最近の記事

共感の宝石

傷ついた心は、高値の付く宝石 伝えるすべを持つ者たちが 言葉や音、像に乗せて ショーウィンドーに飾る 傷ついた心は、ため込まれた負債 精算できぬ者たちが なけなしの硬貨と引き換えに 誰かの涙を固めて出来た、宝石を買う 人目のない場所で その宝石を懐からそっと取り出す 石はキラキラと光っている 拾われた猫が、喉を鳴らすように その宝石の 磨かれた面の一つ一つに 己の顔を映し見る そこには、経験の爪痕が 無残な傷となって刻まれている その宝石を そっとあてる 叫びをこら

    • ガラス越しの世界#3 ジャパニーズ・ハウスの魅力

      Wikipediaによると、イギリスの25歳の女性シンガーソングライター、アンバー・ベインによるソロプロジェクト名が、`ジャパニーズ・ハウス`である。 僕は外出するときは大抵歩く。ただ歩いているだけでは退屈なので、音楽を聴いているのだけど、最近この`ジャパニーズハウス`にはまっている。 この人を知ったきっかけはネットサーフィンで、youtubeのお勧めに上がってきたのを何気なく聴いた時だった。90.9bridgeという米カンサス州のラジオ局の動画で、青いフェンダー・ストラ

      • ガラス越しの世界 #2  部屋が鳴いている

        部屋が鳴いている、と書くと、気取った言い回しだなあ、と思われそうだけど、本当に鳴いているのだ。壁に触ると、細かい震えが手に伝わってくる。どうも水道管が鳴動しているらしい、ということがここ数か月で解ってきた。ブーン、がたがた。水道を使うたびにそんな唸りが壁の奥から低く伝わってくる。フローリングの床に座っていても、尻にまで振動が伝わってくるほどだ。 僕が住む1Kのマンションは、四角いタイルに覆われた五階建ての軽量鉄骨だ。タイルは白くつやつやしていて、建物の飾り気のない武骨な外観

        • ガラス越しの世界 #1

          これは日記のようなものだが、出来事を時系列に並べていくという書き方はしない。僕の思考はしょっちゅう横道にそれる。連想という寄り道をしているうちに、当初の目的地がどこだったのかさえ思い出せない、あるいは、覚えてはいても関心をなくしている、ということはよくある。 物語を最後まで読み終えることのできない読者のように、僕は自分の始めたことを最後までやり切るのが苦手だ。病気なのかもしれない。でも、正式な診断を受けたことはない。理由は、精神医学が怖いからでも、見下しているからでもな

        共感の宝石

          あったら怖い ♯1

            元来、僕は怖がりな性分なのだけど、例えば、シャワーを浴びていて、目をつぶるのが怖い。うん、チキンにも程があるのはわかっている。  我が家のユニットバスは狭い。築40年以上は経つ、6畳一間のアパートだ。貧乏人の一人暮らしには丁度いい。ユニットバスとは、まあ、風呂とトイレ、それに洗面台が一か所に押し込まれたスペースな訳だ。入居当初は、バスタブとトイレを区切るシャワーカーテンがあったが、邪魔臭いので取っ払ってしまっている。冬場などは、やせっぽちの身体を寒さに震わせながら、シ

          あったら怖い ♯1