見出し画像

宣伝会議賞の攻略法考察【第59回コピーゴールド受賞】

はじめまして。私はPRAP JAPANという都内のPR会社で働く、プランナーの丸山優河と申します。

この度、日本最大のコピーライティングの公募賞、第59回宣伝会議賞にて、応募総数約64万点中、24点のファイナリストに3点ノミネートいただき、また日本情報経済社会推進協会様(プライバシーマーク)の課題でコピーゴールドに選んでいただきました!本当に嬉しかったです。

図5

PR・企画畑の人間ですが、よりプランニングの幅を広げるためにコピーライティングへの理解を深め、スキルとして身に付けたいと思ったことがきっかけで、3年前(第57回)よりチャレンジを開始しました。そして今年、一生分の運を使い果たしたような結果を恵んでいただきました。

協賛企業の皆様、主催者の宣伝会議様に、改めて御礼を申し上げます。私たちの仕事は、クライアント様なしには成り立ちません。実務も公募も、皆様の事業や商材があって、初めて提案の機会をいただけています。このことを忘れず、今後も陰から支援させていただきます。

・・・

これまで参加してきて、宣伝会議賞は、コピーの勉強意欲と経験値が貯まる、非常にためになる機会だと改めて思いました。

また、コピーとPR・企画には親和性があり、PRパーソンの強みを活かして戦うことができ、また実務のレベルアップにもつながると感じました。

参加して得られるものが多いからこそ、モチベーションを高く維持したい。そのために、結果につなげることも大事にしてきました。

「良いコピーとは何なのか」「上位の審査を通過できるコピーとは何なのか」の仮説を立ててトライして、違うなと思ってまた考えて・・・を繰り返してきました。

今回のnoteでは、自分の中の整理も兼ねて、宣伝会議賞に取り組む上で考えたコツや、結果につなげるために取った戦略を言語化しようと思います。

本noteが、これから宣伝会議賞にチャレンジしようとしている方や、来年も戦うよという方のお力に、少しでもなれたら幸いです。​

※なお「販促コンペ」「朝日広告賞」「Metro Ad Creative Award」のnoteも公開していますので、よければこちらもお読みいただけましたら嬉しいです!


・・・


「上位に行けるコピー」を絞ってみた

宣伝会議賞は、一次審査の通過率が毎年1%を切る世界です。

第59回は0.96%で、そんな狭き門を10点通したとしても、まだ母数は6,000点超、何らかの賞に引っかかる確率はわずか7.5%※です。

ようやく受賞確率が五分五分になるのは、一次通過約90点※から。現実的に考えて不可能なレベルです。

※第59回の内訳:一次通過6,265点、グランプリ~シルバー+協賛企業賞 計49点、各賞重複なしで計算

そんな賞なので、ファイナリスト~受賞を目指すには、上位審査の通過率が高くなる方向性を知っておいて損はないと感じました。

私は、宣伝会議賞の通過作品を分析するなかで、コピーのWhat to sayに基づいた分類を以下の2軸で行い、傾向を模索しました。

① 「個人型」と「社会型」
② 「表層型」と「深層型」


  ●  分類①  個人型コピー/社会型コピー

① は、「コピーを投げかける相手」の分類です。

【個人型】・・・企業や商材が持つ、ターゲットにとっての価値・メリットを説くコピー

【社会型】・・・ターゲットを取り巻く社会(自治体、国、世間など)への意義を説くコピーや、社会的テーマ(コロナ・働き方・ジェンダー・多様性・SDGsなど)を前提とした価値を訴求するコピー

第59回のファイナリスト以上で例えると、

-----
・たんぱくぱく質(フジッコ)
・会議を終わらせるのは、いいアイデアだ。(マスメディアン)
・せっかくの休みに、旦那の育毛剤を待っている。(ユニソン)
・10日間の賞味期限のうちの、2日間を失った。(ユニソン)
-----
など、ターゲットに向き合って価値を提案するコピーを個人型

