戦いの中でもあくまで「君と友達になりたい」と言い続ける坊ちゃんだったが、暴走するシャーデーの魔力によって次々と仲間が倒れていく。
 だがシャーデーもまた、暴走する魔力に押しつぶされニコの前に膝を屈する。そんな彼女の前に坊ちゃんが立ち塞がる。(29〜34話)

 アリスがシャーデーの心の中へダイブして、頑なに凝り固まった彼女の心を解きほぐしたことでダレスの顔の傷(呪い)が消えた。憑き物が落ちたかのように生まれ変わったシャーデーは、自分から分離した巨大な魔力を抑え込み荒れ狂った場を収める。
 魔女の呪いを解かれ、現代へ戻ってきた坊ちゃんは、シャーデーを伴ってヴィクトルお祖父様(の幽霊)の元へ赴く。シャーデーは告げられなかった自分の思いをようやく伝えることができた。
 問題が片付き、本宅へ戻ることになった坊ちゃんは、アリスからの置き手紙を発見する。そこには「館を去る」とだけ書かれていた……。(35話)

 貴族に戻った坊ちゃんとアリスが添い遂げることは許されない。それは亡き祖父ヴィクトルから執事「ロブ」に伝えられた遺言だった。だが坊ちゃんは迷うことなくアリスと人生を共にするという選択をガーベラに報告に行く。
 母の許しも出て晴れて結婚することになった坊ちゃんこと「ビクター」とアリスは、結婚式の段取りをする合間に、新居や仕事探しに奔走する多忙な日々を送る。
 そして迎えた結婚式の日。みんなの祝福を受けたビクターとアリスは誓いのキスを交わす。(36話)

【評】
 全3クールの長丁場に渡り「寸止め」を喰らい続けた坊ちゃんことビクターくん(最終回で本名を明かすところも計算づくなのだろう)の恋の行方と幾ばくかの成長を描くラブコメだが、登場人物が多すぎて些か冗長だったのが残念であった。
 ミュージカル仕立ての演出も最初のクール以外は取りやめになったことも含めての「セルルックCG」の是非についても論じたいところではあるが、需要がなさそうなので省略する。
 ともかくも最後まで物語を終えたことはめでたいと言うことで。

視聴完了

「無職転生Ⅱ(2期)」

 「dアニメストア」で視聴。同名ライトノベル原作のアニメ化作品。
 「魔法が使える世界を舞台に、前世の記憶を継承して転生した主人公の波乱に満ちた冒険その他を描く」異世界ファンタジーアニメ。
 2021年(第1期)第1および第4四半期の続編(全23話+番外編1話)で、2023年第3四半期放送テレビシリーズの後半パート。
 全12話。(通算24話+番外編1話)公式Webサイト

【ここまでのあらすじ】
 働きもせず他人と関わりもせずゲームやネットに明け暮れてきた34歳・引きこもりニートの男(当然童貞)が、ある日、車にはねられその一生を終えた……と思ったら、次に目覚めた時には「剣と魔法」の異世界にいた。
 「ルーデウス・グレイラット」として生を受けた無職・ニート・童貞の34歳男は前世の後悔や経験を糧に「今度こそ本気で生きる」と固く誓う。
 幼少期より魔術を学ぶなどしながら様々な人々との出会いと別れを経て、「フィットア領転移事件」以降、共に数々の死線を潜り抜けてきた赤髪の美少女「エリス・ボレアス・グレイラット」との初体験に至るルーデウス。
 だが彼女エリスは置き手紙を残してルーデウスの前から姿を消すのだった。(第1期)

