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『舟を編む』を読んで

最近、『舟を編む』という三浦しおんさんの小説を読みました。感想を述べようと思います。

まず、小説の内容について以下に簡単に説明させていただきます。

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出版社・玄武書房の営業部員・馬締光也は、言葉への鋭いセンスを買われ、同社の辞書編集部に引き抜かれた。新しい辞書『大渡海』の完成に向け、彼と編集部の面々の長い長い旅が始まる。定年間近のベテラン編集者。日本語研究に人生を捧げる老学者。辞書作りに情熱を持ち始める同僚たち。そして馬締がついに出会った運命の女性。不器用な人々の思いが胸を打つ、まじめな変人たちののんびり奮闘記、といった感じです。

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この小説は、辞書作りがメイン進行ですが、その中で主人公馬締(まじめと読みます)が好きな人にラブレターを送ったり、辞書編纂の協力者や新しい編集部員と不器用ながらも接して触れ合っていくので、読んでいて心が動かされるというか、応援したくなる気持ちになって、最後まで飽きずに読むことができます。

辞書作りにかける主人公の熱情と、その思いや行動が主人公周辺の人々の琴線に触れ、伝染していく様に深く感銘を受けました。

辞書って簡単に作られるものではなくて、十年以上もかけて単語を採集し、用例を集め、時には学者にも執筆を依頼し、執筆要領に沿うように文体を統一していく、、しかも、最終的には五校まで校正をする、、このように非常に長い道のりなのだと知りました。さらに、一度出版されてもその後は改訂作業が待っているので、辞書は何十年もかけてブラッシュアップされ、進化を遂げていく。辞書の人生って人間みたいですね。

さて、この小説の中で出版される辞書の名前が『大渡海』とありますが、このネーミングには深いわけがあります。「辞書は、言葉の海を渡る舟」であり、「私たちはもっとふさわしい言葉で正確に思いを誰かに伝えるために、辞書という舟に乗り、暗い海面に浮かび上がる小さな光を集める」必要があるので、「海を渡るにふさわしい舟を編む」ことを目的として名付けられたのだそう。それがこの小説のタイトルにも繋がっています。

たしかに、言葉って不思議ですよね。かれこれ20年以上生きてきましたが、言葉の扱いは複雑で難しいと私自身感じております。日本語に限った話しかできませんが、言葉の中には、日常で一般的に見るものやビジネスシーンのみで使われるもの、本の中でしか見かけないもの、専門的な場面でしか使われないもの等様々あります。中には、死語と言って今現在見かけなくなったものも。。また、時代が進むにつれて誤用されるものや意味が変わってきたものまであります。

言葉は海だと前述しましたが、この小説ではさらに、言葉は生き物、とも表現されています。すぐ上で述べた通り、言葉は生き物だと言われても納得がいきますよね。


この小説を読みながら、初見の単語がいくつかあり、そのたびに私は意味を調べました、ネットで。。分からないことに遭遇してもすぐにネットで調べることができる現代、非常に便利でラクです。だって昔は分厚い本の紙をぺらぺらめくって意味を調べてたんですよ、本当に考えられないです。

と、このように、こんな世の中だからかもしれないですけど、辞書への関心が薄れて、というか無くなって、言葉への探求心というか興味が、軽薄になってきている気がします。コロナで騒がれている時だからこそ、言葉の持つパワーに、面白さに、もっと触れていくべきだと思います。言葉が持つ底知れぬ力をもっと借りていきましょう。言霊とも言われるように。


それと、語彙は年を重ねれば自然と身につきます。でもそれが言葉の全てではなくて、本質ではなくて。別に言語化人間になれと言っているわけでもなくて。我々若い人間が多くの言葉に触れて、様々な感情を知ったり表現できるようになれば、将来、いろんな人と深い関係を築けるようになると思いますし、社会人で遭遇するであろう不安、焦り、悩みに対してもスムーズに対処できるようになると、私は考えます。

やっぱり、本を読むって大事、意味を調べることも大事。

辞書も進化しているのだから。

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