「やる気 あり美」

二か月くらい前に、車を運転しながらポッドキャストを聞いてみたくなった。ラジオみたいに、ニュースとか流行りの歌とかを聞くのではなく、ただただ、誰かが何かについて話しているのを聞き流しながら運転したくなった。

数回しか使ったことのないiphoneのポッドキャストを開いて(ずっとradikoを聞いてたけれど)、「そうだな、なんかゲイの人が面白く話しているのがあるといいな」と思って検索したら、引っかかったのが「そうだ、ゲイにカミングアウト」というものだった。なんだか、変なタイトルだなと思い、一回聞くのをやめようと思ったけれど、思い直して再生を押した。

このポッドキャストを配信していたのが、「やる気 あり美」という団体だった。ポッドキャストに寄せられた相談に、パーソナリティのゲイ男子&ストレート女子が雑談をしながら答えていくという番組で、正直面白かった。というか、けっこう車の中で笑った。

僕が今まで抱いていたゲイの世界のイメージというのは、肉欲的であったり、悲観的であったり、もしくは「社会的地位を向上しよう!差別をなくそう!」という運動であったり、あんまり楽しくなかった。何度も「ゲイに染まっていないね」と言われることがあったけれど、「僕は僕自身でしかないのに、染まるといわれても・・・というか、ゲイですけど。」と思っていた。

流れてくるポッドキャストは、まるで大学時代の友人の会話を聞いているような感じで、冗談を飛ばしあったり、話が脱線したり、でも真剣にリスナーの気持ちを汲み取ってアドバイスをしたり、安心して聞いていられた。

僕自身、ゲイと自覚してからいろんなモヤモヤを抱えていた。出会い系アプリを使うことや、ネットで知り合ったゲイの人と出会うことか、たくさんの後ろめたさみたいなものを感じていたけれど、いろんなことを肯定的に話をしてくれて、「あぁ、別に悪いことではないんだな」と、素直に受け止めることができた。ネットで人と知り合うなんて、すごいやましいことだと思ってたからなー。多分、僕は保守的なんですよね。

何話分ものポッドキャストを聞きながら、自分が抱え続けてきた後ろめたさがだんだん減っていき、僕自身が一人の人間として、「もっと気楽な気持ちで生きていかねば」と思えてくる。自分がゲイであることを重く受け止めすぎていたのかもしれない。いや、頭の中では「セクシャリティなんて、個性の一部分でしかないから、別にそんな大した事ないや」と考えていたつもりだったんだけれど、気持ちはそんなに理屈っぽくはなれなかったんだな。気持ちだから。

ポッドキャストを聞きながら、「あー、そのネタはゲイの人にしか通じんやろ笑」と、笑いながら、少しずつ、自分が軽くなるのを車の中で感じた。