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「好き」が届いたら

どうやらわたしは、好きなものへの愛を語らせたら頭ひとつ出る存在のようだ。


中学生だった。とあるJUNONボーイ(以下、Aくんとする)に夢中で、読者プレゼントの応募に精を出していた。
読者アンケートを兼ねたハガキで応募する形式で、タレント直筆のサインや絵が描かれた日用品が景品になっている。淡々とアンケートに答えてポストに投函することを2〜3回繰り返した。
ふと「こんなに淡白なハガキでは数多の応募者の中から選んでもらえない、いや、目にも留めてもらえないのでは?」と思い立ち、戦略を変更することに決めた。

その月の景品はハンカチだった。愛するAくん直筆ハンカチを絶対絶対絶対手に入れたくて、すべての回答をAくんに結びつける。欄外にもAくんへの愛を書きつらねてみる。
文字とハートだらけになったハガキを祈るようにポストに投函した。
私の視線で誌面に穴が開いてしまうのではと心配になるほどAくんの寝顔特集を熟読しては、Aくん直筆ハンカチに思いを馳せる日々。やがて次号が発売され、今月も落選してしまった……次こそもっともっと本気を出すぞ!と息巻いていた日に事件は起こった。

部活を終えて帰宅すると「なんとかって方から電話きてるわよ!今すぐかわって!」と母親が叫んでいる。なんとかって誰だよと思いながら電話に出る。

「わたくし、主婦と生活社の〇〇といいます。このたびは、JUNONのプレゼント企画にご応募いただき、ありがとうございました。Aさんのハンカチが当選いたしました!おめでとうございます!」

え????え????
えーーーーーー!!!!!!!!!!!

当選理由を聞くと「応募者のなかで一番Aさんが好きそうだったから」とのこと。定型分のような対応かもしれないけど、自分の「好き」がだれかに届いたことが嬉しかった。熱心に応募しておきながら、雑誌のプレゼント企画が自分に当選するなんて夢にも思わなかったのだ。
好きなものを「好き」と言うことの楽しさと、「好き」がだれかの目に留まることの嬉しさを、このとき初めて知った。

なにかを大切に思う気持ちが、行く先を照らすことがあるのだと、かれらを見ていると実感される。あまりにも無邪気すぎる考えかもしれないが、現にシロイヌナズナの研究に打ち込み、そこに楽しさを感じている本村としては、趣味でも仕事でもひとでもいい、愛を傾けられる対象があることこそが、人間を支えるのではないかと思えてならないのだった。
三浦しをん『愛なき世界(上)』P.289-290


最近では、愛してやまないカレルチャペック紅茶店のプレゼントキャンペーンに当選した。当選者10名という狭き門にもかかわらず、だ。アンケートにカレルチャペック紅茶店への愛を熱心にしたためたのが功を奏したのかもしれない。アンケート、ばっちこい!

夢中になれるものがある生活は楽しい。好きなものを大切にし、好きなものへの愛を高らかに叫びながら生きていきたい。


📕三浦しをん『愛なき世界』
好きなものについて「知りたい」という気持ちに心を突き動かされる人々の物語。
好きなものについて語らう相手がいることは幸せだ。同じものを好きじゃなくても、たがいの好きなものを通じて心を通わせあう関係に憧れを感じた。

🫖ルピシア「カシュカシュ」
季節限定の紅茶☃️
「かくれんぼ」という意味の名の通り、いろんなフルーツの香りが顔を出します。これはなんだろう…ベリー系の甘い香りもしますし、酸味のある香りも感じられます😋

↑カレルチャペック紅茶店のプレゼントキャンペーンの当選商品。かわいいかわいいかわいい!!

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