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PR TIMES(東証プライム/3922) 23年2月期Q1決算精査

 東証プライム上場のPR TIMES(3922)が2022/7/14にQ1決算を開示しました。私は株主として同社を応援しておりますので、その目線で決算の内容を確認していきたいと思います。
 なお、あくまで私の個人的な見解に基づいて記載しています。このため、事実誤認を多分に含む可能性があります。また同社株式の売買を推奨するものではありません。記載の内容についてのご意見やクレーム等があれば以下ツイッターよりご連絡いただけますとありがたいです(画像リンク)。

1.参考記事

 まず同社の関連記事を再掲しておきます。先日開催された株主総会レポート記事や個人投資家向け説明会の様子など記事を再掲しておきます。

2.決算の内容

 会社から決算説明資料が開示されています。丁寧に説明されていますが、今回いくつかの項目が新たに開示されていますので、その部分からみていきましょう。
 まず広告宣伝費の内訳情報です。従前は主にPR TIMES本体への投資が主体だった中で、今期からはJootoやTayoriへも投資期として投下を宣言されていましたから、説明責任を念頭に追加されたものと思います。ただ、進捗率で表現されたこともあり、アナリスト向け説明会(個人投資家はライブ視聴のみ)では各事業での凹凸の状況などが質問されていました。
 ただ、当然広告宣伝費の投下というのはタイミングやバランスなどもまちまちなので、進捗率の高低で良し悪しが一概には計れません。実際そういうご答弁をされていました。進捗率の状況よりも、主にどんな活動行ったのかと、その手応えや今後の見通し等の定性的な情報があってもいいのかなと感じました。例えばJootoでは早期に部門責任者の募集が成されていた中で、人材補強や育成などがきっと相応に成果があったものと思いますし、それが故の高進捗率だったと思われますが、そういう情報があると、共感を抱けるのかなと思います。とりあえず、進捗率自体にあまり意味がないと思う中で、敢えて、進捗率を全面に出したのかは何か意図があるのだと思いますが私には理解はできませんでした。

 次に各種KPIの中で、個人ユーザー数が新たに開示されました。こちらは企業のフォローを契機に、その企業からのリリースを個人が視認性よくインプットできる機能を実装している中で、個人ユーザーの動向を開示することになったようです。これは結構注目で、各企業はプレスリリースを配信する際に、その企業のファンの方にはより身近に感じられるマーケティングツールの側面でも活用が想定されるということになります。
 SNS公式アカウントで、販促ありきのフォローだけではなく、その企業の純粋なファンとしてのエンゲージメント創出機会としてのプラットフォームとなりえるのであれば、プレスリリースの価値を益々高める事にも寄与します。こういう領域を見据えた個人ユーザー数を新たに追加したという判断はとても好感出来るなと感じます。

