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『コントが始まる』(#1〜5) にコロサレル!

※ 6話以降のレビューは下記ページより更新中!


数年前に『俺の話は長い』という生田斗真主演の、後に向田邦子賞を受賞する、素晴らしいテレビドラマがあった。
社会の荒波に膝をついてしまった青年の緩やかで独特な、でも確かな復活劇に涙した事を今でも覚えている。
このドラマの脚本を書いていたのが金子茂樹『プロポーズ大作戦』 『今日は会社休みます。』 『世界一難しい恋』 『ボク、運命の人です』などの脚本も手掛ける売れっ子脚本家であり、彼が今回オリジナルで書いた作品がこの『コントが始まる』。

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売れないコントトリオ“マクベス”(菅田将暉仲野太賀神木隆之介)のコントからドラマは始まり、そのコントが伏線になり、マクベスを見守るファミレスのアルバイト(有村架純)とその妹(古川琴音)を巻き込む5人の物語へと繋がっていく、という新しい形のテレビドラマ。
思えば彼は『俺の話は長い』でも1時間の放送枠に2つの異なる話を入れる、いわゆる“サザエさん方式”をドラマでチャレンジしていた。
常に新しいテレビドラマの形に挑戦する金子茂樹。
なので今回は私も新しいチャレンジとして毎話見るごとに毎週(できるだけ)感想を更新して行きたいと思います。
3ヶ月間、5人の人生の大いなる“前フリ”を見届けていきたいと思いますので、皆さまもお付き合いいただければ幸いです。

※ 盛大にネタバレを含みますのでご注意ください!

イントロダクション。

『人生』とは壮大な…『コント(喜劇)』である!?
4月。土曜よる10時。
時計がその時を刻むと、このドラマは毎話、一本の『ショートコント』から幕を開ける。
それはある売れないトリオによる、取り留めのないショートコント……。
しかし実はそのコント、
ーー後に起きる53分の物語の○○○だった!!
本日、夢を諦め解散を決意した『コント師』の3人の男たち
数年勤めた一流会社をドロップアウトし、抜け殻のようになった姉
そんな姉の世話を言い訳に目標もなく夜の街で働く妹
20代後半。
誰もが指差す『大敗』のド渦中にいる男女5人。
ーーだがそれは煌めく未来への大いなる『前フリ』なのかもしれない!?
さぁ笑って泣いて、俯いた
『前フリ』回収する群像劇が始まる!!

ー公式HPより抜粋

#1 コント『水のトラブル』

近年アメリカ映画でキーポイントとなる飲み物といえば“オレンジジュース”である。
数年前のオスカーを賑わせた名作『スリービルボード』でも、13歳のスケーターが居場所を探す物語『mid90s』でも、オレンジジュースが最高の感動へと誘うキーアイテムとして機能していた。
そしてこのコントが始まる第一話でキーとなる飲み物は“メロンソーダ”である。


導入のコント。
どんなトラブルでも解決できる水のトラブル業者の池山(菅田将暉)が呼ばれて出向いたラーメン屋の店員(神木隆之介)は触ったものが全てメロンソーダに変わってしまう。水やラーメンのスープ。さらには触った名刺に記された“池”山の名前も“メロンソーダ”山に。

このコントは春斗(菅田将暉)が数年前に出会った不思議な体験が元になってできている。
仕事帰りに公園で酔い潰れて寝ている女性、里穂子(有村架純)。
彼女のために置いて帰ったはずの水が、翌朝公園を通った時には中身がメロンソーダに変わっていた。
なぜ?
そんな不思議な経験から「触った水がメロンソーダになっちゃう人がいたら面白いかなって」とこのコントは作られた。
そして再会した春斗と里穂子。そこで明かされるメロンソーダの謎。
それはなんて事のない食品メーカーに勤めていた里穂子が担当した“水に入れるとジュースになる粉末”だった。
世の中の謎なんて言うのは案外そんなものだ。

この物語は冒頭のコントで張り巡らせた伏線を「これでもか!」と言うくらい回収してまわる。
ー メロンソーダ。
ー「何人に見えます?」
ー「水のトラブル777に電話しましょうか?」
しかしラストでこの構図が逆さまになる。
10年前の親との約束でマクベスを解散する事を決意する3人。
そんな中で春斗はコント『水のトラブル』のラス前のセリフを変えたいと言う。
物語は最後クレジットの後コント場面に戻り、メロンソーダが今度はレモンスカッシュになり絶望する店主(仲野太賀)と店員。そんな中、メロンソーダ山改め池山は落ちついた様子でラーメンをすする。
「よくそんな呑気にラーメンなんか食っているな」「解決できるなら早く言ってくれよ」と問いただされる池山のセリフは、
「私、大事な話はラーメンを食べた後に言うと決めているんです。」

