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【ポエム連載】人×ことば×詩 vol.1|2023年4月号『結び目』|文と写真とポエム:洋々(詩人)



この企画は、石垣で活躍する詩人、洋々さんが、出会いの中で受け取った言葉をインスピレーションとして、詩を創作し、文と写真と共に配信する【ポエム連載】です。洋々さんの詩の世界と、石垣で紡がれる「縁」をお楽しみください。(月刊まーる編集部)


「ことば」は好きですか?

そう問われたら、なんと答えますか?では質問を変えて。好きな「言葉」は何ですか?こう問われたら、何と答えますか?前者と後者、答えやすいのは、どちらですか。

「ことば」
地球を満たす大気のように、当たり前にあるけれど、目に見えないもの。「ことば」という「言葉」は、それくらい曖昧なもの。例えて言うなら「存在」は好きですか?と問われても、質問に捉えどころが無さ過ぎて、返答に困ってしまいます。何の?誰の?何処の?何時の?そうやって条件を付加して初めて、私たちは「存在」を認識できる。

「ことば」も同じではないでしょうか。「ことば」は「想い」と繋がって、初めて熱をもつもの。それ単体では、記号と同じ。だけど「想い」には形がありません。水のように無形であり、川のように流れ、また留まり、海のように波風を立て、時に凪ぐ。そんな曖昧な「想い」だからこそ、意味や役割を厳密に形の決められてしまった「言葉」では、収まるはずもありません。「想い」を拾う旅だから、定型に押し込められた言葉ではなく、はみ出すほどに自由なことば探し。そこを大切に、文字に落とし込もうと考えています。

今回、寄稿させてもらうにあたり、指針を定めました。

人×ことば×詩

石垣島という土地に生きる人々。人が想いを持って放つことば。歴史も、足跡も、希望も、苦痛も。全てが下地に込められている言葉。詩は、それを丁寧に拾い上げて、ことばを媒介として伝えるための手段だと、私は捉えています。

想いの源泉は「人」
熱の仲介者になる「ことば」
世界の拡張を担う「詩」

それぞれが、この石垣島を舞台に掛け合い、重なり合ってゆく企画です。
1つ1つ、1人1人が織りあって広がる世界。
そんな場が、どうか広がりますように。

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『結び目』

石垣島の夕焼け

小さな手
大きな手
2つ重なった境界線

想いを包んで
繋がれた手と手

伸びた影は母が大きく
伸びる未来は娘が長く

ちぐはぐな時の流れ
繋いだ手だけが
輪郭を縁取る

丸く
丸く

急ぎ足の夕刻は
宵の口へと顔を変え
二人の影を融かしてゆく

境目が解けきった時
ふいに言葉がこぼれ落ちた

『お母さんは優しいから、天国に行けるね』

言葉より
声の柔らかさに
思わず
歩幅は緩くなる

少し遅くなった母を
導くように

幼い手から伝わる
優しい引力

伸びる影も
伸びゆく未来も
流れる時が
歩調を合わせることはない

だからこそ
繋ぎ目は
柔らかく暖かくも
固く鮮明に
解けぬ結び目に
成るのだろう

いつの日か
いつの日か

その結び目が
ふと手繰ったその時に
愛おしい
記憶の糸口になる日まで

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インスピレーションを受け取ったことば 
『おかあさんは優しいから天国に行けるね』by あすか
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(了)


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この記事のふろく

洋々さんのポエトリーラップ動画を見れます。

この記事を書いた人


洋々(詩人/作家/整体師)
1989年生まれ。『自由に表現できる心を』石垣島を拠点に活動中。PSJ2019年大会で、日本3位。KSJ2021年大会、名古屋大会優勝。静岡でポエトリーユニット『分水嶺』を結成。
現在石垣島で詩人として活動。言葉と身体を通じて、自由に表現ができる身体作り、それを指針に整体師として人と向き合う。子供たちの支援や、蕎麦屋の店長としても活動中。
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