Metro Ad Creative Award の攻略法考察【プランニング部門 2022メトロアド賞・審査員特別賞 / 2023協賛企業賞受賞】
当noteをご覧いただき、誠にありがとうございます!
私はPRAP JAPANという都内のPR会社で働く、プランナーの丸山優河と申します。
この度、駅OOHの企画コンペ Metro Ad Creative Award 2022 プランニング部門にて、デザイナーの相方さんと作った企画案2点がファイナリストにノミネートされ、それぞれメトロアド賞・審査員特別賞(加我俊介さん)に選出いただきました!嬉しい!!
2024/3/25追記:
Metro Ad Creative Award 2023 プランニング部門でも、ファイナリスト2点&協賛企業賞に選んでいただけました!
PR畑のプランナーとして、駅OOHという公共性の高い媒体を生かした企画力を身に付けたいと思い、2020年よりチャレンジを開始。ようやく賞をいただくことができました。
協賛企業の皆様、主催のメトロアドエージェンシー様・宣伝会議様に、改めて御礼を申し上げます。これからも、クライアント企業の事業や商材を支える伴走役として、陰から支援させていただきます。
・・・
私は、販促コンペやACCヤングコンペ、ヤングカンヌ等、他の企画コンペへのチャレンジも並行しながら、メトロアドにも3年間参加してきました。
だからこそ、他のコンペとの対比のなかで、自分なりの「駅OOHを生かした企画力」の解釈が合ってきたのかなと思います。
一方で、例年手応えは一定あるものの、グランプリ・準グランプリには届かず・・・そこは悔しい思いです。
それでも、贈賞式で審査員の方の話を聞いたり、上位作品の内容を見て、足りない部分が分かってきました。
今回のnoteでは、次回のリベンジのための反省点とノウハウの整理を兼ねて、メトロアドのプランニング部門を戦う上で考えていたコツを、自分なりに言語化しようと思います。
本noteが、これからメトロアドにチャレンジしようとしている方や、来年も戦うよという方のお力に、少しでもなれたら幸いです。
※なお、「販促コンペ」「宣伝会議賞」「朝日広告賞」の方でもnoteを公開していますので、よければこちらもお読みいただけると嬉しいです!
●「駅OOHの企画コンペ」という特殊性
アイデアがとにかく被る!!
メトロアドの特徴は、何といっても「駅OOH」という媒体の指定があることでしょう。
販促コンペ、ACCヤングコンペ、ヤングカンヌ等、他の企画コンペは手法フリーが基本ですが、メトロアドだけはこの特殊な条件が全員に課され、そのなかで戦うゲームになります。
そうなると何が起こるか・・・
審査員の方のお話を伺って痛感したのが、めちゃくちゃアイデアが被ってる!!ということです。
プランニング部門では、各課題それぞれ40~60ほどの応募があったと推察されます。
それだけの数の企画が、駅OOHという制限のなかで、映える見せ方と切り口を取り合うわけで、とにかく被りまくっていたとのこと。
2022年度の課題でいうと、(僕らもまさに出してしまったのですが)観世能楽堂では「能面」を使った企画、バレーボールでは選手やコートのスケールを感じさせる企画などは山ほど集まったようです。
ちなみに審査フローは、切り口が重複している企画は一本だけに残し、その上で他の案と並べたとも話されていました。
被った時点で競争率が跳ね上がり、さらに新鮮味もないので、どうしても準グランプリ以上にノミネートされるのは難しいだろう・・・というのが、話を聞いていて受けた印象です。
反面、加我俊介さんの審査員特別賞に選んでいただいた『個人情報大放出セール』は、ダークウェブで実際に売買されている個人情報の値段を切り口にした企画でしたが、「そのフックの企画は1つだけでインパクトがあった」というコメントをいただきました。
そしてグランプリ『のぞき見能楽堂』の切り口は、地下3階にある観世能楽堂とOOHの物理的な位置関係に着目したもの(すごすぎ)ですが、ここを攻めたのも1チームだけだったとのこと。
・・・ということで、メトロアドを攻略する上では、他の企画コンペ以上に切り口のオリジナリティを重んじるべきだと痛感。
