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WOW WORLD(東証1部/2352)22/3期 Q3決算精査

 東証1部(2352)上場のWOW WORLDが2022/1/31に22/3期Q3決算を開示しました。当記事で決算の内容を確認していきたいと思います。
 参考記事として、前期末の決算精査記事と株主総会のレポートをそれぞれ再掲しておきます。


 まずはQ3決算の内容ですが、PLは以下の通りです。

 Q3としては粗利率、営利率が大きく落ち込み、四半期売上も前年比で辛うじて増収という横ばい状況となり大変厳しい内容となりました。これを踏まえて、業績の下方修正が同時にリリースされています。

 各段階利益だけでなく、売上も未達となっており成長企業としては、ただただ悶絶するしかない内容です。その理由もQ1であった顧客獲得の遅延のリカバリが図れないばかりか、子会社でのコロナ禍影響を含めた下押しが一気に顕在化したという状況です。加えて、人材リソースマネジメントにも苦戦しており、外注リソースに頼らざるえない状況もあってコストも高位になってしまったという、まぁ外形的にみたら悪材料盛り沢山という内容です。
 当然PTSでは大きく売り込まれ、翌日のザラ場では寄り付きこそストップ安張り付き刑は免れましたが、結果的にストップ安で引けるという、知ってました、展開となりました。

 本来はここから決算説明資料等を読み解いて順番に紐解いていくのですが、全部割愛して、考察のみをだらだら連ねていきたいと思います。なお、以下の内容はあくまで主観的な私の思い込みによって記載しています。従って、事実と異なる可能性を多分に含みますのでご留意ください。

■個別論点

■修正後のQ4計画について

 修正後のQ4計画は売上7.3億、営利0.7億(営利率9.4%)とQ3より更に利益率を下げ、また売上も緩慢が続く見通しとなっています。同社において、四半期単位で見た時、営利率が10%を切る事はありませんでした。これまでもコロナ禍の当初やサーバー投資等急なコスト先行等様々な苦労の歴史と共に寄り添ってきましたが、10%を切るということはありませんでした。このように底打ち感が今回の下方修正で見られないという点が、より投資家の不安を助長させていると捉えています。FUCAで派遣リソースによる人件費倍増とかもありますが、一方で本体の継続利用社数もリカバリが図れており、各種コストダウン施策も動いている中で、回復が緩慢にみられるのはどういう事なのか。
 コネクティの大規模Webサイト構築等リソース不足が見られた所での一定のリソース拡充が済んだということですが、やはり育成期間というか業務の引継ぎ期間等も含めてまだ外注費が嵩むという状況があるように思います。これがQ4位の期間で終わるのか、来期のコスト重しとして当面伸びていくのかは、まさに今の戦力化の状況次第ということだと思います。ベストシナリオとしては、外注リソースから自社リソースへの転換が進み、外注費抑制される事で、来期以降のコスト平準化が図られるというものですが、ワーストシナリオとしては、リソース転換が進まないばかりかプロジェクト自体が遅延または品質低下を招く等で事業そのものにも悪影響が出てしまうというものです。かなり振れ幅が大きいなという感じですね。

■サービスレベルについて

 Q1でプレミアム版の不調があり、それが起因となって様々な活動に影響を及ぼしています。そしてチャーンレートを見ても、とてもカスタマサクセス活動が機能しているという状況にはみえません。何が要因でこういう状況を招いているのか、それは同社の競争優位性の低下なのか、違った背景があるのかを慎重に見極めなくてはなりません。
 まず会社側としてはカスタマサクセスの効果については課題感を持たれているようです。その上で、クラウドサービスの課金はイニシャルと月額に分かれるわけですが、とりわけプレミアム版は初期費用が高い点が特徴です。ここが判断が難しいのですが、コロナ禍等大企業もあまねく体力が落ちている(実際に落ちているかというよりマインドとして支出管理がより厳格化している)中で、費用対効果も厳しくみられることになります。そうなった時、同社の提供サービスは技術力の点から優位性があるとされていますし、特にその優位性そのものが変わったことはないのでしょうが、顧客が感じる費用対効果の面で違う選択(妥協)をされるケースもあるのではないかと思います。
 これを広義的にコロナ禍の影響とみるべきなのか、そして妥協した先にやはりWEBCASシリーズでないとという戻りが生まれるほどの訴求力ある商品なのか、あるいはそもそもこんな重厚な仕組みでなくてよかったねと訴求力が下がってしまうことになるのか、この辺りは評価が難しいです。
 そしてこういう状況を前に価格戦略(顧客への見え方/見せ方)をどう対応していくかもポイントです。面積としては変えないけど、市場に寄り添った対応というものが求められるのかもしれません。

■コネクティの状況

 コネクティの計画予実をみると、特にこのQ3で大きく計画未達が認められます(特に利益)。この背景にはデジタルマーケの運用支援部分のCMSの大規模サイト構築にリソース不足もあり受注を抑制せざるえなかった様子です。体制の再構築がどの程度で済むのかでコスト平準がどこで落ち着きをみせてくれるのかということもありますが、営業面でも、この体制整備に目途がつけばリカバリできると思われます。これが来期顕在化してくれるのか、つまり今が底なのかは、その顕在化時期がどの程度になるのかわかりませんね。ひとえにリソースマネジメントに苦戦して、一事が万事という様相にみえます。ただ、同社の活動に怠慢とかそういう様子は感じていないので、もっと様々な背景があったものとも思います。
 それから認識しておくべきリスクとしてはコネクティはのれんを計上しているため、事業計画の状況次第では減損リスクというものも出てきます。まぁこの辺りは無理して堅持せず粛々と処理した方が色々いいと思いますけどね。