 最後に、予告されていた通り、中計の利益イメージが追加されました。

 この中計利益イメージ開示に当たっては、先日の株主総会で私は以下のような質問を投げかけていました。

★Q 中計の利益推移イメージについて
 中期経営目標は定性面・定量面で様々な取り組みが掲げられており期待をしている。そんな中で、定量目標は現時点では不確実性の中であくまで目標として設定されているものであるし、各種施策や更にその先を見据えた定性面の活動をより重んじているものだと捉えている。そんな中で、マーケットとのコミュニケーション不足への反省から次回の決算説明会では各年度の営利推移イメージを示すとされているが、各年度の定量面の情報のコミットメントを強化することが、不確実性へのチャレンジや長期目線での定性部分の強化といった点が相対的に弱まり近視眼的となってしまう懸念はないのか。
A
 元々25年の利益目標のみを開示したのは、23-24年に一定の自由度をもって対応をしていく期間として猶予を頂きたいという想いがあった事は事実。元来、社内で試行錯誤を重ねる期間として5年という期間を見てきた中で、その途中途中の推移を示すということは、その活動を縛ってしまうかもしれないという指摘はその通りであるとも思っていた。しかし、一方でその姿勢は会社の理念に反することではないかとも感じるようになった。私たちの理念の中にはOne’s commitment, Public firstというものがあり、広く社会のために尽くしていくという姿勢と、目の前の目標を着実にこなしていくという双方の価値観を大切にしているわけである。そんな中で、足元の減益予想で厳しい評価をされているという事は承知しているが、この中計目標が22年にのみならず23-24年も投資を重ねて25年さえよければいいという見立てをされている疑念があり、それは目の前の目標を着実にこなしていくという価値観とは馴染まない受け止められ方をしているかもしれないと考えた。
 当社の立場でみれば自由度を持つという事であっても、株式市場が25年までは株式を長く保有するというマインドを削ぐようなメッセージになっているとしたらその点は是正が必要だろうとも思っている。大切にしている株主の立場に立った時に、我々の自由度というだけに固執するのではなく、バランスをみての発信の重要性を再認識した結果としてこのような対応をとることとした。
■考察
 ここはだいぶ突っ込んだ回答がありましたね。実質的に23-24年まで掘り続けることはないよ、という表明でもあった気がします(いや勝手にそう私が感じただけですけどね)。むしろ個人的には本当に機会があるのなら、もっと掘ってもらってもいいと思っていますけどね。投資家も様々ですが、25年に目標が設定されているから、それまではスルーでいいや、ってほど、単純でもないと私は信じたいのですが、まぁ今の値付けをみるとそういう部分も少なからずあるのかもしれません。
 長期株主に配慮をもって理念に基づき開示されることにした意思決定は尊重したいと思いますが、やはり認められていたように自由度が損なわれる側面は少なからずあるとも思います。特に社内から見た時に25年に向けて全社一丸で付加価値を高めていくぞ、といった中で、単年度の数値のキャップがはめこまれていることが、なにかしらの障壁になってしまわないといいなと思います。マーケットからの期待値を上げ過ぎないようにという言動も大切にされている山口社長ですから、この説明においても過度に期待を持たせるような物言いはされないと思いますが、それでも数値を出すとそれが独り歩きする事もまた事実です。コミュニケーションの難しさを感じるわけですが、うまくバランスをさせながら運営されていく事を期待したいですね。
 ちなみに再度質問に当たり、時間も迫っているので付議事項に関わることなどでどうしてもこの場で質問したい方は、という事でかなりハードルが挙げられた所で、空気を読まず再度質問しました。もちろん付議事項に関連しなかったのですが、7月にこの説明をなさるというところで、この点を伺う機会がここしかなかったという言い訳を最後につけておきます(笑)。

株主総会レポート(自筆)からの抜粋

 このようなやり取りをさせて頂いていたこともあり、ある程度早期に立ち上がる目論見が示される事は理解していたつもりです。いずれにせよ、会社側の意志は感じる内容にはなったかと思いますし、投資家側の不安マインドを少しでも拭えたものになるならいいなと思います。

 定量面では決算数値は順調に推移しているものと思います。

 グラフにすると以下のような感じです。売上は過去最高、利益もQ1としては過去最高です。

 営業利益は広告宣伝費の投下タイミングで四半期でみると凹凸があります。それを戻してみると以下のような推移です。前Q4は本社移転費用が乗っているのと、賞与等の一過性費用などがあるものと推察されます。

 数値のベースにある指標ですがリリース件数です。Q1では1ヶ月程度分や規約変更による影響を受けています。今後は3ヶ月分フルでこのような状況となるため当面は頭打ち(にみえるような)状況が続くかなと思います。

 利用社数も堅調に伸びています。地方発掘活動に着手されていますが、この辺りがどうなっているかももう少し解説があるといいですね。次の四半期決算くらいで言及がないようであればIR照会です。

 ビジュアル活用数もリリース件数と相関するでしょうから、同じような傾向です。

 掲載メディア数は増えましたね。

 BSについては決算説明資料に解説があります。長期契約の一括払いが増加というのは、PR TIMESの信頼力の向上、企業側が今後も利用したいという意欲が高いという現れでもあり、こういう地味な数値も結構同社のプラットフォームの強みを表していますね。

 という感じで、まぁベースとなる数値も、財務数値面も全体としてはいい感じだと思います。

 一方で今後の野心的な活動を掲げているJootoとTayoriですね。JootoもTayoriも確かに伸びてはいるのですが、目指している目標の次元がまだ違うので、これではまだ力不足です。まだまだ母数が小さいわけですから、むしろ増加率はシュリンクするのではなくむしろ上がっていって欲しいですね。当然各部門の方は頑張って下さっているし、実際、顧客の声の分析なども進んでいる様子ですから、そういう声や情報から打つべき手を打って、どこかでブレークスルーしてもらいたいですね。

