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36歳独身純潔、生まれて初めてビキニを買いに行く。

自分で言うのも何だが、学生時代の私は『勉強が出来る問題児』だった。宿題をしないのは当たり前、廊下に立たされるのも当たり前、げんこつを食らうのも当たり前、だがテストの点数は高く、読書感想文は書かないが作文だけは何度も賞をいただいた。中学3年生の時には3学期に突如教室に行けなくなり、毎日のように教室に来るよう冷めた目で言いに来る担任の教師を期末テストの成績でいい意味で黙らせた。そんな私がもうすぐVRChat上とはいえ教壇に立つ日が来るのだから驚きだ。

今日は、そんな私が最も頑なに教師に対して拒み続けた授業とその理由、そして今年私が挑戦したこと、今後自分に対して望むことについて書いていこうと思う。
最初に言わせてほしい。この記事の内容は相当生々しいものであるということを。そして、前置きが非常に長くなるということも。

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避けて通れない授業・水泳

結論から言おう。私は水泳の授業が心底嫌いだった。理由を次に挙げる。
・低体重で産まれたことによる体質面での太りやすさ
・母親から「太っている」と言われ続けて育ったこと
・外見を理由にいじめの標的となりやすかったこと
・中学1年生時の家庭環境の影響によるドカ食いで20kg太ったこと
・ムダ毛の処理の仕方を誰にも教われなかったこと
・ゆとりのない水着と、それを着ることによる周囲からの視線

現在は多様性の重視やジェンダーによる不平等を無くすため、Tシャツにハーフパンツのような形の水着が導入され、男女どちらもほぼ同じものを着られるようになってきているとどこかで読んだが、欲を言えばあと30年早くそんな時代になってほしかったと、少なくとも水泳に関しては思う。第二次性徴期により水着や薄着に対して悩みを持つようになる子供は今も昔も多いはずだ。
小学生の時は何とかクラスメイトに混じって授業を受けられていた。元々運動神経が悪かった私が、母の「水泳大会で25m泳ぎ切れたら欲しいおもちゃ買ってやる」という一言で火がつき、実際に校内水泳大会で犬かきをしながら25mを泳ぎきったことをはっきり覚えている。
しかし、中学校に進学してから脇に毛が生えてきた時、私は誰を頼ればいいのか分からなかった。時期的に母親のことを信用できなくなり始めていたのもあったし、保健室の先生を頼るという選択肢があることは成人して何年も経ってから知った。更にそこからストレスによるドカ食いで一気に二型肥満体型になってしまったものだから、羞恥で水着なんてものは着られなくなってしまったのだ。
↓母親との件について、詳しくはこちらを読んでもらいたい。余談だが、20歳で再度激太りした後、一念発起して減量をしている今の私は中学2年生の頃より痩せている。

地獄だったのは、進学した高校の体育に特殊なルールが設けられていたことだった。これは入学後に知ったため毎年非常に困った。何と、女子生徒は一定回数以上プールの授業を見学すると、1時間につき決められた距離を放課後の補修日に泳がなければならなかったのだ。男子生徒は一度でも見学すればこの補修を受けることになる。これはつまり、人前で水着になることから逃げられないということ。
1年生の時、私の補修を受け持ったのは私の担任だった。同級生、先輩、誰からも水着姿を見られたくなかった私は、補習の日程や時間についてかなり『交渉』した。言い換えれば『逆らった』ということになるだろう。それに対して彼は「俺は教師だぞ!」と怒鳴り散らした。
2年生の時、私の補習を受け持った体育教師は、校内で最も怖い女性教師として有名だった。補習日当日に月経になってしまったことを告げに行った私に、彼女は「証拠は?」と言い放った。あの時は黙り込んでしまったが、大人になった今なら言える、「今この場でパンツを脱いで見せればいいですか?」と。もし仮にそれが現実になっていたら、全国ニュースどころの話ではなかっただろう。
3年生になり、ようやくある程度配慮をしてくれる先生に出会えた。補習の日には必ず一着着替えを持参し、トイレの中で服の下に水着を着用し、そのまま入水した。プールの中に首まで浸かり、水に濡れた服を脱いでプールサイドに置けば、少なくとも行き違いで補習を終えた同級生や後輩に体を見られることはない。それでも、いじめっ子気質のクラスメイトにその姿を遠巻きに笑われたことは今でも忘れられない。

そんなこんなで、私は様々な理由から『人前で水着になること』も、『人前で肌を露わにすること』も出来なくなってしまったのだ。

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躊躇なく水着が着られる場所がある

ご存じの方もいるとは思うが、私は26歳で歩行困難となり、バリアフリーの観点から『泳ぐ』という行為そのものが自宅近辺では出来なくなってしまった。
だが、そんな私にも泳げる場所がある事に気付いた…そう、私の大好きな仮想空間・メタバースだ。
幸い、最近私にはお気に入りの女の子アバターが出来た。久さんのGrusちゃんだ。

