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仮題

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心霊オカルトコメディ小説です。
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#心霊

4:雨上がり

 結実がかつて知人と経営していたカウンターバーに、遵はクイーンサイズベッドを持ち込み、寝泊まりしている。
 二人が出会ったのもここが、ショットバーとしてBAR kineという店名で営業していた頃だ。バーテンダーとして勤務していた結実はその日、どこからか街に流れ着いた見ず知らずの男と、酒の力を借りて意気投合した。しかし、ひと晩飲み明かしたその日の次の夜も遵は来店し、その次の日も、どのような天気でも関

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4:帰路

 復路は大分、スムーズだった。道路も渋滞もなく、雨脚も少し弱まり、長雨の終わりが漸く近い様な予感がした。
 助手席の遵は先刻の髪製ミサンガを取り出しては眺め、しまっては取り出して、を繰り返している。
「そんなにそれ、興味深い?出来たら私はもう視界に入れたくもないんだけど」
 結実は怪訝そうに、遵の無神経さを非難したが、気に留めるどころか、ニヤニヤと笑いながらら
「いや、これにはそれ程。ただお前は本

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