-----
・世の中は、どうしてこんなに可愛くないんだろう。(コプロ)
・この重い物を何度も持って来させるのは、何ハラですか?(ユニソン)
【ラジオCM】女A:最近仕事が忙しいんだよね。・・・(ユニソン)
-----
など、「今の世の中だから言える」「今の日本だから言える」ような、社会的な要素を含む問題提起や課題解決を目指したコピーを社会型、と考えました。


  ●  分類②  表層型コピー/深層型コピー

② は、「コピーで伝える価値」の分類です。

【表層型】・・・顕在的なWhat to sayを訴求するコピー。課題企業や商材の、最も基本的な機能/存在意義を伝えているもの。

【深層型】・・・潜在的なWhat to sayを発掘し、新たな提案をするコピー。基本的な機能/存在意義の一つ先にある、「言われてみれば確かに」となるような価値を探し出して伝えているもの。

表層型は、第59回の課題でいうと、オーディオブックなら「本の内容が音声で聴ける」、宅配ボックスなら「いつでも受け取れる」といった、最も基本的な価値を伝えるコピー。

深層型は、「読書しながら運転できる」「再配達を減らす」といった、そこから一段ジャンプしたところにある、潜在的な新しい価値に気付かせるコピーと捉えました。

表層型の場合、What to sayそのものは王道なため、表現の新しさや切れ味で読み手を引きつけるコピーが主になり、比較的How to say重視になると考えています。
 例)・それではお聴きください。川端康成で伊豆の踊子。(オトバンク)

一方、深層型は、発見そのものをシンプルに提示するだけでも気付きを与えられるため、比較的What to say重視になると考えています。
 例)・長距離ドライバーが読書家に。(オトバンク)
   ・ホラー小説は、電気を消して読みたい。(オトバンク)
   ・焚火を見ながら、小さな音で本を聴いている。(オトバンク)


  ●  ブルーオーシャンの発見

そして、上記2つの分類を縦軸・横軸で拾うと、次の4象限で区分することができます。

図1

これを踏まえ、宣伝会議賞の“上位審査を通過しやすいコピー”を考えてみました。

次の表は、第58回のSKAT(宣伝会議賞の一次通過以上の作品を収録した書籍)に収録されている、一次通過コピー 各課題100点以上(関西電力のみMAXの95点)計2732点 を分類し、割合を合算した値です。

図2

一次審査通過のステータスでは、社会型のコピーは計9.3%と1割に満たず、個人型のコピーが計90.7%とほとんどを占めていました。

また、表層型/深層型は、それぞれ計47.0%/53.0%と、ほぼ半々であることが分かりました。

対して次の表は、第58回でより上位に食い込んだ、三次通過以上のコピー 全172点 を分類し、割合を算出した値です。

図3

個人型/社会型の分類では、一次通過で1割に満たなかった社会型のコピーが計19.7%の通過率となっており、2倍以上高い通過率でした。

また、表層型/深層型の分類では、それぞれ計35.4%・64.5%と、深層型の方が明確に優位になっていました。

この分類と集計をもとにすると、直近の宣伝会議賞の傾向から見るに、社会的文脈を踏まえたコピーでは2倍以上、潜在的なWhat to sayを発掘するコピーでは1.2倍以上、3次以降への通過期待度が高まると推測できます。

個人×表層型のような、商材ど真ん中のWhat to sayを鮮やかに表現するコピーは、例年ファイナリストにも多く、印象に強く残る作品が多いため、一見メインストリームに思えます。

しかし、その実態はレッドオーシャンであり、三次以上の通過率は約30%減になるほどの競争率と推察されます。

だからこそ、このタイプでファイナリストまで残っているコピーはどれも凄まじいパワーを感じます。が、提出コピーがこればかりになると、成績的には厳しい戦いになることが予想されます。

私は上記を踏まえ、宣伝会議賞では「社会型」「深層型」の切り口を中心に探り、コピーを作り出すことを戦略として意識しました。


ちなみにこの分析は、単に公募のテクニックとしてではなく、実務で目指すべきアウトプットや、実績型コンペのクライテリアの理解を深めることも兼ねていました。

TCC賞でも、コロナ禍や男性の育児、働き方改革などの社会的な文脈を踏まえた事例や、新しい発見を提示した事例が多く受賞しています。

2021年度の中で例を挙げると、以下の事例は特に個人的に感銘を受けました。共感しやすく、納得度も高いと感じました。

見えないものと闘った1年は、見えないものに支えられた1年だと思う。(大塚製薬 カロリーメイト)

