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スミレにくちづけ

「ありがとね」 

 春一番、道端に咲くすみれの花を見つけるといつもそう呟いている。
 
私にとってスミレは小さな春の神様、どうしてこんなに惹かれるようになったのか分からないけど、スミレが静かに咲いているのを見つけた瞬間「ありがとう!」ってお礼を言いたくなるし、その姿を見れたことに幸せを感じるのです。

 私のスミレ好きは子供の頃からずっと。

夢みがちで理想が高くてさらに神経質。よくここまで陽気な大人になったなと自分で感心するくらい、とっても気難しかった幼少期の私。一見お友達と上手く遊んでいるようでも、いつでもいつでも自分の中ではしっくりこなくて、”友達と遊びまくって楽しかった!”っていう子供らしいカラっとした思い出は実は少ない…。
 
そんな子供時代に私が好きだったのは、ガラスの破片を太陽にかざしてその光をうっとり眺めたり、空き地の草花を食材に見立ててお弁当を作ったり…、そういうことが自分の理想とぴったり合致していて、子供ながらに”自分はこういうことが好きなんだ”と幸せに浸った感覚を今でもはっきりと覚えています。

 中でも好きだったのが春のスミレとの時間でした。

自分のスミレの観測ポイントをいくつか持っていて、春になるとそろそろ咲いたかな、と一人で行ってみるのです。人目を気にしながらもその小さなお花の側にしゃがんで、お花の一つ一つをうっとり眺めて…
これまた近くに誰もいないことを確認して思い切って地面に顔をつけてお花に口づけもしてました。子供の私がどうしてそんなことしようって思ったんだろう。今こんな子供を見かけたら私は胸が張り裂けますが(笑)、当時の私は”誰かに見られたらどうしよう!”って思いながら、それでもスミレにくちづけしたのでした。

スワ〜っとした静かな時間のなかで、「これが完璧」って思うような感覚。自分だけがこの綺麗さに触れられたような特別な気持ちに浸っていました。
 
 植物にくちづけ。

今でも街路樹にかわいい若葉を見つけたり、ベランダの植物に待望のお花が咲いた時なんか、私はくちづけしたくなります。(そして実際している…) 
「その美しさを見せてくれてありがとう」って気持ちが湧き上がるのと、植物が持つピュアなエネルギーを少し分けてもらえるような気がするから、なのかなと思う。
 植物達は口づけしてもらわなくても十分よって思ってるかも?ですけどね。でもやっぱり可愛い子供や動物に思わずキスしたくなるように、植物にも同じようにこの嬉しい気持ちをいっぱい伝えたくなっちゃう。

 春が始まって、今ちょうど可愛い植物たちの芽吹きがわんさかしていますね。季節はびっくりするくらい早く過ぎてしまうから、この小さな幸せを今年もいっぱい味わおう。

 そして気になられた方(いる?)、植物にくちづけするの、幸せですよ。お試しくださいませ。


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