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つらいのに気づかないくらい必死になれたらいい

小学校から高校まで、学校が好きだったことがない。中学校まではまあまあ勉強ができたが、高校では勉強までできなくなり、本当にどうしようもなかった。今回はそんな高校時代について書きたいと思う。

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進学校はいじめがないというが、みんなストレスがたまっているのか、くだらないことをするヤツはいる。残念なことに、残念なヤツはどこにでも一定数存在する。

高校一年のクラスに、男子5~6人のグループがあり、そいつらは特定の女子をターゲットにしていた。ターゲットにしていたといっても、面と向かって何か言うとかではない。授業中に彼女が指名されると目配せしたり、すれ違うときに笑ったりする。ターゲットの女子はたしか数人だったが、女子全員が彼らのことは嫌いだった。

こういうヤツらはつるむのが好きで、休み時間になると、1人の男子の席に集まっていた。1人では何もできないし、日頃女子の恨みを買っているから、1人でウロウロするのは怖いのであろう。本当にくだらない。

あれは冬の時期だった。私はそのたまり場の後ろの席になってしまった。ここで推奨される行動は、「席を離れ、親しい女子の席に行く」ということだろうが、私はそれほど親しい女子がいない。いや、それほど親しくなくても受け入れてくれる優しい女子はいるし、トイレでも行って、廊下から窓の外を眺めていれば休み時間は終わるだろうが、私には死活問題があった。

英語の宿題が終わっていない。

私は勉強ができないストレスを部活にぶつけ、(放送部だったので)毎日狂ったように部室で滑舌と発声練習をしており、勉強する時間などなかった。また、家がいろいろごたついていた時期だったから、早く家に帰りたくなかった。家に帰ってもそれほど勉強に集中できなかった。だから、宿題をやっていないのだ。こいつらに席を明け渡すわけにはいかないのだ。

その後、私は席替えがあるまで、ヤツらに気づかないふりをして黙々と宿題をやり、読みたい本があれば読んだ。ヤツらは聞こえよがしに嫌みを言うのがお家芸だったが、私に対して何かを言っているのは聞いたことがない、というか聞こえなかった。

ただ、私だってヤツらを好意的に見ていたわけではない。私は掃除の時間に、クラスメイトの寺本さん(仮名)にだけは愚痴を言っていた。

「いまの席、嫌なんだよねー。早く席替えないかなー」

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その後、2年生か3年生になったときに、1年生の頃のクラスメイトの佐々木さん(仮名)と話すことがあった。

佐々木さん「杏さん、寺本さんに聞いたんだけど、杏さんもあの男子のこと嫌いだったんだね?」

私「え?嫌いに決まってるじゃない」

佐々木さん「だって、杏さん、彼らがたまっているのに、いつも平気な顔して黙々と何かしているんだもん。全然目に入ってないのかと思っていた」

私「うーん、邪魔だとは思っていたよ」

そうか、そう見えていたのか。思い返せば、私、まったく快く思っていないけど、それほど嫌でもなかったかな。たぶん、他の女子の嫌を100だとしたら、私は70くらいかもしれない。

なぜなら、夢中だった。英語の宿題に(笑)

ではなく!

英語の宿題もできなくなるくらい、放送部の活動に夢中だった。NHKの放送コンテストの全国大会で入賞したい。将来はNHKで働きたい。仕事で英語も使えるようになりたい。だから、英語だけは何とか良い点をとりたい。だから、英語の宿題はやらなきゃ(ここに落ち着く・笑)

その目標の前では、クラスの男子なんてどうでも良かった。ヤツらに陰口を言われても失うものは何もなかった。それが態度に現れていたのか、おそらく陰口のターゲットにはなっていなかったはずだし、もしターゲットになっていても気づかなかったのだとしたら、それはないに等しい。

つらいのに気づかないくらい、必死になれることがあれば、それはとてもいいことだと思う。

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大人になった私は、NHKには就職できなかった。でも、英語を使う仕事には就けたし、仕事で外国に行くという夢は叶った。これからも、まだまだたくさんの「つらいのに気づかないくらい、必死になれること」に出会いたい。


※カバー写真はぱくたそさんよりお借りしました!

見開きのノートとペンのフリー素材 https://www.pakutaso.com/20130646170post-2942.html



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