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#03「被災地ならではのファシリテーションって?」

「まるもが気になるアノ人」に話を聞く第1段は、鈴木まり子ファシリテーター事務所の代表を務める、鈴木まり子さん(通称:ちびまりさん)。#02に続き、今回の#03では、東日本大震災での支援の様子ようすや、被災地での活動を通してちびまりさんが気づいたこと、ファシリテーターのあり方などについてお届けします。

目次
[3/6] #01 ファシリテーションの概念ががらりと変わった、ちびまりさんとの出会い。
[3/7] #02 東日本大震災、わたしたちに何ができるのか。3人で立ち上げた、災害復興委員会。[3/8] 
#03「被災地ならではのファシリテーションって?」
[3/9]
 #04 たわいないメールも、ボーリング大会も、ファシリテーションのいちぶ。
[3/10]
 #05 著書『ソーシャル・ファシリテーション』と、ちびまりさんの、この先。
対談している人:ちびまり、まるも
記事を書いた人:西道紗恵さん(ライター)
オーディエンス:ごっちゃん(2人をつないでくれた人)

まるも:ちびまりさんはこれまでに、復興支援をされたことはあったんですか?

ちびまり:全くないんです。だから災害復興委員会として活動し始めるまでは、「被災地ならではのファシリテーション」があるんだろうと思い込んでいました。

まるも:災害時特有のファシリテーションみたいなものですか?

ちびまり:そう。あると思っていたから、被災地へ行くのに緊張していたんです。ホントは、そんなのないのにね。どうしてそういうふうに思ったんだろう。

まるも:いやでも、僕もなんとなくイメージあります。実際に被災地へ行かれてみて、想定されていたファシリテーションと、リアルなファシリテーションは、どんな違いがありましたか?

ちびまり:そもそもファシリテーションって、どんな人が参加していて、今日はどんな目的があって、参加する人は何を求めていて、どのように進めようかって考えますよね。それが被災地であっても、その場に合わせるというだけなんですよね。だから、「被災地用のファシリテーション」というものはない。被災地独特のファシリテーションがあるだけで。

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まるも:被災地ならではとか、災害時ならでは、というものはなく、ファシリテーションそのもが、その時の人や場に合わせてアレンジするもの。それはちびまりさんにとっても、気づきや学びだったのでしょうか。

ちびまり:そうですね。いちばん最初に被災地で行ったファシリテーションが、4月28日かな。その日が、ちょうど3月11日から数えて四十九日目にあたる日なんです。岩手県釜石市で開催される「いわて連携復興センター」の総会があるとのことで、徳田さんと一緒に参加させていただきました。

いわて連携復興センター
http://www.ifc.jp/about/profile.html

ちびまり:総会の会場は、津波の被害が生々しく残っている釜石市の市営ビルでした。下層階は全部津波でやられていてビルのトイレも使えませんでした。どうにか被害をまぬがれた3階で、皆さん立ったままの総会でした。途中14時46分には全員で黙祷をしました。その時の参加者は、東北だけではなく全国からの支援団体の方たちでした。話し合いのなかで、「せっかく皆さん集まってるんだから、事業計画や予算承認で終わるんじゃなくて、意見交換や交流をしましょう。せっかくFAJのお二人が来てるんですから、ファシリテーションお願いします!」と言われて。

まるも:あれ、ファシリテーションをお願いされていたわけじゃなかったんですか?

ちびまり:はじめはね。そんなつもりもなかったし、頼まれてもいなかったんですけど。付箋も何もかも車に置いてきてるし、「え!?」ってなったけど、「わ、分かりました!」って言って。徳田さんが急いでその場にあった模造紙を壁に貼り出して、皆さんにはとりあえず3人くらいのグループになってもらって、自己紹介や情報交換をしてもらいました。これが被災地で初めてのファシリテーションでした。第1発目から、現場力を試されている感じがありましたね。

まるも:臨場感がすごいですね(笑)。

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(写真)いわて連携復興センターでのファシリテーションの様子

ちびまり:それからもうひとつ、ファシリテーターのあり方について考えさせられた出来事があって。「いちばん大事なのは、ファシリテーションしないこと」。

まるも:どういうことですか?

