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「計画」と「偶然」と。

少しの湿度を含んだ空気が流れはじめる5月中旬。

波佐見町のとある山の中にひっそりと佇む制作スペースにて、DELTAさんの作品制作が行われていたのでした。

今回、DELTAさんが制作するのは<TILE><VASE><TOY>。それぞれの制作の様子を写真とともにご紹介します!

<TILE>

やきものの型や、やきものを彫るときに使う道具などがたくさん置いてあるアトリエ。

落ち着いた空間の中で茶香炉をたきながら、最初に取りかかるタイルのスケッチに描き足したり、消したり、また描いたりを繰り返しています。

まだ柔らかい状態の「生地」に下書きをし、彫っていきます。

まだ柔らかいとは言えども、繊細なもの。彫りが深すぎると焼き上がりのときに割れてしまいます。そのため、タイルに触れるときはかなり慎重になってしまうのです。

音楽、午後の紅茶、そして抹茶チョコレートがその日のDELTAさんのお供。

iphoneからはJAZZやエレクトロが流れ、ときどき音に合わせて靴音が聴こえてくることも。

オランダ語でしょうか?たまにDELTAさんのひとりごとも聞こえてきます。

制作は日が暮れるまで行われました。

彫り終えたタイルがこちら!タイルには「IF ELSE THEN GO」という文字が。この文字はDELTAさんが得意とするプログラミング言語に関係があるそう。

このタイルは2か月半ほど乾燥させる必要があるため、ここからはDELTAさんのイメージのもと匡平さんと波佐見の職人さんたちが作業を進めていきます。

HASAMIを作っていただいている光春窯さんへ。タイルに使う釉薬はどの色が合うのか、どのような焼き方がよいのかなど、何度も話し合います。

完成したタイルがこちら!DELTAさんが彫ったあとが釉薬の下からうっすらと見え、美しい呉須の濃淡を生み出しています。

※写真にもあるようにこのタイル、実は4つに割れているのです。2か月半の乾燥で生地はどんどん水分を失い生地は収縮します。その収縮に生地が耐えられずヒビが入ってしまったというわけなのです。

<VASE & TOY>

ロボットをイメージして作られたVASEとTOY。お花を生ける花瓶として、TOYは一輪挿しとしてお部屋に飾りたいですね!

まっさらな生地に呉須絵具で着色していきます。

限られた本数の着色になるため、かなり緊張した面持ち。焼くことによって絵の具の色味は変化するため、焼いたらどうなるのかイメージしながら描く必要があります。

そのため、何度か試しにほかの生地に着色したり、匡平さんに相談したりしながら作業を進めていきます。DELTAさん、とても慎重です!

筆やスポンジなどさまざまな道具を使って、呉須絵具に変化を出していきます。

着色が終わったVASE。それぞれに個性があり、窯の中でどのように変化するのか楽しみですね~!

ここで焼きあがった作品の一部をご紹介!

こちらは「吹(ふき)」というタイトルのTOY。呉須絵具を吹き付けて出てくる青は、一度しか現れない模様であるがために儚さを感じさせる作品に。

窯から出てくるまで、誰もその姿を予想することができなかった「白溶岩(しろようがん)」という作品。予測不可能な釉薬のはがれ方は、「やきもの」だからこそ表現できた偶然の産物です。

曲がったラインを作品の中にあまり取り入れないDELTAさん。その作風からは、緻密な計画性が感じられていました。

しかし今回は「やきもの」という窯からあがるまで、作品の全容が見えてこない表現媒体を用いたことによって、「計画性」と「偶発性」がひとつの作品の中に共存するかたちに。

もう二度と生まれない作品たち。サラフチではほんの一部のご紹介となりましたが、今週末に原宿COMMONにて行われる【2018 MARUHIRO POP UP STORE & EXHIBITION in 原宿】ですべての作品を展示します!

DELTAさん、波佐見焼、マルヒロ、どれかひとつでも興味が湧いたらぜひCOMMONに足をお運びください!

【イベント詳細はマルヒロオンラインストアから!!!】

kakite : 衞藤

400年続く焼き物の町、長崎県波佐見町を拠点に、有限会社マルヒロが運営するカルチャーメディアです。 波佐見町のひと・こと・長崎についてなど、マルヒロから広がるつながりを、ときにまじめに、ときにゆるくお伝えしていきます。私たちを取り巻く日常を一緒に歩いてみませんか?