レシートは、希望のリストになった。(そごう・西武)

「親切な人に、見つけてもらってね。」優しそうに聞こえても、これは犯罪者のセリフです。(ACジャパン/日本動物愛護協会 支援キャンペーン)

今日は、ノー残業デーです。いつもママがお世話になっております。(パナソニック 企業広告)

TCC賞、カンヌライオンズなどのアワードの評価傾向や、今を生きる自分の実感からも、「社会に寄り添ったメッセージ」「新たな気付きを与えてくれるメッセージ」がより人々に届きやすいのは腹落ちするなと思いました。

このような背景から、仕事で目指すべきコミュニケーションが、ひいては宣伝会議賞で評価されるコピーが、より社会的・価値提案的な方向にチューニングされていると感じ分析したところ、その傾向が見られたという形です。

----------

What to say の考え方

かくして、「社会型コピー」「深層型コピー」を中心に作っていく、という戦略を定めました。ここから、コピーのベースとなる切り口、What to sayの探し方について、意識していたことをお話します。

  ●  社会的なフックは、もう“記者”が見つけてくれている

「社会型コピー」のフックを探す際には、PRの実務でもよくやるのですが、ニュース記事の論調をリサーチする“報道分析”をとにかく行いました(Googleニュース検索や、日経・朝日・毎日・読売・産経等の新聞社系サイトでの記事検索など)。

ニュース記事には、社会性のあるヒントが多いです。PRの仕事では、企業や商品をメディアで紹介してもらうために、記者に連絡を取る機会が非常に多いのですが、「それ、社会にとってどんな意義があるの?」という目線で厳しく見られます。

それは記事にも反映されるので、既存の報道には社会的なフックが眠っていることが多いです。

例えば、サントリー食品インターナショナルの課題・強炭酸のリサーチで、「無糖炭酸水」関連の報道を調べてみると、ニーズの背景を論じた以下のような記事(一部抜粋)がたくさん出てきます。

図4

この課題は、“炭酸が強い”というど真ん中のWhat to sayで、表現力で勝負しようというコピーが多かったのではないかと予想しますが、報道を見ていくと「ニューノーマルの暮らしを良くする」「テレワーク中の気分転換になる」「若者の酒離れの受け口になる」など、今の社会を踏襲したここ数年ならではの切り口がいくつも出てきます。

また、プライバシーマークのリサーチでは、コピーに社会性を持たせるため、「コンピューターウイルス」と「コロナウイルス」の共通項を切り口にしようと考えました。そこで、コロナウイルスに関連しそうなワードとのAND検索で根こそぎ検索していったところ、

図1

という記事が見つかりました。この切り口は引力があるし、そのままで十分発見感があるなと思ったので、「コンピューターウイルスにも、続々と変異株が発見されています。」というコピーを提出しました。

このように、報道記事から社会的なフックを拾うことを意識したリサーチができると、他の参加者が見つけにくく、通過もしやすいと予想される切り口で戦えるのではないかと思い、積極的に行っていました。

  ●  課題の商品は“買わずに”コピーを書いてみる

「深層型コピー」のフックを探す際は、ニュース記事のほかに、企業・製品HP、ECサイトの商品レビュー(Amazon、楽天市場、アットコスメ等)、Twitterなどを網羅的にリサーチしました。

ただ、このタイプのコピーを考える上で重要だと感じたのは、どこで探すかではなく、どんな態度で探すかです。

私は、コピー作りの初期段階では商品をあえて買ったり使ったりせず、更には「こんなの手に取ってやるものか」と念じながらリサーチしていました(応募者として終わってる)。ただ、これが結構有効だったように思います。

一般的には、お手頃な価格の商品ならまず買って試してから書き始める、という進め方の書き手も多いと思います。私も去年までそうしていました。でも、ターゲットはえてして、自分も含め「商品を知らない、見向きもしない、買うことなんて考えてない」人々です。