今まで春斗はマクベスを組む時も、マクベスを解散する時もラーメンを食べた後に言っていた。
現実ではいつも大事な話はラーメンを食べた後だった。
コントの伏線を現実で回収していたこれまでから反転して、ラストで現実の伏線をコントで回収する。
鳥肌が立つくらい美しいオチだった。

今後の展開として気になる事はまず“推し”という要素。
里穂子は「自分の人生を変えた」と公言するくらいマクベスにハマっている。
これはいわゆる推し。
近年『推し燃ゆ』『だから私は推しました』 『推しが武道館いってくれたら死ぬ』など推しに関する良質なエンタメは増えていて、それは現代の若い世代の精神性を顕著に表したものだと思う。
その“推し”の要素を今後どのように描いていくのか?

そしてもう一つはラストのシークエンスで里穂子の「自分が好きになったり接触したりしたモノは不幸になる」という発言。
彼女が推しているマクベスはあと2ケ月で解散する事が決まった崖っぷちの状態。もしこの状態が好転するとすれば、それは里穂子とマクベスの別離を意味しているのか?そんな悲しい結末が一話目のラストに垣間見えてしまった。

これが一体どんな結末への大いなる“前フリ”となるのか?


#2 コント『屋上』

導入のコント。
とある屋上で遺書を抱える青年。それを目撃する向かいのマンションにローン35年で引っ越してきたばかりの夫婦。せっかく引っ越してきたのに自殺なんかされたらたまったもんじゃない!

コントの元になっているのは春斗(菅田将暉)と瞬太(神木隆之介)の高校時代の体験。
人生が終わってもいいと思って屋上にいた瞬太に偶然出会った春斗。
「自分が死んでも春斗に何か関係ある?」と問われて返した春斗の答えは「親友の潤平(仲野太賀)が奈津美(芳根京子)に明日告白する。クラスメイトが自殺したら告白の確率は下がると思う。ただでさえ低い確率なのにこれ以上下げないであげて欲しい。」

そして冒頭で明かされる潤平の秘密。最初にコントをやろうと誘ったのは春斗ではない別の人物だった。

ここら辺がラストへの伏線になっていく。


プロゲーマーとして成功していっても孤独を感じ続ける瞬太。
その元にあるのは高校時代に自分の横で春斗にコントをやろうと誘われた潤平への羨望。誰かに必要とされる喜び。
彼にだけはパッとしないマクベスが光り輝いて見えた。
そのマクベスに恩人である春斗から誘われた時の彼の幸福。
彼にとってはマクベスは自分の人生そのものだった。
そのマクベスが解散する。
自分の人生が終わる。
昔よく口にしていた「27歳までしか自分の人生はない」という言葉が頭をよぎる。
しかしそんな時にまたも自分を救い出してくれたのは春斗だった。

かたや潤平は恋人である一流企業で働く奈津美に申し訳ないと感じ続けていた。周りはどんどん成長していくのに、何者にもなれていない自分自身。
マクベスを続ける事はできない。
マクベスの、春斗が作るコントの世界観には絶対の信頼がある。少しのアドリブを入れることも許さない。
だからこそ自分が最初に誘ったのが春斗ではないという秘密をずっと話せずにいた。
そんな葛藤や苦悩の中で秘密を知って怒りをぶつけてくる春斗に「お前と組むんじゃなかった」とつい口を滑らせてしまう。
そして里穂子(有村架純)から春斗と瞬太に明かされる潤平が以前に書いた、誰にも知られていないブログの内容。
「昔の俺に一言。お前の選択は間違ってないぞ。」

コントの出番前。
高校2年生、奈津美に告白した前と同じようにアキレス腱を伸ばす潤平。
跳び箱の中からその様子を隠れて見ていた時のように、それを黙って見守る春斗と瞬太。
春斗にも隠し事があった。おあいこ。
そしてラストまたコント『屋上』へと戻っていく。
あれだけアドリブに厳しかった潤平から飛び出したアドリブ。
それに続く瞬太のアドリブ。
3人はどんなアドリブだったか覚えていないと笑い合う。
言葉にする事に意味はない、きっと3人の中でしか意味を持たないアドリブ。
劇中で春斗が瞬太に言った「笑わせる気あんのかよ」というセリフを思い出す。
きっとこのドラマは私たちを笑わせる気なんて毛頭ない。
大真面目にド直球にヒューマンドラマをやり切る気しかない。
ふとそんな風に次回予告を見ながら感じた。

