田舎育ちの兄が、東京生まれ東京育ちの美人を嫁にもらった話。田舎とは…
今日は3つ歳の離れた兄のことを書こうと思います。
北関東の片田舎で育った私たち兄妹。
コンビニやスーパーはそこそこあります。
昔は商店街が盛えていましたが、今はシャッター通り。外が暗くなると人なんて歩いていません。
近くても遠くても、どこかに行くときは基本的に車で移動は当たり前、田舎の特権のようなものです…
私が小さい頃は、国道を暴走族が旭日旗を背負い、何十台ものバイクが爆速パレードしていました。
私が育った田舎の昭和60年代はそんなの日常茶飯事で、夜7時とか8時のゴールデンタイムに暴走族が突っ走る、
そんな時代でした。
妹の私が言うのも何ですが、兄は美人な母親似で顔とスタイルが良く、サッカーをやっていて陽気なキャラだったので学生時代はそれなりにモテていました。
私が小学校に入学した時、兄のクラスの女子たちが
「〇〇の妹どこーー!?」と、
妹の私をわざわざ見に来たり…恥ずかしい…
小さい頃は文句の言い合い、殴り合い。
どこの家庭でもある兄妹喧嘩をよくしました。
兄は地元の高校を卒業すると、デザインの専門学校に進学のするため上京しました。
兄にとっては田舎が退屈だったのでしょうね…
田舎なんかつまらない、クソくらえだオーラを常に放っていましたから…
兄はお別れの挨拶もなく、いつの間にか家から姿が見えなくなっていて、あれ?もう行ったのか…
(まあ、別にいいや…そのうち帰ってくるでしょ)
帰省する度に兄の垢抜けは度はグレードアップしていきます。帰って来る度に髪の毛の色が違う、赤になったり緑になったり、真っ白になったり。
でもそれが似合っているんです、悔しいけれど…
(いいな、元がお洒落な顔している人って)
「女なんだから可愛い服着ろよー、何だよその服!」「ちょ、お前太ったなー痩せろよー」
(う•る•さ•い!もう帰ってくるな!!)
(都会のステキ女子と比べないでくれよ…)
正直なところ、自由にやりたいことを見つけて、東京に染まっていく兄が羨ましくもあったんです…
当時の兄は自信に満ち溢れキラキラ輝いていました。
(東京って人を変えてくれる?そんなに良い場所?)
時は流れ……
兄が35歳の時、結婚するから彼女を連れて帰ると母に連絡が入りました。
どんな人か聞くと、東京生まれの10歳も年下の方だというから、さあー大変!
田舎者たちは大慌てです!!
訪れる前日までに実家の大掃除、この際だからカーペットも新調して、何だかんだ忙しく動いていました。
兄と彼女が帰省する日。
最寄駅まで車で迎えに行きました。
彼女の第一印象は、スラッとした品のある美人さん、アパレルの仕事をしているそうです。
とってもいい香りがしました。
(大丈夫かな、私…田舎臭いのバレバレかな…)
(土の匂いがするとか言われたら最悪だな…)
兄の彼女にクスクス笑われないよう、一生懸命訛りを隠し、普段はあまり話さないけど仲良し兄妹っぷりを発揮、良き妹を演じます。
父のお墓前りをしてから、地元民に愛されている有名な中華飯店にご案内、精一杯のおもてなしをしました。
母もやっと兄が身を固めることに喜んでいたし、私も自由人の兄がやっと落ち着くことに安堵していました。
兄はこのまま東京に住み続け、田舎にはもう戻ってこないと話していました。
家族はそんなことずっと前から分かっています、兄に家を継いで欲しいなんて思っていません。
田舎に戻ってきても仕事は限られる、何より退屈に感じるでしょう、娯楽も少ないんだし…
田舎なんてたまに来るからいいってもんだよ。
数ヶ月後。
東京で親同士の顔合わせをすることになりました。
母と私、生後半年の娘を連れて待ち合わせの浅草へ特急電車で向かいました。
久しぶりの東京です!
結婚する前、職場の同僚に誘われて『アメトーク』の番組観覧に六本木へ出向いた以来!?の東京!
初めて見るスカイツリーに歓喜し、浅草なんてほぼ観光客だろうに、すれ違う人々全てが芸能人かのような錯覚に陥りました。
“あっ、でも芸人のノンスタイルがいましたけどね”
(歩いているだけだけど、飽きない街だな〜〜)
少し歩いて、兄が予約していたお寿司屋さんに着きました。心拍数も上がります…
個室に案内され、約束の時間より15分前でしたが、既に奥の方にご両親と彼女が座っておられました。
ご両親もとても気さくな方で、この親にこの娘ありという感じです。素敵なご家族で安心しました。
お父様は公務員、お母様は某有名デパートで働いていらっしゃるそうで、動物を非常に愛されているご家族、自宅にうさぎと犬猫を飼っていると話していました。
話は盛り上がり、みんなで街ブラをして帰りました。
とても久しぶりの東京。散策もして美味しい物もたくさん食べられたし、地元とは違う空気も味わうことができ、緊張したけど楽しいひとときでした。
兄は結婚してからお嫁さんと一緒に実家に帰省することが多くなりました。
お嫁さんも母を気にかけてくれて嬉しい限りです。
それから兄にも子供が生まれ、春夏秋冬田舎の四季折々を楽しむためによく遊びにきてくれます。
私の子供たちも従兄弟に会えるのを楽しみにしています。
兄は言う。
「家庭を持つまで田舎の良さがわからなかった」
それでいいと思う…
当たり前に住んでいる私だって、この土地が自分にあっかいるのかよくわからないから。
住めば都って言うけど、みんなが皆んなそうとは限らないじゃない??
兄はひとり暮らしの母を心配している。
(大丈夫。近くにいる私が母を最期まで面倒みるよ)
こういうことは照れ臭くて兄にはまだ言えていない…
いつかコロナが落ち着き、兄が田舎に帰省したとき
今度はそう言ってみよう。
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