それなのにまず買うところから始めると、買わない人の気持ちから遠ざかるなぁ・・・という感覚がありました。

買わない、買いたくない立場の人間として、商品を疑ってかかる。そんな態度でリサーチを進めると「え、ちょっと買いたいかも・・・」と、覚悟が揺らぐような情報や口コミを見つけることがあります。

そんな風に、まずは自分の態度変容を目指してリサーチしていくと、”人を動かすパワー”を秘めた切り口に出会いやすくなると感じました。

サントリー(強炭酸)のファイナリストに選んでいただいた「水で眠気が飛ぶなんて」は、このメソッドが活きたコピーです。

私は趣味で釣りをするのですが、夜明け前から出発することが多いため、移動中の眠気とどう戦うかがいつも悩みの種でした。そんなとき、同じような悩みを持つ方が、強炭酸でめっちゃ目が覚めたと口コミしているのを見て、「うわ試したい」と強く感じました。その瞬間の気持ちを言葉にしたコピーでした。

“目が覚める”というWhat to say自体はそこまで深いところにある価値ではないので、多くの方が着想したのではないかと思いますが、最初から商品を疑う態度だったことで消費者の目線に近い最終形にすることができ、それが良かったのではないかと考えています。

なお、企業のコピーを書くときも同様です。なるべくアンチの目線・態度でリサーチしながら、それでも「ほーん、良いじゃん」と感じられた価値をコピーにしています。

----------

How to say の考え方

切り口を一通り揃えたら、次にHow to sayのブラッシュアップを考えました。今までの経験や分析を経て、そのメソッドは大きく分けて2通り、「言葉を変える方法」「視点を変える方法」があると考えました。

  ● 「言葉を変える」は、価値を変える

「言葉を変える」方法では、対句・ダジャレ・慣用表現のもじり・擬人化・連呼・リズム・・・などなど、様々なレトリックを活用して、人を引きつける形にコピーを仕上げていきます。

ただ、どんな手法を使うにしても、一つ確実に注意した方がいいと感じたポイントがあります。それは、変える言葉は企業・商品ではなく「価値」の部分ということです。

以下の受賞事例を見てみると、いずれのWhat to sayにおいても、もじっているパーツは価値の部分とリンクしています。

図5

もし商品の方をもじってしまうと、「カルボナーラに、豆乳を投入。」とか「カード払いがポイントです。」のように、伝えたい価値が行方不明の、単なる言葉遊びになってしまいます。

この点を注意するだけで、レトリックが正しい方向にコピーの魅力を伸ばしてくれるようになると思います。

コピーゴールドに選んでいただいた、プライバシーマークの「ご利用ありがとうございました~」は、この点を踏まえて考えたコピーです。

レトリックとしては慣用表現を使っていますが、このコピーのWhat to sayを以下のように整理すると、「ご利用ありがとうございました」という慣用表現を探す目線がよりクリアになるかと思います。

図3

なお「言葉を変える」方法は、書きたい切り口や単語によって無数のパターンが考えられます。なので、世に出回っている名作コピーやTCC賞の事例、宣伝会議賞の受賞作、SKATなどを読み込んだり、実務経験を積んだりして、どれだけ多くの引き出しを用意できるかが重要だと思います。(私もまだ全然なので、読み込んだり写経したり、日々インプットに勤しんでいます。)

ただし、深層型のコピーはHow to sayへの依存度が低い分、経験則という変数の影響を減らせると感じました。なので、初心者の方は、表現よりも価値を色々見つけることを優先すると、結果が出やすくなるかもしれません。


  ● 「視点を変える」は、3つの目で

「視点を変える」方法は、以下の3つに体系立て、あらゆるWhat to sayに当てはめて考えていました。

①  Who to say
②  When to say
③  Which to say

Who to sayは、最も基本的なコピーの広げ方の一つなので、既に意識されている方が大多数かと思います。

切り口を様々な人に当てはめて考え、異なる価値や言い方を探りました。強炭酸に例えると、いわゆる”神の視点”の最もシンプルなWhat to sayを「強炭酸は眠気を覚ます」とした場合、それが価値になりうる人を着想していくことで、「運転中」「会議中」「授業中」など、様々なシーンの新しい提案に派生させることができます。

