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【エッセイ連載】橋はカカッタカナ | みちくさ文語 |文:佐藤仁@石垣島



石垣島はオリヒコフレンドリー

こんにちは。
今日は7月7日、七夕の日であり、月刊まーるの締め切りの日でもあります。

先月犯した失態の反省をカタチにすべく、いまは、自分の力で、今日中にこの文を書き上げるんだ!と、強い気持ちでPCと向き合っております。

七夕といえば、年に一回、織姫さんと彦星さん(以下、オリヒコ)が再会できる日だと言われています。

でも、内地では7月7日はだいたい、梅雨真っ只中。「オリヒコ、これじゃあ川を渡れない…かわいそう…」なんてセリフもよく聞かれました。

その点、石垣島はオリヒコフレンドリーな場所ですよね。毎年この時期にはすっかり梅雨が明けて、七夕に満点の星空をみられることも珍しくありません。
もしかしたら、オリヒコの二人は毎年、八重山の上空で、浮かれてかりゆしシャツでも着ながら、泡盛片手に、年に一度の再会を喜んでたりするんじゃないでしょうか。


七夕に雨が降っても橋がかかる

そんなことをぼんやり考えながら、せっかくだから、と、七夕のお話のあらすじをあらためて読んでみました。
そのクライマックスがこちら。

やがて待ちに待った7月7日の夜になると、おりひめとひこぼしは天の川をわたり一年に一度のデートを楽しみます。しかし、その日に雨が降ると川の水かさが増して川をわたることができません。
すると、どこからかカササギという鳥のむれがやってきて天の川のなかに翼をつらねて橋となり、ふたりを会わせてくれるのでした。

京都地主神社さんwebサイト

はい、七夕に雨が降ること、織り込み済みでした。たとえ毎年雨だとて、二人は橋を渡って再会する事ができるのでした!
「七夕の本拠地は八重山」説はここであえなく棄却されてしまったわけですが、オリヒコ的には、めでたしめでたし。


カタカナって、橋だなあ

そんな話を前置きに、今月は「カタカナ」の話を少しだけ、させていただこうと思います。七夕のお話を読み返していたら、過去に自分が「カタカナって、橋だなあ!」と感じたことを思い出したからです。

いきなり「カタカナは橋」だなんて言い出してごめんなさい。
意味不明だと思いますが、もう少しだけご辛抱ください。

日本語には漢字、ひらがな、カタカナ、場合によってはローマ字と、いくつもの記述方法があります。
その中で、あえてカタカナによる記述が選択されているシーンを思い起こしてみると、それは、「橋渡し」が必要な状況であるように思われるのです。

例えば、外来語。サッカー、スマートフォン、コンピュータといった外来語はほとんどの場合、カタカナによって記述されます。
外来語がカタカナで記述されている状態というのは、「外国語(アルファベットなど)」が「日本語(漢字、ひらがな)」になるための橋(カタカナ)を渡っているような状態なのかなあ、と思います。

こうしたカタカナのはたらきは、「未知(外国語)の既知(日本語)化」または「あちらからこちらへ」とでもいえそうです。
(橋を渡り切り、既知化された外国語は例えば「煙草」「珈琲」など、相応しい漢字が当てられ、すっかり日本語然とした佇まいを見せるようになります。)

真逆の例としては、漢字で書けばいいところを、あえてカタカナで書く場合。
CMやポスターなどで、「みんなのチカラを一つに!」や「君のミライをつくる」といったスローガンや、皮肉な感じで使われる「君のオトモダチ」。
こうしたカタカナのはたらきには「既知の未知化」という名前をつけてみたいと思います。「普段使っている言葉(既知)」だけど、「言葉通りじゃない意味(未知)」も含んでるよ、というような、「こちらからあちらへ」のはたらき。

上記二つともまた違った「こちらでもあちらでもない」なんてはたらきも、多分あります。
それは、ロボットや宇宙人のセリフをカタカナで書く場合。
「ワレワレハウチュウジンダ」というフレーズは、誰でも一度は声に出したことがあるのではないでしょうか。


橋はカカッタカナ

カタカナで書かれたセリフには、「この存在は、人間的な知性があるんだけど、人間とは何か、違うようだ。」と無条件に感じさせる力があります。
これは、ロボットや宇宙人を、人間側の岸にも非人間側の岸にも配置しきれずに、最初からどっちつかずの、橋の上に配置している状態と言えそうです。
先日、そうした「どっちつかず」の態度が、日本人の、AIに対する特殊な向き合い方を形作っているのではないか?というのを読んで、面白いなあ!と思ったのですが、それはまた今度にしましょう。
気になってくださった方は、もしよければ、みちくさ文庫におしゃべりしにきてくださいね。

あちらとこちらでも、未知と既知でも、自国と他国でも、私とあなたでも。
「橋がかかる」というのは、きっと、大きな希望です。

そんなわけで、今夜は天の川に、どんな橋がかかるでしょうか。

どんな橋がかかるといいのかなあ。
と考えながら、少し夜空を見上げてみようと思います。


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この記事を書いた人

佐藤仁(おしゃべりのデザイン/私立図書館)

1992年山梨生まれ、大阪育ち。
幼稚園時代の文集に書いた将来の夢は「サラリーマン」。大学卒業後その夢を叶えるも、3年経たぬうちに退職し、2017年に石垣島に移住。
現在は石垣島にて、名刺、ロゴ、コンセプト、しくみのデザインを仕事としつつ、Tシャツ屋『しろはら商店』、私立図書館『みちくさ文庫』を運営。<このコーナーの他の記事を読む>

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