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考古学では「文化」を違った意味で使う

高校の世界史の教科書を読み返しているけど、とまどうことがある。
考古学では、「文化」という言葉を「精神的なもの」ではなく、「時代」という意味で使う。なのに教科書では、考古学での使い方を説明しないのだ。

箸を使って食べたり、家に入るときに履き物を脱ぐのは、日本の「文化」。「文化」とは、特定の集団で共有される「習慣・思想・言語など、精神的な現れから生まれるもの」だ。

ところが、「そう思って」読んでいると、高校の世界史の教科書は分からなくなる。

多くの高校では、山川出版の教科書が使われている。そんな『詳説世界史』第1章は「文明の成立と古代文明の特質」なんだけど……

・シュメール文明
・アッカド文明
・バビロニア文明
・アッシリア文明

「4つ」ある「メソポタミア文明」のうち、シュメール文明だけをとりあげてシュメール「文化」と、言い換えている。なぜなんだろう。

中華文明の記述は、読む者をさらに混乱させる。
「中華文明」の説明が全くないのに、いきなり「仰韶(ぎょうしょう)文化」「竜山(りゅうざん)文化」と言われても訳が分からない。

考古学では、住居跡などの「遺構」と出土した「遺物」から、過去のようすを理解しようとする。

考古学での「文化」とは、一定の時期に特定の地域で、共通性のある遺構や遺物が見つかることをいう。考古学でいう「○○文化」とは、「○○時代」なのだ。

また「○○文化」の「○○」は、遺跡(遺構・遺物)が発見された「地名」が使われる場合が多い。「特定の地域で」共通性のある遺構や遺物が見つかるからだ。

「シュメール」は、メソポタミア最南部の地名。「仰韶(ぎょうしょう)」「竜山(りゅうざん)」は、遺跡名だ。

メソポタミア文明は、シュメールの地から始まった。教科書のいう「シュメール文化」は、メソポタミア文明の「シュメール時代」という意味かもしれない。

「仰韶(ぎょうしょう)文化」「竜山(りゅうざん)文化」は、中華文明の初期を表現している。「仰韶(ぎょうしょう)期」とか「竜山(りゅうざん)期」と読み替えればいい。

「文化」という言葉を歴史学と考古学では違った使い方をする。どうして、教科書は違いを説明しないのだろう。

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