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とうてつ「スリープカントリー・良夜」を読む

現代詩手帖2019.10号掲載のとうてつさんの詩「スリープカントリー・良夜」は面白くかつ官能的。

寝入りばなに夢とも思念ともつかない、自分が考えているのか、脳が発火するのを見ているだけなのか分からない、不分明な体験をすることがあるが、その状態に似た読書体験。

文章の時間軸と共鳴で繋がる時間軸がある。
「よわっていく輪郭」のために「ふえる事」が“ふるえる事”や“ふやける事”と何度も誤読してしまう。それ自体がふえる事ふるえる事ふやける事そのものとなってぶよぶよの水を見る心地がする。

「水曜日」から「水は恋しい」で水のイメージを形成し、「原稿用紙」の輪郭のしっかりした印象から、夢のような文法で「舟だったひと」につながって水面のイメージになって揺れる。プールの底のラインのような二面性をもった原稿用紙になる。

他の行でもリンクし合っている言葉がいくつかあり、文章の時間とは別の時間を作っている。私には文章が形成する時間は肌のように、言葉のリンクがつくる時間は他人の指や手のように感じる。

読者として私は、この肌としての文章の時間を自らのように感じながら、時々ふいに手指としての韻律に触られる。

一見なにが語られているのか分からない文章は、肌理そのものとして視覚的な印象を受ける。それは“肌一般”ではなく他のどの肌でもない“この肌”としてリアルなものだ。

2019.10.05のツイートより

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