経営者の「一芸」は身を救う
優秀な経営者は、多芸多才な人が多い。
その多芸多才の大元は、基本となる「一芸」だ。
そして、経営者は、その「一芸」に身を救われることがある。
今回は「一芸」の重要性について書き綴っていく。
「一芸」を通して思考を深める
経営というのは、正解が分からない。
正解のない問題を解くようなものだ。
そんな問題と出会った時、「一芸」が身を救う。
私は若い頃、「音楽と楽器」に打ち込んでいた。
特に、ギターに関しては、狂ったように弾き続けていた。
テクニックだけの話で言えば、プロギタリストとそれほど遜色ないレベルだと自負している。
ギターは、楽譜を読むところからはじまる。
音程はもちろん、音の出し方、音の長さ、音の強弱等も楽譜に書いてある。
特に「音の長さ」、つまりはリズムを正確に読める人は、意外と少ない。
四分音符、二分音符といった分数が理解できないとリズムは理解できない。
「楽譜を読む」とは、数学と感性を掛け合わせたような能力だ。
一定以上、上手くなるためには、自分の音を「客観的」に聴く必要がある。
録音した自分の音を冷静に聴きなおし、その結果を分析する。
ここでは感性に加えて、論理的な思考が必要となる。
作曲や編曲をするためには、音楽理論が必要になる。
12音階、調(キー)、和音(コード)等を仕組みを理解する必要がある。
これはかなり数学的な考え方が重要で、やがて音程を数字で捉えるようになる。
そして、和音が数字の配列に思えるようになる。
はじめて合った演奏家とセッションをすることがある。
簡単な取り決めで演奏をスタートし、あとは即興で音楽をつくる。
このレベル域は、感性、音楽理論、脳の反射神経の全てが揃わないと難しい。
相当な訓練を要するレベルだ。
ライブやコンサートで必要になるのは、度胸と集中力だ。
度胸がなければ、頭の中が真っ白になって演奏が止まる。
集中力がなければ、曲の流れの外へと飛ばされてしまう。
いわゆる「本番」で100%の力を出す難しさを思い知らされる。
最後に必要となるのは、共感、独創性、情熱だ。
自己満足な音を奏でても、他人から共感は得られない。
独創性がない音は、他人の記憶に残らない。
情熱のない音は、他人の心に刺さらない。
ギターに限らず「一芸」を突き詰めた人は、これに似た成長の過程を通る。
一定以上のレベルになると、それ以上の上達は「正解がない問題」の中にしかない。
上達するための術を仮定して、実行し、結果を分析する。
これを気が狂うほど繰り返して、少しずつ目標を達成していく。
この経験は、必ず経営に役に立つ。
「一芸」を通して要人と出会う
「一芸」を通して、仲間が増えることがある。
例えば、私は「経営者の音楽サークル」に所属している。
こういった団体を通して、知見を広めたり、人脈を広げたりすることもできる。
特に「一芸」をしっかりと鍛え上げた場合、メリットが多い。
その集まりの中で「さらに秀でた一芸」は価値が高い。
明らかに格上の会社の社長がその一芸を通して、弟子や生徒になることもある。
地道に10年は会社を強くしないと相手にされないような会社の社長と「普通」に仲良くなれたりする。
その社長やその社長の紹介により、10年分をスキップした取引が発生したこともある。
これは本当に有難い。
「一芸」が多くの人に披露できるものであれば、さらに交流が広がる。
私は楽器を生かした「大道芸」を開発したことがある。
これが多くの人に披露できるものとなった。
すると地域のイベント、企業の忘年会、企業の接待、テレビの出演など、様々なところから声が掛かる。
そこで、様々な人と出会うことができる。
経営者の「個人の印象」は「会社の印象」となる。
「一芸」により、いろいろなところへ個人の名前が届き、良い印象を得られる。
また、評判は「一人歩き」をして、大きくなっていく傾向がある。
それにより、いつか、どこかで、何かの声が掛かる。
この活動は、必ず経営に役に立つ。