学童野球の存在目的を考える。
こんにちわ。
京都で小さな人材サービス会社を経営しながら、
週末は土日祝と朝から夕方までがっつり学童野球の監督をしています。
もはや本業が監督業となりつつあります。
ここ1カ月ほどはコロナショックの影響により満足いく活動はできなかったわけですが、ぼちぼち再開のめども立ち始めましたので、ちょっと学童野球について書いてみようと思います。
テーマはズバリ「学童野球の存在目的」です。
最初に僕個人のバックボーンをお伝えしておくと、
父親と兄二人が野球をやっていたこともあり、なんの抵抗もなく小学3年生から地元の学童チームに入りました。メチャメチャ弱く、試合で勝った記憶も、野球をちゃんと教わった記憶もありません。
中学では部活で軟式野球。
中学生の硬式のクラブチームがある事すらほとんど知らないような野球少年でした。今考えると、父親があまり息子の野球に熱心ではなかったといえます。
中学では一応キャプテンでショートで4番。高校では腰を痛めたりもあり、最後は3番ライトでした。強いチームではなかったですが、そこまで弱いチームでもなく、甲子園常連校相手でもそれなりにいい試合はできる。でも勝つまでいかない。そんなチームです。
高校2年生の夏までは野球に無我夢中でしたが、2年生の夏の大会で腰をやってしまい、最後の1年はリハビリしながら、合コンとかも行きながら、遊びを優先しつつ一応野球も引退までなんとかやりぬいた。
そんな10年間の野球人生でした。
大学以降はほとんど野球には見向きもせず、社会人になっても仕事にぞっこん。そんな僕が、息子の学童野球への入団をきっかけに大学や社会人で野球やっていたお父さんを押しのけて学童野球の監督を務めているわけで、不思議なもんです。
学童野球のよくある議論
学童野球チームは保護者がボランティアで運営しているチームがほとんどですので、様々な価値観がぶつかり合って色んな議論が起こります。
よくあるテーマとしては、
・学童野球にバントは必要なのか?
・上手い下級生と下手な上級生。どっちを試合で使うべきか?
・勝利をどこまで追求すべきか。
・球数問題。
などなどです。
球数問題は子どもの健康に関わることなので、ケガをしないように配慮することは正直当然なのですが、それ以外のテーマでは主張はかなり分かれてきます。
各御家庭の大切なお子さんをお預かりしてチーム運営をしていくうえで、チームとしてどう考えているのか。を明確に提示し、同意を得る事が必要となります。
いわゆるチームとしての「憲法」です。
ここで大事なのは、
「うちのチームはバントもしますよ。」
「勝ちにこだわりますよ。」
「うまい上級生を使いますよ。」
という細かい方針をお伝えするのではなく、何を目的にチーム運営するのか? というチームの存在目的、つまり「理念」をお伝えすることです。
学童野球に於ける「存在目的」=「理念」は、大雑把に分けると3つに分かれます。
❶ 野球を好きになってもらう。
❷ 野球人として成長してもらう。
❸ 人間として成長してもらう。
の3つです。
この3つの「理念」でチーム運営するとそれぞれどのような違いや特徴が出るのか?を説明していきます。
❶ 野球を好きになってもらうバージョン。
絶対に選手を叱らない。褒めまくる。試合の勝敗に一喜一憂しない。
子どもがノビノビと野球を楽しむ事に主眼を置くスタイルです。
当然バントもさせないし、上級生を優先的に試合で使います。
最近では筒香選手が「勝利至上主義」ではなく、「野球を楽しむ」事を大切にすべきだという主張がニュースになったり、このスタイルのチームが部員を多く集めているニュースが話題になっていたりします。
このテーマは野球人口の減少を嘆く文脈の中で語られることが多いです。
体罰あたりまえの中で野球人生を過ごしてきた保護者が指導者となり、
あたりまえのように試合中に罵声を飛ばしたり、怒鳴り散らしたりする事で、子ども達が野球が嫌になっていく。今の時代はそうではないだろう。という主張です。
これは一見すごく正しいのですが、目的が「野球人口を増やす」事に置かれている事に僕は違和感を感じます。
野球というスポーツを繁栄させるために、
野球人口の減少を食い止めるために、
子供たちに野球を好きになってもらおう。
これ実は全部大人の都合です。
もっと言えば、野球で飯を食っている大人の都合です。
学童野球をやっている子どもたちの中で、
野球で飯を食っていく子なんてほんの一握り。ひとつまみです。
この考え方のチームがあっても全然いいと思いますし、全く否定する気もないのですが、僕の価値観とは異なるので、この理念は採用しませんでした。
※とはいえ、褒めたり、良い部分を伸ばしたり、怒鳴らない等、子どもの やる気を引き出すことに重きを置くのは大賛成です。
❷ 野球人として成長してもらう。バージョン
この理念で運営されているチームが恐らく最も多いです。チームとしては人間的な成長を掲げてはいますが、指導者が野球ドップリの人生を送ってきていると、無意識のうちにこのスタイルに落ち着きます。