アイデアを散らす段階でも、絞って練り上げる段階でも、「独自性」の比重を意識できるかどうかで、かなり成否が分かれると感じました。
企画づくりを攻略する2つの要素
その上で、企画づくりの方法論について、個人的な考えをお話しします。
メトロアドは企画コンペのなかでもマーケティング色の強い課題が多く、認知や売上の向上が基本的に求められます。
この手のプランニングでは、とにかく「人を動かすパワー」の大きさに評価のウエイトが乗りますが、その要素をあえて言語化すると、大きくは以下の2つに分かれると考えます。
● ①どう見させるか(興味喚起)
駅を利用し、広告スペース前を通過する人のうち、どれだけの人数の「思わず見てしまった」を生み出せるか・・・に影響する要素です。
そのために必要であり、また審査ポイントとしても重視されるのが、当たり前ですが「駅OOH」という媒体を生かすことです。
「駅OOHでしかできない」「この場所でやる意味がある」
といった評価コメントは、審査員の方々からも毎年聞かれます。
〇〇駅でやるからこそ目を引く。
そんなクリエイティブが求められるわけですが、それって具体的にどう考えりゃいいの・・・? 大別すると、次の2つの方向性があると感じました。
(A)駅 × 不自然
一つは、駅のイメージと相反するモチーフを組み合わせる方向です。
駅のイメージとしてパッと感じるものでは、
公共の場、ビジネス、騒然、機能的、無機質・・・
などがあると思います。
これらとの落差が大きい
プライベート空間、遊び、静謐、情緒的、生活感・・・
なイメージのものと組み合わせ、認知ギャップを作るのがこの方向です。
見慣れたスペースに普段は存在しなかった違和感を生み出すことで、道行く人が思わず目を留めてしまうきっかけを作ります。
このように駅のイメージを逆手に取って目線をコントロールできると、「駅OOHでやる意味」が見出せます。
過去の受賞作では、特に以下のような「和室」「手書きポップ」「博物館」「美術館」「倉庫」といった、駅空間とのギャップがあるモチーフを組み合わせた企画が、キレイに”不自然”を仕込んでいるなぁと感じます。
(B)駅 × 自然
もう一つは、駅に自然に溶け込ませる方向です。
構内の表示、地図、サイネージの天気予報、自動販売機・・・
など、駅が持つ要素に紛れ込むような施策です。
この方法の強みは、何と言っても「駅OOHでやる意味」の納得感が保証されているところです。
また、一番目の前の「駅といえば」から発想できるアイデアなので、初心者の方もとっつきやすいと思います。
過去の受賞作では、特に以下のような「案内図」「路線図」「発車メロディ」「切符」「落とし物」といった、駅に自然に存在し、かつチャーミングな要素を掘り当てた企画が鮮やかだなぁと感じます。
● ②どう動かすか(行動促進)
”人を動かすスイッチ” を仕込む
広告に目を留めてもらった後、どれだけ深く理解させるか、ないし購買・来店等の行動を起こさせるか・・・に影響する要素です。
言い換えると、企画構造のなかに「人を動かすスイッチ」を仕込む、ということになると思います。
今回のグランプリ作品『のぞき見能楽堂』は、ふすまに映る影で能を表現し、一部だけ開けておくことで、「隠されると気になってしまう」「隙間があると思わずのぞきたくなる」というスイッチを巧妙に仕込んでいます。
また、メトロアド賞に選んでいただいた『等身大ジャンプチャレンジ』は、無料で手に入るVリーグの観戦チケットを、届きそうで届かないギリギリの高さに設置することで、「今だけタダなら欲しくなる」「ギリギリ成功しそうなチャレンジだと挑戦したくなる」という気持ちを刺激することを狙いました。
私は、この「人を動かすスイッチ」の強さが、企画全体のパワーそのものになると考えています。(その点で、『のぞき見能楽堂』はかなり強いスイッチを押せているなぁ・・・と感銘を受けました)
企画に強くなるための ”動詞発想”
私たちのチームのアイデア出しでは、このスイッチを一番最初に考えることを意識しました。