図6

過去の作品の中で特に好きなものでは、次のようなコピーは、特にターゲット設定が決め手になっていると思いました。

・元彼の目覚ましが、夫を叩き起こし続ける。(57回・パナソニック)
・わしは家で死にたいが、家で怪我はしたくない。(53回・クマリフト)
・父親の席は、花嫁から一番遠くにある。(42回・キヤノン販売)


When to sayでは、過去・現在・未来それぞれの時制で、受け手が価値を享受する表現を考えました。

時間軸を意識すると、自然と当事者の目線や気持ちに近づくことができます。そこから湧いてくる思いや、思わず口からこぼれてしまうような言葉には、ウェット感や臨場感が乗ります。

図7

中でも、現在形は特に大事にしています。現在形を意識する際は、商品の価値を思い知った”まさにその瞬間”の気持ちを想像し、切り取ります。過去の受賞作を見ても、このタイプのコピーはとても多いです。

近年の作品では、下記のようなコピーが、Whenを効果的に使っているなと感じました。今起きたことに驚きを隠せず、口を突いて出てきたような言葉や、過去を噛みしめるような言葉になっていて、思わず情景を浮かべてしまいます。

・焚火を見ながら、小さな音で本を聴いている。(59回・オトバンク)
・えっ、今回の手術費用もポイントがつくんですか。(58回・クレディセゾン)
・いい買い物だったと、売れて思う。(56回・メルカリ)
・そうか、こういう内容の迷惑メールだったのか。(50回・NTTドコモ)


Which to sayは、単語を素因数分解していくことで、どんな化学反応が起きるかを検討するイメージです。

意味を小単位に分け、どの視点で語るか?を考えていくことで、他の言葉と組み合わさったときの印象が変わり、伝えたかった価値が強調されたり、新たな切り口に発展したりします。

図8

「強炭酸は眠気を覚ます」のWhat to sayで分解していくとすれば、まず強炭酸は「サントリー」の「炭酸水」、などと区分することができると思います。さらにそこから、「水」「二酸化炭素」「日本企業」「飲料メーカー」のように区切れます。

ある程度小単位になってから、残したパーツと掛け合わせて考えてみると、“炭酸水”より“水”の方が驚きが強まるな~とか、“増やしたいCO2”って言葉はなんか引っかかりがあるな~という風に、新たな発想が見つかることがあります。


以上、宣伝会議賞に臨む上で行っていた傾向分析や、コピー作りのために考えていたことをお話しました。書きたいことが多く、長くなってしまい申し訳ありません。

ここまで読んでいただき、誠にありがとうございました。このnoteが、少しでもあなたのお役に立つことがあれば幸いです。


さいごに・・・自己紹介

私は、2016年にPR会社に入社し、それ以来ずっとPRを軸に、企画やコピーの仕事をさせてもらっています。

文字を書くこと・読むことには、昔から苦手意識があります。クリエイティブの事例などを見ても、素敵だと感じるものは企画やデザインが多く、言葉への感受性が低い方だと思います。

それでも、コピーの勉強とアウトプットを続ければ何とか公募では結果が出せたことに、安心と喜びを感じています。

これには、今まで主戦場としてきた販促コンペやPRの実務で培った経験値も大きいと考えています。

コピーも企画もPRも、「どれだけ筋の良さそうな切り口を探し出せるか」+「どのように組み立てれば魅力的に伝わるか」の勝負、という点は通底しています。だからこそ、様々な領域を並行して勉強していくことが、どのスキルにも良い効果をもたらすと感じました。

また、感受性が低いなら、それを活かした戦い方がある、ということも学びました。

自分の中で良いと思えるコピーが少ないことは、作り手としては不利でしかないと考えていました。しかしあるとき、反応が鈍いアンテナに引っかかった切り口は、周囲の多くの人にも「いいね」と言ってもらいやすいことに気付きました。