■営業支援システムの構築について

 営業支援システムの刷新により、営業効率を高める活動について言及があり、営業課題抽出(開発中)とされています。
 これはシステム実装のために営業課題をどう可視化するかの要件定義をしているフェーズという意味合いなのか、構築は終わっていて活用のための最終チューニングを意味しているのかによって効果の顕在化などの感覚も変わってきますね。
 確認したところによると、既に構築は終えており、Q4で一部の回収を行い運用が出来そうということですので、現場浸透のスピード感に不確実性はありますが、今後の効果発現に期待がもたれるところです。

■FUCAの人材流出について

 FUCAの人材流出については懸念されますね。元々派遣さんという特性上、こういう事が起こる前提ではあるのでしょうがやはり業績面でコロナ禍の影響もあり苦しくなると色々歪みが生まれるようですね。
 今後も正社員化を進めつつ、うまく案件の波を捉えて派遣さんも活用していくという流れですね。

■来期の状況について

 まだ開示前ですから当然、会社側から示唆する事も含めて情報は出てきません(当然です)。足元で高まっている人材リソースのやり繰りの混乱がある程度落ち着くかがコスト面ではもっとも影響を及ぼすものと思います。また売上面では足元のチャーンレートのトレンドに変化はないのですが、商品訴求力かコロナ禍影響かはともかくとして同事象が起きていく流れ、それを如何にカスタマサクセスの向上で対策していくのかがポイントだと思います。加えて価格戦略面の影響も短期的には注視が必要です。会計基準の影響もあり、長く薄く平準化されますから来期の策定においてはある程度予算策定フェーズより蓋然性の高い策定ができるものと思います。

■その他

 自己株買いのタイミングについては、プライムを視野に入れている以上、対策が必要という認識なのでしょう。そして間が悪くその買付が終了してしまいました。株価はより安くなってしまいましたので、更なる「対策」が必要という事になるのではないかと思います。いや、これがいいことなのかどうかはよくわかりません。指標面とかではよくなるのかもしれませんけどね。
 プライムに向けては時価総額の課題がより深刻になるわけですが、会社側としては粛々と中計の目標達成を見据えて進んでいくだけということになるわけです。ここで、中計未達となると時価総額の適合はまず難しくなるため、スタンダードになるでしょうね。で、別にスタンダードが悪いものではないわけです。ただ、ここまでストレッチして目指そうとしたのですから、諦めずに頑張って欲しいとは思いますね。
 今回短信の問合せ先が山下氏に変更になっています。ここ一年で藤田さん→向さん→山下さんと変更になっています。これは社内の体制変更のためのようで、今後も引き続き向さんがIRの窓口としては対応されるようですね。なお、藤田さんはM&A事業への注力のため、IRからは既に離任されています。そろそろ何か成果をみたいところですね(笑)。
 配当については、今回の利益下押しが一過性のものという会社側の判断で据え置き予定のようですね。時価総額への配慮もあるので、このあたりは過度に無理をしてなければいいのですけどね。借入金は漸減していますが、これも本来であればアクセル踏むと決めたのであれば、機会を発掘してどんどん借入してでも投資に振り向けて欲しい所ですが、なかなか一筋縄ではいかないということなのでしょうね。

■投資判断

 投資判断としては、現時点で私は保有継続としました。
 リスクが大変高まっている状況ですし、人材マネジメントに係る部分での懸念が起因しているということもあり自分の中でもネガティブに映るのですが、Q1の一事象やコロナ禍による子会社の状況が引き金になって、人材を蔑ろにしての結果と断定する事も出来ないという部分をみての判断です。但し、今後更なる本体での顧客離反がありその対策如何によっては長年の株主を残念ながら卒業せねばならないかもしれません。
 客観的にみれば悪材料てんこ盛りなら、目を瞑って投げるというのが本筋なのですが、この程度(?)の悪材料で投げていては、私なんて日々投げていないとなりません(笑)。本質的な悪さが人や商品サービスのどの部分にあるか、それが自分の中で明確に悪さと認識するには、まだこの程度の下方修正では堪えないのです(不感症ですね)。
 そもそも、保有比率の兼ね合いもあります。私の現時点の同社保有比率はポートフォリオの4%程度です。半額になったとしてもポートフォリオに与える影響は軽微です。いや実際にはチキンな私にとっては2%だって軽微ではないのですが、足元の相場のボラの大きさから麻痺しています。そして軽微だから別に放っておいていいという打算的なものでもありません。
 いわゆるSaaS企業に求められる期待と実態に乖離があったり、難しさもある中で、敢えて先行き不透明感が高まっている同社の株を抱いているってどうなの?って皆さんが思うと思います。私も客観的に、自分の思い入れとかで手放したくない的な感情論は抜きにして判断したつもりです。

 しかし、まぁ、会社名をエイジアからワオワールドに変えてから、まるで呪われているようですね。驚きをぜひ前向きになれるようなもので実現できるよう、今後の活動に期待しています。
 頑張れ、エイジア!じゃなくて、ワオワールド!

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