本編より(公式サイト)
ルーデウス・グレイラット(ルディ)」

 転移事件によって行方不明となっていた母「ゼニス」の消息をつかんだルーデウスは、失意の中から何かを掴もうと、もがき続けていた。父「パウロ」のパーティーメンバー「エリナリーゼ・ドラゴンロード」からゼニスがベガリット大陸で存命中と知らされたルーデウスは、人生の要所要所で必ず出てくる「ヒトガミ」に促されるまま「ラノア魔法大学」へと向かう。
 特別生としてラノア魔法大学に入学を許可されたルーデウスは、転移事件の真相を探りながらついでに重篤化した性的不能の治療法を探る日々を送っていた。
 生徒会長であるアスラ王国第2王女「アリエル」に仕える守護術師「フィッツ」先輩の協力を得て転移事件について調べていたルーデウスは、大学で召喚魔術を研究している特別生「サイレント・セブンスター」の元を訪れる。
 ルーデウスの質問に懐かしき異国の言葉“日本語”で答えるセブンスター。彼女の正体は転生前のルーデウスに命を救われた日本人女子高生「七星静香」だったのだ。
 この世界にとって“異物”である彼女の召喚が未曾有の大災害「転移事件」を起こしたという事の顛末を知ったルーデウスは、七星から元の世界に戻るための協力を求められる。
 召喚魔術の研究に没頭する二人にフィッツの心中は穏やかではなかった。守護術師である“彼”の正体は、転移事件でアスラ王国まで飛ばされてきたルーデウスの同郷で幼馴染のエルフの女性「シルフィエット」だったのだ。
 ルーデウスに密かに思いを寄せていたフィッツ=シルフィエットは真相を伝えるべきか悩む。一方、フィッツが“女性”であることを知ったルーデウスは、自分のもう一つの問題解決に希望を見出す。
 アリエル王女に促されルーデウスの部屋を訪れたフィッツは真実を明かし、幼なじみの自分の想いを伝える。アリエルが仕込んだ媚薬の効果もあり既成事実をつくった二人は、王女の前で婚約を報告するのだった。(第2期前半)

本編より(公式サイト)
ルディとシルフィエット(左)

【2期後半のあらすじ】
 幼馴染のシルフィこと「シルフィエット」と結ばれ、婚約を交わした「ルーデウス・グレイラット」は浮ついた気分もそこそこに結婚に向けた準備を始める。
 新たに構えた自宅で披露宴を開くルディとシルフィの元に様々な人たちが集まってくる。エルフの女剣士「エリナリーゼ・ドラゴンロード」がシルフィの祖母であることが判明したり、アスラ王国第2王女「アリエル・アネモイ・アスラ」の守護騎士「ルーク・ノトス・グレイラット」と決闘したりと、様々なことが起こるなか、ルーデウスとシルフィは無事、祝言をあげる。(13〜14話)

 ルーデウスの元に、父「パウロ・グレイラット」から妹の「ノルン」と異母妹の「アイシャ」を預かって欲しいという手紙が届く。護衛付きで間もなく到着するという妹たちをシルフィと共に待つことにするルーデウス。一方、ルーデウスと同じ世界から転移(召喚)してきた「七星静香」(ななほし・しずか)こと「サイレントセブンスター」は、元の世界に戻るための召喚魔術の研究が捗々しくないことに焦りを募らせていた。
 魔法陣を立体的に重ねることで強力な効果を得られることを発見するルーデウスたち。異界(七星やルーデウスたちの世界)から召喚(転移)できたのは何の変哲もない“ペットボトル”だったが、ナナホシ(セブンスター)にとっては十分な励みとなる。

 魔族・スペルド族の戦士「ルイジェルド・スペルディア」に伴われて、ノルンとアイシャがルーデウスの館に現れた。かつて「エリス・ボレアス・グレイラット」と共に冒険者パーティー「デッドエンド」を結成していた旧友との再会を喜ぶルーデウス。だがルイジェルドは、旧交を温める間もなく出立してしまう。
 パウロからの伝言を受けたルーデウスは、見た目も性格もまるで正反対な二人の妹のために魔法大学編入の手続きをする。「寮暮らしがしたい」とルーデウスに心を開かない内気なノルンの希望に沿えるよう取りはからうルーデウスだったが、ノルンが学校に行っていないことを人伝に知り心を痛める。(15〜16話)