将来中学、高校、大学、社会人、プロの世界で活躍する選手を輩出する、いや、排出したい。という想いで指導に当たります。
この理念でチーム運営する事が、議論がぶつかりあう温床になります。
例えば、
将来活躍すればいいのだから、目の前の勝ちにこだわる必要はない。
VS
目の前の勝ちにこだわれない選手が、将来プロに行けるわけがない。
だったり、
学童の間はバントなどさせずに、フルスイングで三振でいいじゃないか。
VS
チームの勝利に貢献する喜び知り、自己犠牲の精神を植え付けるべきだ。
といった価値観が混在するわけです。
元ヤクルトの宮本氏主宰の学童野球大会では、バントは一切禁止されています。子どものうちはフルスイングが大事。というメッセージです。
どちらもゴールは、将来野球選手として活躍するためという目的は同じでも、今どうあるべきかの手段が異なるわけです。
冷静に考えると、
将来の活躍に重きを置くのであれば「目の前の勝利」はさほど重要ではなく、もちろんバントも不要、球数も投げさせない。が正解なのですが、
ここに指導者の「勝ちたい」欲が出てしまう為、いろんな面で矛盾が生じてきます。
「子どもの為」と「自分の欲」が混ざり合って、
言っている事とやってる事が違う。と保護者の不満が出てきたりします。
「指導者の欲」が「子どもの将来」を上回ると、
罵声を浴びせたり、人格否定する言葉を浴びせたり、ミスを罵倒したり、
将来役に立つはずがない、ずる賢いプレーを教えたり。
という指導にいきつきます。
将来高いレベルで野球を続けていくうえで、もっと厳しい指導や理不尽な事が出てくるから、今から乗り越えてほしい。という後付けの理由が成り立つのがこのスタイルの問題点です。
このスタイルの問題点も、ずっと野球をやってほしい。という大人側の欲が大前提となっている部分にあると個人的には思っています。
何よりも野球の練習優先。
保護者に対しても、子どもの野球の為に犠牲を払うことを当然のように強いる。保護者の温度差や、子どもの温度差が表面化して問題化する。
そんな弊害が起きやすいスタイルと言えますが、学童野球チームの恐らく9割はこのスタイルでの運営ではないかと思います。
❸ 人間として成長してもらう。バージョン
野球は一旦置いておいて、
人間として、将来社会に出て役に立つ経験や力を付けてもらう。
を最上段の目的に置くスタイルです。
僕個人は、ぶっちゃけるとそこまでの野球愛はなく
20代30代とどっぷり仕事してきた人間ですので、迷うことなくこの「理念」を採用しています。
様々な価値観を持つ保護者に異議なくチーム運営に納得いただくには、基本的にはここに落ち着きます。
将来社会に出て活躍してもらうために、
勝利を目指し、努力し、成し遂げる成功経験を積んでもらう。
あるいは、勝利を目指し、努力し、それでも成し遂げられない挫折体験を経験してもらい、挫折を乗り越える強さを身に着けてもらう。
チームの目的を達成するために、自分を犠牲にしてチームの勝利に貢献する喜びを味わってもらう。
年齢ではなく、実力が高くチームの勝利に貢献しうる人材を登用する。自分に機会が欲しければ実力をつけるためにガムシャラに努力する。
努力しても叶わないこともある。を知る。
適材適所、自分の強みを自覚し自分が活躍できる領域を自ら切り開く。
何かにガムシャラにのめり込む楽しさを経験する。
挨拶・礼儀・感謝の気持ち・時間を守る・道具を大事にする・仲間を労わる・チームで何かを成し遂げるetc
野球に限らず、人として生きていくうえで大切な事。を、
学童野球を通して経験し、学び、成長してもらうこと。
これが学童野球の存在目的であるべきだ。と僕は考えています。
その為に、
必要あれば思いっきり叱ることもありますし、
勝利するためにバントもしますし、
下手な上級生よりも上手い下級生を使います。
子どものやる気を引き出し、
もっと勝ちたい、もっと上手くなりたいという想いを引き出し、
その為の努力の方法を教えて、
ガムシャラに何かに打ち込む楽しさを知ってもらい、
成功体験や失敗体験を沢山積んでもらう。
それが学童野球の存在意義であり、
子ども達がガムシャラに野球に取り組める環境を用意すること、
想いを実現するための道を示してあげること、
成功を一緒になって喜ぶこと、
挫折を乗り越えるサポートをしてあげること、
自分で考えて行動できる癖をつけてもらうこと、
成長の邪魔をするものから体を張って守ること。
これが学童野球の監督の存在意義であると思うわけです。
圧倒的なスピードで成長して行く子どもたちを見て、
試合に勝って心の底から喜んで抱き合っている子どもたちを見て、
自分も負けてられんな。という想いで日々仕事に打ち込む。
そんなとても贅沢な時間を過ごさせてもらっている今日この頃です。
おわり
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