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昼の公園 夜の幻 2

彼が見えた。
100メートル先に。
彼は私を見つけたあとも、
歩幅もテンポも変えず、
涼しい顔でわたしにいつものように、

「お疲れ様ですー。」

と声をかけた。

お店のメニューを開き、

「僕車なんで。」

と2人で烏龍茶を頼み、
いくつか適当に料理も注文した。

当たり障りのない仕事の話をひと通りして、
なんとなく、お互いの家族の話や、身の上話を軽くして、
1時間半ほどして、会計した。

お店を出たあと、

「少しお散歩しましょう。」

と、近くの公園に向かった。

いつも昼間は子連れで賑わうその公園は、

わたしもたまに子供と訪れる場所だった。

見慣れた景色なのに、
胸はずっとドキドキしっぱなしだった。

ベンチをみつけて、2人で腰かけ、

わたしは、なんだか急にこれで彼と別れるのが寂しくなった。

そして、
わたしの緩みかけていたネジが、
音もなく外れ落ちた。

「わたしと、してくれませんか。」

自分でも驚くほど自然に、普通に

ランチでも誘うように、
声をかけていた。

彼は、
少し困っているようだった。

でも、肯定も、否定もしなかった。

自分が恥ずかしくなり、
顔を伏せてしまったわたしに、

「女の子ですねぇ。今日はそろそろ帰りましょうか。」

と、
彼が足早に歩き出した。

わたしは、

なんてことを言ってしまったのだろう。。

と、言う想いと、

彼が困っている、、わたしじゃ、やっぱりだめなのかな。。

という切ないような想いが入り交じった。

彼が歩きながら、

「そーゆうことするなら、計画的にしないと。
まずはお薬飲んだり。。」

わたしは、はじめよく意味がわからなかった。

彼と別れて、
家に向かいながら

彼もそういうことがしたいのだろうか。。

とモヤモヤした頭と、

わたしは簡単に旦那を裏切ろうとしている事に
罪悪感と、
もしかしたらなにか新しいことが始まるかもしれないというワクワクみたいな気持ちが入り交じり、

何も考えないように、

イヤホンで音楽を聴きながら

早足で、
人がまばらになった駅前を、
歩いていた。

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