本編より(公式サイト)
ノルン(右)とアイシャ
ルーデウスの妹たち

 寮の自室に引きこもってしまったノルンの姿に前世かつての自分を重ねてしまうルーデウス。一方、兄を“肉親を名乗る見知らぬ他人”と恐れていたノルンもまた、ルーデウスとどう向き合えばいいか分からないでいた。
 「ここで引くわけにはいかない」___夜を徹して語り合う二人は、逃げずに向き合うことで妥協点を見出す。
 ひとつ山場を超えてようやく安定してきたルーデウスの近辺にまたしても大小の“波”が押し寄せる。
 シルフィが「懐妊」したのだ。
 幸せの絶頂に打ち震えるルーデウスに、「ゼニス救出困難」と救援を求めるパウロからの手紙が冷や水を浴びせる。
 さらに再び現れたヒトガミから、獣族の「リニアーナ・デドルディア(猫系)」か「ブルセナ・アドルディア(犬系)」と関係を持てと助言されて頭が混乱するなか、ルーデウスはとりあえず父の元に向かうことを決意する。(17〜18話)

【転移迷宮編】あらすじ
 身重のシルフィや妹たちを残し、エリナリーゼと共にベガリット大陸の迷宮都市「ラパン」へ向けて旅立つルーデウス。
 七星ナナホシから聞いた転移魔法陣を使えば行程は大幅に短縮できるものの、道中に待ち受ける困難は想像以上に厳しい。
 1ヶ月後、迷宮都市ラパンに到着したルーデウスとエリナリーゼは早速パウロの元に案内される。憔悴しきった父を慰めるルーデウスは、パーティーに魔術の師匠「ロキシー・ミグルティア」がいないことに気が付く。師匠が迷宮ダンジョン攻略中に罠にかかって行方しれずとなったと知り衝撃を受けつつも、父と共に母救出の作戦を練るルーデウス。
 転移迷宮と呼ばれるS級地下迷宮の再攻略に突入したパウロ一行は、ルーデウスが所持する本を頼りにダンジョンの奥深くまで進行する。
 途中、迷宮内で孤軍奮闘していたロキシーを救出できたルーデウスたちは休息を兼ねて一旦街へと引き返す。(19〜20話)

 久々の対面とはいえ「初対面だ」というロキシーの言葉に戸惑うルーデウス。だがそれはロキシーの知っている「ルディ(ルーデウスの愛称)」と違うからだと分かり安心する。
 昔話に花を咲かせるなか、「いつか二人で迷宮に潜ってみたい」と言葉を交わすルディとロキシー。
 転移迷宮に隠された第6階層につながる魔法陣を発見した一行は突入を敢行する。
 最終階層に転移したルーデウスたちは、囚われの身となったゼニスと迷宮の守護者ガーディアンたる巨大なヒュドラの姿を目の当たりにする。絶滅したはずの伝説の生物で通称“悪魔の竜”と呼ばれる強敵になす術なく撤退を余儀なされるルーデウスたち。
 血を分けた肉親とは言っても心情的には“半分”でしかない、いわば半分“他人”の母を助けるべきなのか。弱気になり言い訳を探し始める息子ルーデウスに「死んでも母さんを助けろ!」と檄を飛ばすパウロ
 パウロの剣術とルーデウスの魔法の連携によってヒュドラを仕留めるに至るが、その結果ルーデウスは左腕を失い、パウロは命を落としてしまった。あまりにも大きな犠牲を払い救い出したゼニスも、放心したまま元に戻らない状態だ。(21〜22話)

本編より(公式サイト)
パウロ
ルーデウス、ノルン、アイシャの父

 母を救い出したものの、実の父を(前世と異世界で)“二度”失った後悔と絶望にすっかり打ちひしがれるルーデウス。ロキシーは身も心も開放してそんな彼に寄り添うしかできなかった。
 ようやく落ち着きを取り戻したルーデウスは、自分のしでかしたことを後悔する。しかしやるべき事が山積する彼にそのことだけを考えている余裕は与えられなかった。
 父親を荼毘だびに付し、病身の母親を伴って自宅へと戻るルーデウスたち。
 帰りの旅路でロキシーへの想いが愛に変わっていることを確信したルーデウスは戸惑いそして煩悶する。
 そんな彼に「ロキシーをめとれ」と進言するエリナリーゼ。重婚が禁忌タブーではないとはいえ、妹たちや、間もなく自分の子を産む妻にどう説明すればいいのか。ルーデウスには見当もつかない。

