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#04 たわいないメールも、ボーリング大会も、ファシリテーションのいちぶ。

「まるもが気になるアノ人」に話を聞く第1段は、鈴木まり子ファシリテーター事務所の代表を務める、鈴木まり子さん(通称:ちびまりさん)。#03に続き、今回の#04では、これまでの活動を通して感じられた“ファシリテーションのその先にあるもの”や、ちびまりさんが影響を受けた人についてご紹介します。

目次
[3/6] #01 ファシリテーションの概念ががらりと変わった、ちびまりさんとの出会い。
[3/7] #02 東日本大震災、わたしたちに何ができるのか。3人で立ち上げた、災害復興委員会。
[3/8]
#03「被災地ならではのファシリテーションって?」
[3/9]
 #04 たわいないメールも、ボーリング大会も、ファシリテーションのいちぶ。
[3/10]
 #05 著書『ソーシャル・ファシリテーション』と、ちびまりさんの、この先。
対談している人:ちびまり、まるも
記事を書いた人:西道紗恵さん(ライター)
オーディエンス:ごっちゃん(2人をつないでくれた人)

      
まるも:ちびまりさんのお話を伺っていると、ファシリテーションにできること、できないことが、ちびまりさんの頭の中にはあるんだろうなと思ったんですが、いかがですか?

ちびまり:そうですね。ファシリテーションをするのって、決して会議の場だけではないと思います。熊本地震があった時の話をしますとね。1万人ほどの人たちが暮らす嘉島町というところへ行ったんです。はじめは避難所のボランティアとして参加していたので、自分がファシリテーターであることは言っていませんでした。行政が、避難所の運営を避難している人たちでの自主運営に変えたいと相談があり、そのタイミングでファシリテーターとして参加しました。最初にやったことは、避難所を運営している人と1対1の傾聴。ある人とはメル友にもなって、避難所で文句を言われて怖かったとか、上司にも避難者にも言えない本音を毎日のように伝えてくれるようになったんです。

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ちびまり:それから役場の中に入って、災害対策本部のお手伝いをするようになりました。主に、課長会議のファシリテーションを任されたんですが、この会議には役場の全課長が集まるんです。これって実は珍しいことで。特に、建設課は夜中まで働いているくらい忙しくて、会議に出る余裕もなかったと思うんです。でも30分だけでも会議に参加してくれたら、きっと楽になる。だって他の課は、できることがあれば助けたいと思っているわけだから。でも当の本人たちは、いっぱいいっぱいになっちゃってるんですよね。そんな大変な課がいるなかで、自分の課の議題なんて出しちゃいけないと思ってしまう課長もいる。その時には、午前中に役場へ行って、「こんにちはー!最近どうですか?」って、全ての課をまわりました。

まるも:会議の時間外にってことですよね。

ちびまり:そうそう。「会議の議題ありますか?あったら出してくださいね。なければなくてもいいですよ」って。「うちの課だけでは(仕事の対応が)無理なんだよね」と言われたら、「じゃあその議題だけ出してみたらどうですか?投げたくなかったら、投げなくてもいいですよ。でもちょっと言いたくなったら、会議で言っても大丈夫ですからね」って。それで会議が始まって、「他に議題はありませんか?」と振ると、さっきの人が手をあげてくれたんです。これって、私はネゴシエーションだと思うんですけど。

まるも:根回しですよね。

ちびまり:根回しって、私は別に嫌いではなくて。もともと根回しって、木を移植した時に木が枯れないように、前もって整えておく作業のことですから。ファシリテーターにもいろんなタイプがいて、私は人が好きなのでズブズブ入っていくタイプ。役場の人たちに驚かれたんですけど、課長の隣に置いてあるソファに腰掛けてお昼ごはんを食べたりもしましたよ。

まるも:僕も、ワークショップの場では、ファシリテーターとしてフラットな立場でいるようにしていますが、そこにたどり着く過程のなかで、人間どうしの付き合いを貯金している感じがあります。それをしておかないと、スポットだけの限られたファシリテーターになって、おかしなことになっちゃうので。今ふり返ると、そう思いますね。

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ちびまり:だから、役場のみなさんや社協の方とも「飲みに行きませんか?」って誘われて飲みに行ったり、家族ぐるみのお付き合いになった人とは、お子さんと一緒にボーリングに行ったりすることもありました。だから、会議だけがファシリテーターの活動場所ではないですよね。

まるも:ちなみに、ちびまりさんが影響を受けたファシリテーターや、尊敬されている方っていますか?そんな人がいたら、ぜひ教えてほしいです。

ちびまり:影響を受けた方はたくさんいらっしゃいますが、今ぱっと浮かぶのは、徳島で活動されている伊勢達郎さん。「NPO法人自然スクールTOEC(トエック)」の代表を務められている方です。

NPO法人自然スクールTOEC
https://toec.jp/access

ちびまり:幼稚園と小学校のフリースクールを運営されていて、子どもたちにやりたいことを聞いて自分たちでプログラムを組み立てるスタイル。今ではよく見かけるようになりましたが、伊勢さんは30年ほど前から実践されています。フリースクールでの取り組みもおもしろいんですが、中野民夫さんが書かれた『ファシリテーション革命』という本があって、そこに伊勢さんが登場しているんです。その本で中野さんは「引き出すファシリテーション」についてふれていらっしゃるんですが、「僕の友人の伊勢達郎は、引き出すファシリテーションは作為的だと言っている。あふれ出す場をどうつくるかだ」ということを書かれていて。その文章を読んで、伊勢さんにいつかお会いしたいと思いました。

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ちびまり:ある時、屋久島にある中野さんのお宅に2週間ほど滞在させていただいたことがあって。そこに泊っている人の中に、いつもお酒を飲んで酔っ払ってるおじさんがいたんです。「誰だろうこの人は…」と思っていたら、その人が帰ってしまってから、中野さんから「あれは伊勢達郎っていうんだよ」って教えてもらって。まさかの、私がずっと会いたいと願っていた人だったっていう!

まるも:衝撃的な出会いですね(笑)。

ちびまり:ほんとにね。その後、伊勢さんのワークショップにも参加させていただいて、まさに「溢れだす」を体現されている方でした。TOECのプログラムで、無人島キャンプというのがあり、必要なものを船に積んで沖縄の無人島へ渡るんです。朝にミーティングをして、今日何をしたいかと伝え合うんですが、それ以外はフリー。ずっと本を読んでいてもいいし、お酒を飲んでいてもいい。私が参加させてもらった時には、がんを患っている方がいらっしゃって、その方が「話したいんだけど」って。すると自然な流れで、近くの人が輪になって語らいの場が生まれていくんですよね。ちょっと何かがあると、ファシリテートしてないように見せて、ファシリテートしてる。それがすごいなあって、心にのこっています。


> #05に続く
「著書『ソーシャル・ファシリテーション』と、ちびまりさんの、この先。」

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(まるもの一言)
今回の記事の中でも紹介されている「ソーシャル・ファシリテーション」。人々の間に「相互の支えあいの関係」を育み、社会的課題の解決を支援・促進するアプローチの実践的手引きです。インタビューでは聞けなかった、地域づくり、災害復興などにおける他の事例もたくさん収録されています。気になった方は、ぜひお買い求めください!

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