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#02 東日本大震災、わたしたちに何ができるのか。3人で立ち上げた、災害復興委員会。

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(写真)ちびまりさんが釜石に行かれたときのファシリテーションの様子

「まるもが気になるアノ人」に話を聞く第1段は、ファシリテーター事務所の代表を務める、鈴木まり子さん(通称:ちびまりさん)。#01に続き、今回の#02では、東日本大震災の際に立ち上げられた、災害復興委員会についてのお話をご紹介します。

目次
[3/6] #01 ファシリテーションの概念ががらりと変わった、ちびまりさんとの出会い。
[3/7] #02 東日本大震災、わたしたちに何ができるのか。3人で立ち上げた、災害復興委員会。
[3/8] 
#03「被災地ならではのファシリテーションって?」
[3/9]
 #04 たわいないメールも、ボーリング大会も、ファシリテーションのいちぶ。
[3/10]
 #05 著書『ソーシャル・ファシリテーション』と、ちびまりさんの、この先。
対談している人:ちびまり、まるも
記事を書いた人:西道紗恵さん(ライター)
オーディエンス:ごっちゃん(2人をつないでくれた人)

まるも:ちびまりさんは、FAJ(NPO法人日本ファシリテーション協会)内で、災害復興委員会を立ち上げられたそうですね。その活動内容や、立ち上げの経緯を教えていただけますか?

ちびまり:実はその当時、FAJの活動にすこし距離を置こうかなと考えていたんです。

まるも:え!?それはなんでですか?

ちびまり:私は10代の頃からボランティア活動を続けていて、FAJもNPO法人ですから、何かお役に立たなければと思い、入会してすぐに運営委員になりました。ただ、FAJのほかにも、さまざまなボランティア活動をやっていたんですね。FAJの「私益から公益へ」という考え方にはすごく共感できるけど、内部の勉強会などに時間を費やすことよりも、現場で活動をしている中で困っている人たちを直接後押しできるような活動に注力したほうがいいのではとも思い始めていて。そんな時に、東日本大震災が起こったんです。

2段_1

ちびまり:より現場視点で活動していきたいと考えていたタイミングでの出来事だったので、これはやるしかないというか。当時、会長だった徳田太郎さん、理事の遠藤智栄さん、私の3人を中心に「災害復興支援室」(今現在は、災害復興委員会)を立ち上げました。

「災害復興委員会」
https://www.faj.or.jp/activity/reconstruction/


ちびまり:私は地震発生当時、横浜市戸塚でファシリテーション講座の講師をしていて、横浜駅で夜を越しました。その時、徳田さんは韓国、遠藤さんは仙台。徳田さんはFAJの全会員が登録されているメーリングリストに、すぐさまメッセージを発していました。さらに、理事会MLにも法人として動きましょうと投げかけてくれました。それに応えて、私も災害支援にあたって法人としてすべきことを短期・中長期で提案しました。その時のメッセージは全文、FAJのホームページ災害復興委員会の「ファシリテーション わたしたちにできること」に残されています。

徳田さんの投稿に対する鈴木の考えを記します。 今、安否確認と緊急対応に関し、法人として議論している時間がないと判断したものは、個人で動く。善意での行為に関しては、理事会も規程などにこだわらず寛大に。短期…開催可能な地域では、定例会やイベントを安易に中止しないで、長期的にFAJがFAJらしく復興に貢献するために、質の高い学びや対話の場をつくり、それぞれのファシリテーションの能力を高めておく。また、身近で緊急に話し合いのファシリテーターが必要な場合、従来のプログラムよりゆるい条件でファシリテーターを募集することも委員会で議論してほしいと思います。長期…これから長い復興の道がはじまります。色々な対立や課題解決の話し合いが続くでしょう。そのとき、「FAJをどんどん使ってください」といえるだけの力を持った団体にしていかなければいけません。今は、メディアも人もこの震災に関心があります。でも、FAJはメディアが取り上げなくなり、人々が関心を持たなくなっても支援を続けたいと思います。今後について…遠藤さんの代わりになれるか分かりませんが、社会への窓口係として、特命プロジェクトの立ち上げに動きます。そのときのメンバーは、FAJの会員に限らず、プロフェッショナルなファシリテーターも視野に入れたいと思います。なくてはならないFAJになるために。

※活動報告「ファシリテーション わたしたちにできること」より抜粋
https://www.faj.or.jp/activity/reconstruction/uploads/2019/houkokusyo.pdf

ちびまり:すぐにでも、形にしたい。もし理事会で認められなければ、FAJを辞めて個人で動こう。それほどの覚悟を持って、企画書を提出しました。

まるも:立ち上げはスムーズに進んだんですか?

ちびまり:震災後初めて開かれた理事会が3月27日だったと思うんです。東京と大阪の2拠点でのオンライン会議だったのですが、東京と大阪の震災に対する温度感がまるで違ったんですよね。仕方ないと思うんですけど。私は東京にいて、震災での電力不足から暖房は切って寒いし、照明も減らして暗い中という状況。いっぽう大阪は部屋も明るくて、こちらとは環境が違う。ここから先は、一つひとつ理事会の承認を待っていたら迅速に動けないので、スピード感が重要。委員会のボードメンバーである徳田さん・遠藤さん・私の3人に権限を委任いただき、予算も確保することができました。そのあたりの判断は、理事会もスピード感がありましたね。

まるも:ドラマのようなストーリーですね…。その時のちびまりさんの感情というのは、責任感が大きいですか?自分に何ができるのか?という想いがあったのか。

ちびまり:あの時は全国的に、一人ひとりが今、何ができるのかを考えさせられたと思うんです。そういう意味では、「私に何ができるのか」は常に考えていました。私はどちらかというと、個人行動するよりも、みんなでやりたいタイプ。仙台にいる遠藤さんから、「徳田さんと一緒に仙台に来ない?」と言われて、4月8日に仙台入りしました。

2段_2

まるも:日付まで覚えていらっしゃるんですね。

ちびまり:でもその時に、ただ被災地に話を聞きに行くだけってどうなんだろう?と釈然としないところがあって。そこで考えたのが「文具レスキューパック」。遠藤さんから、「避難所やボランティアセンターでは紙やペンが不足して、打ち合わせもスムーズにできない。届いた支援物資のダンボールの切れ端を使っている」という情報をもらっていたので、文具セットがあれば現地のNPOの人たちが活動しやすいのではないかと思い、文具類をひとまとめにしたパックをつくって、持っていくことにしました。

文具レスキューパック
・プロッキー、付箋、養生テープ、コピー用紙、話し合いでの模造紙や付箋の使い方ガイド、などをセットにしてまとめたもの。

ちびまり:これなら、FAJの会員にも手伝ってもらえるかもしれないと思い、徳田さんが早速メーリングリストで寄付の呼びかけをしてくれました。それと並行して、遠藤さんがNPOを訪ね歩きながら、必要な物資を聞いてくれて。集まった物資は、つくば市民大学で荷詰めして、徳田さんの車に載せていく。神奈川県から、詰め合わせの作業の応援に駆けつけてくれたFAJ会員もいました。レスキューパックの中には、文具類のほかに、付箋の活用方法についてのリーフレットや、災害復興委員会が支援できることを記載したチラシも入れて、このレスキューセットを手にとった人が使いやすいように、工夫を盛り込みました。


> #03に続く
「被災地ならではのファシリテーションって?」

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(まるもの一言)
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