 旅立ちから半年経ってシルフィたちが待つ家へ戻ってきたルーデウスは、転移迷宮での仔細を語ったのち、父の死と母の現状を皆に伝える。
 ルーデウスは結局、ロキシーを妻として迎えたいとシルフィに土下座するしかなかった。
 「ルディはエッチだから……」とロキシーを受け入れたシルフィは、程なくルーデウスと同じ髪の色をした女の子を出産する。
 「ルーシー」と名付けられた娘と共に父の墓前に出向くルーデウス。
 「いつ死んでも後悔のないように生きていく」
 世代を重ねた彼らの人生はまだまだ続く……。(23〜24話)

つづく。(未完)

本編より(公式サイト)
ロキシー
ルーデウスの「第二の妻」

【備忘録】
 テレビシリーズ第3期制作決定。

公式サイトより

【評】
 「家族」をテーマに展開したシーズンも終わってしまえば「主人公が重婚しました」に要約できる。本格的ファンタジーが「ハーレムもの」になってしまったことをどう受け止めるべきか。見方を変えなければならないのは確かだろう。
 一夫多妻という男にだけ都合の良いという意味でファンタジーということもできるが、果たして第3期ではどう展開するか。注視の必要を認めるシリーズである。

視聴完了

「宇宙戦艦ヤマト2205〜新たなる旅立ち(テレビ版)」

メインビジュアル(公式サイトより)
デスラー総統

 「dアニメストア」で視聴。1979年フジテレビ系放送のテレビアニメ(テレフィーチャー)を原作としたオリジナル作品。
「西暦2205年の他の銀河系を舞台に、地球と惑星連邦による惑星国家間紛争を描く」SFアニメ。全8話。
 同名タイトルのリブート作「宇宙戦艦ヤマト2199」ならびに「同2202〜愛の戦士たち」の続編にあたる。2021年に劇場公開された2部作の長編アニメ映画をテレビ用に再編集。公式Webサイト

【あらすじ】
 白色彗星帝国との戦いから3年___時に西暦2205年。
 本星環境の急激な悪化により、滅びに瀕したガミラス民族のための新たな移住先を探していたガミラス帝国総統「アベルト・デスラー」は、条件に見合う惑星を天の川銀河の一角に見出す。
 だがその惑星「ガルマン」は、すでに強大な星間国家「ボラー連邦」の領内にあった。ガルマン人の解放者として星間抗争も辞さないという構えを見せるデスラーには、誰にも明かせない秘めたる野望があった。
 一方、地球では高次元世界からサルベージされた宇宙戦艦「ヤマト」を旗艦とした第65護衛隊が編成され、その初任務として同盟国である「ガミラス」と「イスカンダル」星への表敬訪問の護衛に就こうとしていた。
 新体制に併せて、補充された若いクルーの中には、ヤマトへ憎悪に満ちた眼差しを向ける青年「土門竜介」(どもん・りゅうすけ)の姿があった。
 「時間断層」という地球に軍事的・経済的優位性をもたらしていたシステム消滅の原因となったヤマト艦長「古代進」(こだい・すすむ)に不満を鳴らす彼に、敢えて舵を任せる古代。
 その頃、ガミラス本星に無数の巨大な黒色の槍「デザリアム・ハンマー」が打ち込まれ、惑星のコア融解が誘発される。惑星崩壊の一途をたどり始めるガミラス星の危機にデスラーの焦りが募る。(1〜3話)