 決算情報とは直接関連しませんが、この期の活動としてはいくつか表に出てきた活動成果もありますね。
 まず非営利団体サポートプロジェクトの支援対象拡大ということですね。こういう活動はどんどん進めてもらいたいですね。

 Voicyさんとの資本提携はまだ詳細は出てきていませんが、これも楽しみな提携だなと感じます。かつてPR TIMESが提供していたオプラジというものがありましたが、これも復活を期待したいですね。
 なお、具体的なコラボサービスは今後開示されていくようですね。

 フォロー機能もいいですね。私も個人ユーザーとして登録していますが、自分の趣向などに沿った鮮度の高い、また熱量の高い情報が入ってくるというのは嬉しいですもんね。

3.決算説明会

 決算説明会ではアナリストの方のみ質問を受け付けるということでした。残念ながら個人は株主であっても質問やメッセージするら届ける機会はありませんでした。

 説明会の様子ですが、冒頭30分程度は山口社長が決算説明資料に沿って説明されました。中計の利益イメージについては、本来中計開示時にきちんと示すべきだったかもしれないと仰っていました。先の総会でのやり取りもありましたが、別に意図的にうやむやにしようとしていたわけではなく、きちんと判断していたとはいえ、マーケットとの対話の在り方や、自社のポリシーに照らした時の反省を生かしたものと思います。

 主なQAの内容を箇条書きで示しておきます。正直あまり有益な質疑とは感じなかったので、割愛して表現しておきます。

・広告宣伝は進捗率で表現しているものの、3ヶ月単位で線形に投下するものではなく、ある程度現場責任者の判断も踏まえて機動的に投下。なので、進捗率の高低で良し悪しは特に決まるものではない。

・Jootoの投資は人的リソースの拡充だけでなく、育成もうまく機能しており、体制拡充が進んだ。

・足元の状況は前年進捗率と比べてみるとやや状況はよいものの、だからといって好調と表現するほどではない。順調ということ。

・Jootoは競合状況など、当然多くの国内外のツールがあることは認識しているが、そこからマーケットを奪い合うというものではなく、未だ紙運用等をされているケースに対して、市場全体がデジタル化していく中で新たなマーケットを獲得していくという方針である。

・来期以降の数値イメージは利益以外は開示しない。売上はこれまで25%成長を持続してきた中で、今期はこれを割るが、今後もこの成長率を意識しながら成長を果たしていきたい。

・Jootoの広告宣伝投下はタクシー広告などの認知を拡げるフェーズや、イベント出展のような需要がある方に向けたリード獲得という機会などまちまち。すぐに成果が出るものばかりではないため、寛容になって見届けて頂きたい。

・来期利益が増額される内訳は、現時点で進行期でもないため、現状でお伝えすることはしない。

・規約変更の対応において客観性や中立性は、独立した組織(カスタマーリレーションズ本部)において粛々と行っていく所存。

・Voicy提携は過去にも様々な取り組みをしてきた中で、当社でもオプラジなどでは採用局面等でも活用できた。その際にVoicyさん内のコミュニティ形成力の魅力や外部への影響力等も鑑み、資本業務提携によりより密にサービス開発していきたいと考えた。遠からずPR TIMESでリリースしていくので注目して欲しい。

・MARPHについては、これまでアーティストが、自分の作品を共有したりする機会が極めて限定的であったが、認知をされ、評価をされ、更に流通するという状況を創ることで、行動者の支援になるもの。生活者にこういう世界観が伝わっていくことで、盛り上がる事を期待したい。

4.さいごに

 数値面もさることながら、活動においても成果も課題もあって、会社が今後も成長を果たしていくという機運を保つ上でとてもいい塩梅だろうと感じます。各施策も意志をもってなされているとも感じますし、それは決算の数値が弱いとか、コンセンサスと比してどうかということは私にとっては些末な議論だと思っています。
 5年後、10年後あるいはそれより先に、よりよきプラットフォームがあって、それが行動者へ様々なよき効果をもたらせるようにあって欲しいと願っています。株主として、シェアホルダ―として寄り添えるよう、今後も応援していきたいと思います。多くの社員の方がSNSでも発信されており、個々にそういう輝く活動をみていると励まされる気もします。今後も応援していきたいと思います。
 頑張れ、PR TIMES!

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