「私からもお礼を言わせて。あなたを選んで良かったわ。本当よ。」
「命を救って頂きありがとうございました。もう二度と死のうだなんて思いませんから。安心してください。」


#3 コント『奇跡の水』

導入のコント。
兄を探しに来た弟。兄は“ウィンディーこが”のパワーが注入された“奇跡の水”を勧められる。そこから立ち去ろうとする弟。それを阻止する兄とウィンディーこが(風の)男。

コントからも分かるように今回は“兄弟と姉妹”の物語。

春斗(菅田将暉)の兄・俊春(毎熊克哉)は小さい時から頭が良くてスポーツもでき、一流企業に務めて家庭を築き、マイホームも手に入れて順風満帆な人生を送っていた。
完璧な強い兄がいたから春斗はマクベスに打ち込むことができた。
そんな兄の完璧な人生が一つのきっかけで崩壊した。
怪しげな水にのめり込んだ。マルチ商法に引っかかった。
完璧で強すぎた兄の孤独が彼を闇へと引きずりこんだ。
そして兄は引きこもりになった。
春斗と俊春の親はとても真っ当だ。
常識があり、子供の事を心配し、世間と歩調を合わせる。
でもそれが凶器になる事もある。
この正解しか存在しない家が辛い時だってある。
親が子供を愛していれば尚更。

一方、里穂子(有村架純)もマクベスの3人と妹・つむぎ(古川琴音)の前で自分が壊れた理由をぽつりぽつり話始める。
彼氏との結婚の準備を進めていたら彼氏は別の女性との結婚を決め、仕事で別のチームのトラブルを手伝っていたらいつの間にか矢面に立たされて責任を背負わされる。
「私が頑張るからダメなのか、頑張り方が間違っているのか分からなくなっちゃって」
頑張って傷つくことが怖い。でも寂しい。
夢中になれない事の虚無感。

里穂子も俊春も「真面目に頑張る人間」だからこそ壊れてしまった。
「あんなに真面目に生きてきた姉が、こんなに簡単に不幸になっちゃうのか。」
今の社会に“真面目”とか“頑張っている”を評価する仕組みはない。
学校を卒業してしまえば理不尽や矛盾との戦いである。
そんな世界で生きていくにはそれに適応していかないといけない。
適応できないものは振り落とされる。
それが私たちが生きている社会だ。
でもそれじゃ悲しすぎるから人は愛を求めるのだと思う。
春斗の作った『奇跡の水』というコントは間違いなく春斗から兄へのラブレターだ。
そして喧嘩した時に必ず里穂子がこのコントを見るのも妹への愛のしるしなのだと思う。

このいびつな社会を変える事は難しいかもしれないけれど、でも何かを誰かを真面目に懸命に愛する事はできる。

私にはこの『奇跡の水』というコントがそんなメッセージのように思えた。


<#3の小ネタ>

無味無臭。
5分だけのソース。
電話から聞こえる電車の音。
早く足洗ってくれ。

<#3のパンチライン>

「だって兄ちゃん俺たちがすべるの見て笑うの好きなんだろ?」
「着信履歴は心配してるよってメッセージなんだよ。」

<#3のクリフハンガー

・つむぎが「やばくて困ったもんだ」という理由
・潤平(仲野太賀)が真壁先生(鈴木浩介)を呼び出した理由



#4 コント『捨て猫』

導入のコント。
一匹の捨てられた猫。その猫に近づいてくる生まれながらに飼い主がいない野良猫。聞けばこの野良猫は自分が飼い主を選んでいるという。そう美人女社長のような飼い主が来るのを待っているのだと。

マクベスのコントの中で唯一、瞬太(神木隆之介)が作ったコントがこの『捨て猫』。

そして今回のエピソードは“ゆるし”の物語。

瞬太は早くに父親を亡くし、母親(西田尚美)とも上手くいっていなかった。
自分のやる事なす事全てを否定してくる母。それに反発する息子。
高校を卒業して母の望まぬプロゲーマーとして独り立ちした瞬太のそれからは逆に母親を否定する事で形成されていた。
母親の嫌いなゲームをして、お笑いをして、神を金髪に染める。
否定されるなら、自分も否定してやる。
赦される事がないなら、自分も赦さない。
彼は母親を赦さない事で、母親という存在をなんとかギリギリ自分自身に繋ぎ止めていた。

