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子育ての「勝負どころ」

テニスの上手い人が、試合で強いとは限らない。試合時間の長さに関係なく、終わってみれば分かる「勝負どころ」のゲームがある。

子育ては勝負事ではないから、勝ち負けはない。だけど「勝負どころ」のような場面は、あると思う。

息子が幼稚園の「年中さん」に上がったとき、ぼくは彼をスイミングスクールに通わせた。親として、子どもに「泳ぎを身につけさせる」のは必要だと思ったからだ。

プールで活発に動いている息子の姿を見て「スクールになじんでいる」感じがした。コーチも、いい人たちだった。

ある日、プールに行くことに、息子が泣いて抵抗したことがあった。何か「理由」があったと思う。けれども、彼が「理由」を話してくれることはなかった。

そのとき……
ぼくの頭の中でハッキリ「今が勝負どころだ!」と、切羽詰まった声がした。

「無理をすると、泳ぎが嫌いになります!」
コーチの制止は当然だと、今でも思う。けれども、ぼくはコーチの制止を振り切って、息子を送り出した。彼は、泣く泣くプールに向かっていった。

正直「これでよかったのか?」と、迷っていた。
「泳ぎがキライになってトラウマになり、親子関係にヒビが入ったらどうしよう」と、ビビっていたのだ。

ところがプールから戻ってきた息子は「さっきの抵抗は何だったの?」という上機嫌。その後、中学では水泳部に入り、成人しても水泳を好んでいる。

あのとき……
なぜ、プールに行くのをイヤがったのか。ぼくは、まだ「理由」を息子に聞いていない。

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