「誰が悪いわけではないけれど」

地面が竹ぼうきでキレイに掃除されていて
すこし一抹の不安
なんでだろう
違う風景は心が揺れる

ほどなく見えた違和感
葉っぱが少ない
ここはたくさんオレンジ色のヒメグモが
暮らしていた場所なのに！

わずか十センチほど
フェンスからはみ出した葉っぱが
均一に切り落とされた
ただそれだけのこと

しかしその小さな世界には
たくさんのヒメグモが
そんな彼らを眺めているのが
ひそかな楽しみだったのに

そこには人と変わらない営み
ひとりぼっち　カップル　一妻多夫
多様な生き方がそこにあり
日常の当たり前がそこにはあった

ようやく卵が産まれて
たくさんの子どもたちを見れるはずだった
それが一日で全て奪われた
難を逃れた僅かをのぞいては

庭師は頼まれてやっただけ
隣の土地の所有者は侵入部分を刈っただけ
人から見れば当たり前のこと
誰が悪いわけではないけれど

小さな生き物の暮らしは奪われた
知らないんだろうなこんなこと
だからまだ無くならない
奪うことが当たり前の世界は