一方、前回居酒屋に大事な話があると高校の担任・真壁(鈴木浩介)を呼び出していた潤平(仲野太賀)だが、その目的はマクベスを解散するべきか?続けるべきか?考えを聞くためだった。
いや、考えを聞くためというよりは「しゃにむにやれよー」が口癖の真壁に背中を押してもらうため。マクベスを続ける許しを得るため。
きっとそれでまだマクベスが続けられる。
春斗(菅田将暉)と潤平にはそんな淡い期待があった。
しかし真壁の答えは
「解散した方が良い。お前らはもう十分頑張った。夢を追いかけるつらさは分かる。」
許しを得るはずだったのに完全に梯子を外されてしまった2人。
「誤算だったなー。」
潤平の何気ない言葉が虚しく部屋に漂っていた。


幼い頃は“ゆるす”=“肯定する”事だと思っていた。
でも大人になって、ゆるす事が否定する事だってあるし、ゆるさない事が肯定する事もあるとわかった。
人間はそんなに単純じゃない。


ラストシーンでつむぎ(古川琴音)にミートソースと共に粉チーズを出してもらった瞬太からポツリと出た言葉は「いいの?」だった。
過去の母親に粉チーズをかけて怒られた記憶。
ここまでずっと観ていて私は、過去の行動を悔いて母親が赦しを乞う物語だと思っていた。
病院でも瞬太は母に「あんたを赦す時間もう少し俺にくれよ」と言っていた。
でもたぶんずっと赦して欲しかったのは母ではなく瞬太だった。
昔の記憶に囚われてミートソースに粉チーズもかけないで生きてきた彼の人生。
誰よりも赦さない自分と誰よりも赦して欲しい自分。
だからどんな事でも赦してくれるつむぎの存在は瞬太にとっては特別だったのだと思う。


そしてコントへと戻り、野良猫は美人女社長とは真反対の男に擦り寄って拾ってもらおうとする。
犬が欲しい男に自分が猫である事すら捨ててまで拾ってもらおうとする。
どんな事をしてでも家を、家族を手に入れようとする。
瞬太には掴めなかった、もう一つの未来。


<#4の小ネタ>

瞬太が本当に好きな料理。
背後霊の方にも。(#1からの伏線!)

<#4のパンチライン>

「生まれてくる時はあんなにも祝福されるんだなー。」
「だって俺にはもうマクベスしかなくなっちゃったんだよ。」

<#4のクリフハンガー>

・つむぎが「やばくて困ったもんだ」という理由(#3から引き続き)
・ファミレス店長恩田(明日海りお)が里穂子(有村架純)を誘う理由
・つむぎの同僚うらら(小野莉奈)の家がなくなった理由



#5 コント『カラオケボックス』

導入のコント。
カラオケボックスにいる1組の男女。不倫をしている2人の話は一向にまとまらず、延長するのか?しないのか?で揉める。それに戸惑う店員。結局2時間延長する事になった2人は…

今回のテーマは“居場所”。
いやこれはドラマ全編を通してのテーマなのかもしれない。
そして“人生のアンコール”のお話。

#3から疑問だったつむぎ(古川琴音)がやばくて困ったもんだという理由はどうやら“自分の存在”についてだったようだ。
失敗する事を恐れるあまり何もする事ができないつむぎ。
私はまだ本気出していないから大丈夫って自分に言い聞かせる人生。
周りの人たちは彼女の事を「優しい」と言うが、本当は自分の存在意義を見つけるために困った人に手を差し伸べている。
そんな周囲の評価と自己評価の乖離。
「自分はそんなに良いものじゃない」といくら言ってもわかってもらえない。
謙遜するなとさえ言われる。
わかってもらえないモヤモヤと自分のズルさを彼女は身体の奥へ奥へと閉じ込めてきた。
そんな自分が嫌で嫌で生きている事に罪悪感さえ感じる。
それを和らげるためにまた彼女は困っている誰かに手を差し伸ばす。
このループから逃れたい。
そして何気なく姉の口から出た言葉。
「じっとしてるとろくな事にならない。」
つむぎはついに自分から姉・里穂子(有村架純)との同居解消を決意する。