 ガミラス本星の消滅により、大半のガミラス人が犠牲となり生き残りの移民船団が一時退避した双子星のイスカンダル星も軌道を外れ何処かへと移動を開始する。
 イスカンダル星を我が物にせんとする「デザリアム」艦隊と交戦状態となるデスラー艦隊。だが科学力・技術力で他を圧倒する敵艦隊の前に次第に劣勢となっていく。
 一方、イスカンダル星近傍まで到着していた地球の第65護衛隊では、同盟国であるガミラスに加勢して、ボラー連邦と交戦することは避けたいという平和使節団と、イスカンダルとガミラスの民を救うべきだというクルーとの間で意見が分かれていた。
 土門たち血気に逸る若者たちの反乱にかこつけて、イスカンダル上空へと降り立つ宇宙戦艦ヤマト率いる第65護衛隊は、デザリアムの目的がイスカンダルを何処かへ移送することにあるとを知る。
 イスカンダルを守るため、古代は敢えて、惑星移動のエネルギー源である惑星ガルマリオを「波動砲」で撃つ。(4〜5話)

 出現したデザリアムの自動惑星「ゴルバ」に全ての攻撃がはね返された地球・ガミラス艦隊は、イスカンダル星の奪還を諦め、ガミラス難民とイスカンダル王族(スターシャとユリーシャほか1名?)の救出優先を方針を変える。
 しかし、救出に向かった次元潜航艦はデザリウムが放った謎の発光体に襲われ多大な被害を出す。テザリウムの攻撃を防ぐ波動防壁もいつ破られてもおかしくない絶体絶命の状況で、イスカンダルの女王「スターシャ」は、テザリアムが欲する情報資産の提供と引き換えに相手側に停戦を呼びかけるのだった。
 イスカンダルの地下に広がる聖所・サンクテルに古代とデスラーを招き入れたスターシャは、あまねく知的生命体に平穏をもたらすイスカンダルの「救済」の真実を語る。
 星のエレメントを保管する大記憶庫の中へ埋没してしまったイスカンダル人たちに未来は既になく、墓守人たるスターシャたちもまたこの星を離れて生きていくことはできない。
 ガミラス人が情報体と化したイスカンダル人による侵略の尖兵として洗脳・使役されてきたことを知ったデスラーはイスカンダルならびにスターシャへの憎しみと絶望を露わにする。(6〜7話)

 デザリアムが欲している大記憶庫とその技術もろともイスカンダル星を自爆させることをデスラーと古代に伝えるスターシャ。だがデスラーはスターシャへの断ち難い思慕から乗艦「デウスーラⅢ世」をゴルバに突入させ、自らを波動砲で撃てと古代に叫ぶ。
 撃つべきかどうか迷う古代に、土門たち若きクルーによる起死回生の作戦が立案される。次元潜航艇「コスモハウンド」によるイスカンダル王族救出作戦は成功し、ゴルバはイスカンダル星の自爆に巻き込まれ消滅した。
 しかしイスカンダル星のエレメントを失ったスターシャとユリーシャは肉体を失い消滅する運命にあった。ユリーシャから地球人で進の兄「古代守」(こだい・まもる)の因子を受け継いだ「サーシャ」を託された古代たちは、地球への帰途に就く。(8話)

 ゴルバ内部を撮影した画像を解析していた「真田志郎」(さなだ・しろう)たちは、遥か未来の建造される地球の宇宙戦艦の残骸に困惑する。デザリウムと地球には何か“縁”があるのだろうか……。(8話エピローグ)

「ヤマトよ永遠に Revel 3199」(2024年7月19日より全26話を劇場で分割公開予定)に続く。

【評】
 リブート作「2199」から12年が経過し、「2202」の中途で挫折した視聴者として、「戻ってもいいかも」と思わせる内容の作品であった。
 この作品の難しさは、「〜2199」(リブート作)以降の設定で「昭和のオリジナル作」に準じた物語を作ることにあるということは承知しているが、2作目は作り手の暴走が悪い方へ傾いて行ったことへの拒否感が強くなってしまった。
 「ヤマト」の面白さを現代風にアレンジ・展開するさじ加減が適切だったことでリブート作は息を吹き返したように思われる。
 それでは続編を映画館でお金を払って見るかと問われると、少々厳しいというのが偽らざる心情である。
 オリジナルが劇場版長編であることを考えればなおさら……とでも言うべきか。

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