あえて商品を買わずにコピーを書く、と言うメソッドは、この特性を活かし、良いと思える切り口をなるべく逃さないために考えたことでした。

このように、インプットだけでなく、自分の感性や思考の癖に合った発想法を見つけること、つまり「事例を知る×自分を知る」の両立が、アイデアを考える作業では大事になるなと、ここ最近痛感しました。

・・・

PR会社でふつうに暮らしていると、コピーを知る機会はあまりありません。そんな自分が宣伝会議賞に参加しようと思ったきっかけは、私の師匠(上司)がコピーライター養成講座に通い、そこで学んだコピーのメソッドを全社向けに発表してくれたことでした。

そこでは、谷山雅計さんの「広告コピーってこう書くんだ!読本」の内容を引用しながら、コピーとは解決であるという本質的なことや、“言葉で人を動かす”とはどういうことかについて説明してくれました。

そして、「双眼鏡を売るためのコピー」と、「公園からポイ捨てをなくすコピー」の例が挙がったとき、私は衝撃を受けました。言葉を受け取ることが苦手な自分ですら、一行の文章を見ただけで行動が変わってしまうと実感したためです。

双眼鏡のお題では、「隠れミッキーは見えにくい。」というコピーが紹介されました。例えば、舞浜駅のキオスクでただ双眼鏡を売っても、売上はほぼゼロに近いと思います。でも、この言葉が書かれたPOPをひとたび付ければ、とたんに売れ筋の商品になるだろうと容易に想像がつきました。

ポイ捨て防止のお題では、「注意。ポイ捨ての様子をSNSでさらされる被害が起きています。」というコピーが紹介されました。この立て看板を地元の公園に置いたら、モラルのなかった中学の同級生のアイツですら、おとなしくゴミを持ち帰ってしまうだろうなと思いました。

この頃、「注文を間違える料理店」やカンヌの事例など、“人を動かす”PR企画の鮮やかさを知って、ちょうど企画を勉強し始めていました。そして、けちょんけちょんにされていました。

だからこそ、コミュニケーションで人を動かすことがどれだけ難しいか、身に沁みて実感していました。

言葉が苦手だからと無意識に敬遠していたコピーライティングでしたが、たった一行で簡単に行動を変えてしまうパワーがあることを突き付けられて、すぐさま勉強を始めました。

まずはプロのコピーライターの方の思考法やコピー論が書かれた書籍を読み、基本と手法を知っていきました。谷山雅計さんの「広告コピーって」シリーズに始まり、20冊ほど。

そんな中、そろそろアウトプットの機会がほしいと思っていたところで、そういえば宣伝会議賞ってあったなと思い出し、第57回(2019年)からチャレンジを始めました。

このような経緯で宣伝会議賞をはじめてみて、コピーを学んだり、作ってみたりする取っ掛かりとして大いに助けられました。

でも、言葉を一行考えるだけで終わる仕事はありません。そこからあらゆるクリエイティブを組み合わせて、コミュニケーションを実現する、更には、実際に人々の気持ちや行動を変える、という途方もなく高いハードルを越える必要があります。

アイデアを考えて終わり、ばかりの人間になるのはよくない。そんな思いが募り、今年3月からは宣伝会議の実践型の養成講座(アートとコピー)に通い始めました。

既に立派な実務実績やスキルを持っている人たちが大勢いるなかで、自分の実力不足を痛感しています。実務でコピーが絡む仕事をもらったときにも、アイデアを実現させる難しさに毎回打ちひしがれています。

宣伝会議賞にしても、講座にしても、実務にしても、新しいことにチャレンジして、何かを実現させようとする熱量を持ち続けることが、どんなに大変でどんなに大切か、ここ数年で痛いほど学びました。

最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。あなたも、どこかで同じような思いをお持ちだからこそ、ここまで読んでいただけたのだと思います。熱を持つ同志として、今後も応援させてください。

----------

PRや企画、コピーの話はいつでも大歓迎なので、以下twitterまでフォローやリプ、DMいただけると喜びます(忙しくて返すのが遅れたらごめんなさい)。お仕事のご依頼もお待ちしております。

Twitter:https://twitter.com/marupoke15
MAIL:marupoke9415@gmail.com

※掲載内容は私個人の見解によるものです。所属する企業の立場や見解を反映するものではありません

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?