春斗(菅田将暉)は高校の同級生で奈津美(芳根京子)の元彼である勇馬(浅香航大)から仕事の依頼を受けるが、それが同情からくるものだと感じてこの仕事を断ってしまう。
このシーンから春斗やマクベスの苦悩をとても良くわかる。
企業や組織に属さず、自分や仲間と何かをやっている人間ならこんな経験は誰にでもあるのではないだろうか?
同情、自分が下に見られている事、対等じゃない関係、仕事を恵んでもらう事、自分はそこまで落ちぶれていない...
正直すべてに身に覚えがある。
それがつまらないプライドからくるものだった事も今ならわかる。
その時の自分は自分の立っている場所を見誤っていた。
同情でも、下に見られていても、対等じゃなくても、恵んでもらっても、それでも自分の活動のプラスになる事なら何でもしないといけない。
落ちぶれている自分の立ち位置をしっかり認識しなくてはならない。
超一流と言われる人たちならそんなことはしなくても良いのだろう。
しかし凡人が今の場所にしがみ付きたいなら、がむしゃらに、なりふりかまわず頭を下げないといけない。
それができないなら…
春斗は自分の立っている場所を見誤っている。
“プライドを捨てたくない自分”と“マクベスを続けたい自分”。
どんなに頭の中で計算してもこの2つが同居することはない。
それでも認める事ができない。
認めた瞬間に全てが終わるという確信めいた直感。
周りがどんどん成長していく中で、自分は全然成長していなくて、今までやってきた事が全て間違いだったと突きつけられる恐怖。
「お前ら高校からずっと一緒にいるから時間止まってるんじゃねーの?」
この言葉が春斗にとってどれほど痛い言葉だったか想像に難くない。

そして潤平(仲野太賀)もまた自分のアイデンティティと向き合う。
一流企業に勤める彼女との格差を感じ、後輩の上司にバカにされ、親ともうまくいかず、
「何にもねぇんだよ。俺には才能もねぇし...もう平凡じゃないフリするの疲れたわ。」
彼の言葉が空を彷徨う。
何者かになりたかった自分。
しかし自分は空っぽで、何者でもない事は自分が1番良くわかっている。
これしか自分にはない事もわかっている。
「辞めたい」と自分が言えば全て終わる事もわかっている。
それなのに動き出すことができない。
自ら能動的に一歩前に踏み出すことができない。
その焦燥感。虚無感。
潤平にはただ瞬太(神木隆之介)に「ごめん」と言う事しかできなかった。

そしてラストまたあの公園での春斗と里穂子の会話へ。
「努力は報われると思うか?」という春斗の問い。
里穂子は「過去の努力が時間を経て報われることもある。」と答える。
今は答えが出なくても後から出る事もあると。


個人的にこの問いについて思う事は“報いの定義”が重要だという事。
外的で物質的な結果を“報い”と考えるなら「努力は報われない事の方が多い」。
しかし内的で精神的な結果、つまりその努力によって自分の内側に及ぼす影響を“報い”と考えるなら「努力は報われる」はずである。
自分ではコントロールできない外的で物質的な結果を求めるのではなく、もっと自分の内にある“要素”を変化させていく事。それこそが努力の意義だと私は思う。


「マクベスでやってきた10年間は決して無駄ではない。」
この里穂子の言葉に一瞬だけ笑顔を見せた春斗。
彼の中で何かが変わろうとしているのだろうか。

エンドクレジットの後、コントへと戻る。
不倫カップルは更なる延長をしようとするが店員に断られてしまう。
「実はこの店今日の12時で畳むんです。」
「それはお気の毒ね。」
怪訝そうな顔の店員。
「ずっとやめたかったんですよ、この店。」
「やめる事が全てネガティブな事とは限りませんから。
 でどうしますか?まだ延長しますか?」

負け犬にアンコールはいらない。

※本編とは全く関係ないがヨルシカ『負け犬にアンコールはいらない』が今エピソードの世界観にぴったりなので併せて聴いて頂きたいです。


<#5の小ネタ>

このお花なんていうお花かしらね?

<#5のパンチライン>

「どうして自分たちの可能性にそこまでBETしつづけられるのだろう。」
「夢が叶わなくても幸せだった。夢を語り合える時間があれば、それだけで幸せだった。」
「卒業式前の高揚感と一緒だよ。あとちょっとで終わるって思うからいろんな記憶が光り輝いて見えるし、離れ難く思うだけ。」
「まぁでもお互いに離れたくないって気持ちが残っているうちに、別れるからいいんだろうね。」

<#5のクリフハンガー>

・「満員のそれも全員がマクベスのネタを楽しみにしている中でいつかライブがやりたい」ラストライブへの伏線?



※文字数がかなり多くなってきたので次回#6から後半戦は下記ページから↓
続けてみてくれている方は面倒ですがよろしくお願いします。



テレビドラマにコロサレル!
ニシダ


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