ですが、「思わず心動かされちゃうこと」「思わずやっちゃうこと」をただ闇雲に散らしていくだけだと、課題に上手く落とし込むのが難しいです。
そこで、なるべく課題とのつながりを保ちながら、人を動かす仕組みを見つけるために、次のフレームに沿って考えしました。
私自身がそうなのですが、いざアイデアを出そうとすると、「課題の商品(サービス)から発想しよう」という考えに至りがちです。
ですが、そもそも企画を通じてやりたいことは、商品・サービスではなく行動を変えること。
なので、発想の起点は「動詞」の方にするのが、上手くアイデアを膨らませるコツだと感じました。
プランナーとしてまだまだ勉強中の身ですが、それでも稀に作った企画を評価いただけるときがあり、振り返るといつもこの発想順でした。
それ以来、ヒット率をなるべく高く維持できるよう、日頃から意識しているポイントを整理したものになります。
・・・
このフレームでは、まず出されている課題と、そのためにターゲットに何をさせたいか、を考えます。
ここでは例として、Vリーグの課題と、「チケットを手に入れさせる」という行動を置きました。
次に動詞だけを抜き出し、それが「したくなる」シーンを着想していきます。
この例では、人が思わず「手に入れたくなっちゃう」気持ちの動きにフォーカスして、質の良し悪しに関わらず出していきます。
このフローで考えていくと、企画のコアになる受け取ってもらいやすいチケットの渡し方の種をたくさん出すことができます。
最後に、➊の「ターゲットに取らせたい行動」と、➋の「思わず~してしまう」の切り口を組み合わせて、どんなアイデアになるかを考えます。
この例だと、➊はバレーボールのチケットを手に入れさせる、というアクションです。
➋は、例えば「品薄」を使うなら、「巨大なラックに数枚だけチケットを置く」など、また「夏場の冷たいもの」を使うなら、「チケットをキンキンに冷やして配る」「チケットを剥がすと冷たい壁が現れる」など・・・
そんな風に雑なアイデアを100個、200個と出していくうちに、使えそうな案に出会うことがあるので、それらを拾って磨いていきます。
実際にこの切り口では、「今だけしか手に入らない」「無料で手に入る」「手に入りそうで入らない」といったフックを使い、メトロアド賞に選んでいただいた企画『等身大ジャンプチャレンジ』を作りました。
以上、メトロアドを戦う上でもっと意識すべきだった・・・と感じた反省点や、アイデア出しで考えていたことをお話ししました。
ここまで読んでいただき、誠にありがとうございました。このnoteが、少しでもあなたのお役に立つことがあれば幸いです。
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● おわりに・・・
私は、2016年にPR会社に入社し、それ以来ずっとPRを軸に、企画やコピーの仕事をさせてもらっています。
企画賞へのチャレンジは、4年前の販促コンペから始めました。そのなかでもメトロアドは、駅OOHのみをテーマにしたコンペということで、PRとの親和性の高さを感じています。
駅OOHは、場所の公共性が高く、触れる人の数も多く、掲載面も大きい(=画になる)媒体なので、メディアアプローチをはじめとするPR展開がしやすいです。
その上、思った以上に媒体費が安いというのもポイントで、ただ広告を出すに留まらない、「広告発のニュースづくり」の起爆剤として重宝する手法です。
だからこそ、クリエイティブを学びたいPRパーソンも、PRを取り入れたい広告クリエイターの方も、この分野の企画力を学ぶことはとても意味があると感じます。
そんな風に、PRと企画を接着してプランニングできると、広告の活用も大きく変わる・・・ということを実感しやすいコンペでした。
(PR視点のアイデアやエグゼキューションがオリジナリティにつながるので、結果が出やすいという意味でもPRパーソンならぜひチャレンジすべきだと思います!)
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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