梅雨 6年ぶり

本州で梅雨を過ごすのは6年ぶりなんだな、と傘マークが並ぶ天気予報を見ながら思った。湿気をたっぷり含んだ生ぬるい大気は僕が覚えていたよりも遥かに重く、僕に纏わり付く。夜になれば数え切れないほどのカエルが鳴き、その大量の声が集まって一つの声に聞こえてくる。そうだそうだこれが梅雨だ。覚えているつもりだったけど、結構忘れていたみたいだ。この重い空気にすら、懐かしさを一瞬感じだ。すぐに嫌気がさしたけど。

せっかく地元に帰ってきているのに、あまり友人たちには声を掛けて会ってはいない。「これからどうするの?」と、逆に僕が知りたいような質問を投げかけられるのを恐れているのだと思う。また、友人と話をしていても、彼らは僕がゲイであることを知らないから核心的な会話には持っていけない。何を話しても上辺をなぞるだけになってしまう。

まだ自分がゲイだと自覚していなかった23歳まで、僕はもっと自信に溢れていたと思う。もっと吹っ切れていて、全力で体当たりができる感覚があった。ゲイだと気がつき自分を隠す必要があると知り、何をするにも自分をさらけ出さない方法を探してしまう。さらに年齢を重ね、周りのライフステージが変わっていく中で、同じステージに止まり続けている自分が惨めに思えてくることすらある。それは、カナダから帰ってきた今、開放的なカナダと抑圧的な日本とのギャップに、以前より重く僕にのし掛かる。

知り合いの店でアルバイトをした帰り、恋人の家へ寄った。「お疲れ様」と言いながら僕をハグしてくれた。いかに僕が手軽なアルバイトをしてこようと、彼は心の底から労ってくれる。彼の方が普段から明らかに多い業務量をこなしているはずけれど。

僕らのライフステージも、そろそろ次に進む頃だと思うんだ。


明日も天気予報は雨だね。