体系に凹凸が少なく、センシティブな用途での使用が禁止されていることもあって布面積多めの服が多く、前述の理由も併せてトラブルから身を守りやすい。元々生身の肉体とアバターとの結びつきが強い私にとって、改変を通して愛着が湧いたGrusちゃんに水着を着せてビーチに行くことは、実質自分が水着で歩くのと同じようなものなのだ。

まずそもそも「水着を買おう!」と思ったきっかけから話したい。
私は2月まで私立VRC学園の14期生として通学をしていた身だ。そう、今度私が講師として教壇に立つ、ひとつの大きなユーザーイベントである。
ある日、クラスメイトだったフレンドが複数人同じワールドで遊んでいるのを見かけ、既にXでポストされていたものの講師として採用されたことを直接報告したかったのもあり、寝る前に久しぶりに会いに行ったところから話は始まる。
私を誘導しに入口まで来てくれたフレンドは、ビキニを着て跳ねていた。
「流れるプールで遊んでるからおいでよ!」
そう言って、他の皆のもとへと連れて行ってくれた。着衣泳になってしまうと躊躇う私に、気にしなくていいんだよと皆は言ってくれたが、フレンドの中で水着や夏服を着ていなかったのは私だけだったような記憶がある。間違ってたらごめん。とにかくそれを見て、更に流れるプールの存在と楽しさを知ったことにより、「VRChatでなら水着が着られる!せっかくなんだからリアルでとても着られないビキニを買ってみたい!」という思考に至ったのだ。Second Lifeもプレイしているが、あちらはグラフィックがリアルであるが故に薄着がかえって恥ずかしいと思ってしまう。だが、アニメ寄りのVRChatならば…と。

では、実際にビキニを探してどうだったのか。
結論から言うと、買えなかった。

ひたすらBoothを漁り、前から見て「好みだな、欲しいな」と思ったものであっても、背面を見てどうしても「お尻のお肉がはみ出過ぎじゃないか!?こんなの恥ずかしくて穿ける気がしない!」と却下してしまう自分がいた。いや分かっている、分かってはいるのだ、それらのデザインが『普通』で『当たり前』であることは。夏にニュース番組を見る機会があれば、年に一度はああいう後ろ姿をしたビキニの女性を目にするのだから。ただ、その一般的な人達が思う『普通』が、私にとっては『普通』ではなかった。
水着を着ることは前提とした上で、私はしばらくBoothとの睨み合いを続けた。「自分でモデリングするのが早いよ」とアドバイスを貰ったこともあったが、結局重い腰が上がらないまま悩み続けてしまった。
そして、やっと見つけたのがこれだ。

ここまで読んでくれている親切な方たちの言いたいことは分かる。そう、これはビキニではない。恐らくタンキニやビスチェといった呼ばれ方をするものだと思う。今の私にはこれが限界だった。だが、この商品を見つけた際の私のテンションの上がりようは凄かった。「お尻が全く見えない!でもリアルで出したことのないお腹が空いてる!鎖骨周りも腕も全部見せられる!可愛い!これにします!!」をもっとうるさくした感じで、脳内はさながらお祭り状態だったのだから。

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生まれて初めて『自主的に』着た水着

ここまでの過程とアバター改変とを経て、私は再度流れるプールのワールドに立った。そして、何の躊躇いもなく水着に着替えた。水着になることがこんなにも楽しいと思えたのは生まれて初めてだ。
自分の水着姿を写真に収めてSNSに投稿するなんていう、インスタグラマーのようなキラキラした界隈と同じことが自分にも出来ている、それがとても嬉しかった。

生物学的に男性であるユーザーが、VRChat上で女性アバターを使うこと、その逆のパターン、様々なケースを様々な場所で見てきたが、『現実世界で出来ないことをメタバースで叶える』という目的で言うと、私の「人目を気にせず水着を着る」という夢もそれらと同じようなものだと思う。現実ではハードルが高いからこそ、みんなMMORPGやメタバースでピンクを着るし、髪型も髪色も、姿さえもコロコロと変えるのだ。
ルールやマナーはしっかりと守られるべきだが、皆が好きなものを着て、好きな姿で別世界での生活を謳歌できる場所が、当たり前に在り続けてほしいと願っている。

ちなみに、勇気が出ず買えなかったビキニも、数着スキ!リストに入れたままにしてある。いつか、皆にとっての『普通』と私の中のそれが近くなってきた時に、堂々と購入ボタンを押せるように。
私が次に目指すのは、『一般的なビキニを着て人前に出られるようになる』こと。堂々と当たり前の事ができる人間に、いつかなりたい。

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【使用ワールド】
Quiet room / baklnsoda
AQUA HEAVEN - Waterpark Pool / Nekoro

【感謝】
あの日プールで遊んでいてくれた14-5の仲間たち

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