ちびまり:これも釜石に滞在しているときの出来事なんですけどね。5月に復興イベントをしようという話がぽっと出てきて、関心のある人が少しずつ集まってくるらしいとなったんです。でも、実行委員会もなければ、どんな人が来て、何をするイベントなのか白紙状態。自分にできることがあればやってみたい。でもどうすればいいか分からない。そんな人たちがスムーズに動けるにはどうすればいいか。そんなことを考えていたある日、私と徳田さんが宿泊していた釜石の施設の壁に、徳田さんが模造紙を貼り始めたんです。その施設は、イベントのメンバーたちが集まってくる場所でもあって。壁一面に貼られた模造紙に、徳田さんは思いつく限り検討事項や可視化しておくべき情報を洗い出して、メンバーが書き込めるようなフレーム(枠組み)をつくったんです。

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(写真)徳田さんがつくられたフレーム

ちびまり:イベント開催日までの日付を書いて、いつからいつまでどの団体が宿泊していくのか、自分の団体の人数や活動内容、イベントに参加する目的、イベントで何をしたいのか、サポートが必要なのかどうか…。そのフレームをつくって、徳田さんは仕事のために東京へ帰ってしまいました。でも後から来た人たちが、そのフレームを見ていろんな情報を書き足していくんです。すると、どんどんフレームが埋まり、あらゆる情報が可視化されていく。徳田さんがいなくても、徳田さんが残したフレームが、ファシリテートしてるんですよ。

まるも:おもしろいですね、間接的にファシリテートしているというか。

ちびまり:そのフレームをもとに、少しずつイベントの形が見えてきますよね。じゃあ、そろそろミーティングをしたほうがいいかもしれないですねと施設にいる方に投げかけて、みんなで円になって床に座って話し始めました。この時は、わたしとFAJの復興委員のメンバーがファシリテーションをしたんですが、特に自分たちがファシリテーションを専門にしている人だとも言ってないですし、ミーティングの進行もゆるくして。そして無事にイベントが終わり、また別の復興ワークショップで私と復興委員のメンバーが、場づくりやワークショップのグラフィックを担当したんです。その時は活動が表立っていたので、その姿を見てもらって初めて、私たちの役割を知ってもらいました。

まるも:あえて、自らがファシリテーターであることを主張されなかったんですね。

例えば、親子でイベントに参加されていたら、誰かがお子さんと一緒に遊び始めて、するとお母さんがぽつりぽつりと想いを語り始める。すると誰かがお母さんの話を聴き始めて、するとまた誰かがお子さんの面倒を見に入る。ファシリテーションの場だと、お母さんに傾聴係をつなぐ場面もあるかと思うのですが、ちょっとわざとらしいというか。そんな段取りがなくても、自然とその空気感のなかで役割が生まれて、場ができていく。それが、心地いいファシリテーションのあり方だと思ったんです。

まるも:僕もよく耳にするのが、ファシリテーターはやり方ではなく、あり方が出るということ。「ファシリテーターします」という場面のほうが、少ない気がします。

ちびまり:そうですね。

まるも:お互いが自然とサポートし合う関係や空気感って、すごくいいなと思います。

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ちびまり:だからその時は、私も徳田さんも復興委員のメンバーも、「ファシリテーションしない」が合言葉でした。ある時、東北に向かう車の中で、これからFAJのメンバーを被災地に連れていくとしたら、どんな人を連れていきたいかという話題になって、徳田さんは「ファシリテーションしない人」と答えたんです。ちびまりはどう思う?と聞かれて、「被災地の人と仲良く飲める人かな」って言ったのを、よく覚えています。

> #04に続く
「たわいないメールも、ボーリング大会も、ファシリテーションのいちぶ。」

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(まるもの一言)
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