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隠蔽されたもの(舞台SLANG 感想)

直接的なネタバレではないですが、ネタバレ感想です。

この舞台に対してあらすじがどうの〜みたいなことを言うのは、的外れなんだろうな、と思う。ミステリ的に捉えてしまうと、ありえない状況、展開だけれど、これはそういう「物語」ではないのだから。

SLANGとは、ありていに言ってしまえば「言葉」のことだ。言葉が全て、と思うのは仕方がないことなのかもしれない。けれど、言葉による情報伝達は、人間の伝達の手段に過ぎない。奇しくも、『海獣の子供』のテーマ性に近いところに着地する。

ポップな切り口で、シリアスを描くのは、仮面ライダーエグゼイドのファンならば望むであろうし、エグゼイドで取り上げられていなかった「精神科」を取り上げて見せるのも良。岩永徹也に白衣を着せてみせたり、谷口賢志に慟哭させてみせたり、その手のファンサービスは東映とのコラボ企画ゆえだろう。

オリジナル脚本の舞台に慣れていない私のような人間からすれば、ジェットコースター的で酔いそうになる展開のアップダウン。「やりたいこと」を気付かされたら、あとは展開が追いつくのを待つ。その間、役者たちはひたすらに観客の感情を揺さぶり続ける。

面白かった、と素直に笑顔で言えるタイプの舞台ではけっしてない。しかし、舞台をナマで見た、というこのかけがえのない経験を抱くことができる点において、この舞台は光り輝くように思う。演劇は、やはり現場の空気感が左右する。役者のアドリブからなにから、そういう細部にまで力は宿る。


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