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実際にあった一口馬主を題材に一頭の競走馬がもたらす奇跡を描いた『ドリーム・ホース』

【個人的な満足度】

2023年日本公開映画で面白かった順位:2/2
  ストーリー:★★★★☆
 キャラクター:★★★★☆
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★☆☆

【作品情報】

   原題:Dream Horse
  製作年:2020年
  製作国:イギリス
   配給:ショウゲート
 上映時間:113分
 ジャンル:ヒューマンドラマ
元ネタなど:実際にあった話

【あらすじ】

イギリス・ウェールズ、谷あいの小さな村。夫と2人暮らし、パートと親の介護だけの“何もない人生”を送っていた主婦ジャン(トニ・コレット)。

ジャンは馬主経験のあるハワード(ダミアン・ルイス)の話に触発されて競走馬を育てることを思いつき、村のみんなに共同で馬主となることを呼びかける。週10ポンドずつ出しあって組合馬主となった彼らの夢と希望を乗せ、「ドリームアライアンス(夢の同盟)」と名付けられた馬は、奇跡的にレースに勝ち進み、彼らの人生をも変えていくが…。

【感想】

新年2本目は、実話を元にしたヒューマンドラマです。いわゆる一口馬主によって、みんなで購入した競走馬がもたらす思いがけない影響について描いた話です。

<何のために馬主になるのか>

今回、馬主になることを思いついたのは主人公のジャンですが、正直どうして馬主になろうと思ったのか、そこの経緯はよくわかりませんでした。酒場でハワードが馬主であったことは聞いたんですが、それでメチャクチャいい経験をしたってことではないんですよ。むしろ、あとちょっとで彼は家を手放さなくならなくなったという、どちらかといえばマイナスの話でした。でも、ジャンの中では何かがピンと来たんでしょうね。そこから馬主になろうといろいろ調べます。

そもそも、彼女は馬を育てることにおいて、まったく何も経験がないかというと、そういうわけではありません。かつては犬や鳥を育てて賞を獲ったことがあったので、「馬も何とかなるだろ」って思った節もあるでしょう。あと、これは本編を観ていけばわかることですが、彼女は日々の生活に彩りが欲しかったんですよね。だから、今までに経験のないことをやろうと思ったのかもしれません。

それが、この映画のいいところでもあります。彼女は馬を"儲け"の対象として捉えるのではなく、"推し"の対象として捉えていました。普通、馬主になるっていうならさ、レースで勝たせて賞金をもらって、一山当てようって考えるじゃないですか。でも、ジャンはそんなこと一切考えていませんでした。

でも、さすがに自分だけで購入するのは負担が大きいから、村で共同出資者を募って、週10ポンドからの組合馬主になりました。そこでのルールも、"儲け"は一切考えず、"胸の高鳴り"のために出資すること。胸の高鳴り、つまりは興奮とか熱狂とかそういうことです。ある意味、アイドルとかを応援する感覚に近いんじゃないかって思いました。

<ドリームがまわりに与えた影響>

みんなでドリームアライアンスと名付けた馬を育てるようになってから、少しずつ生活に変化が出てきます。平凡だった日常がちょっと楽しみになったり。若い頃を思い出して性格が明るくなったり。会社を辞めて新しい仕事に就いたり。内容は人それぞれですが、とてもポジティブな変化が表れ始めます。ここは何かに熱中できる対象を持つことの大切さを感じられる瞬間でよかったですね。とはいえ、別にみんなが直接世話してるわけではないんですけど(笑)ドリームは調教師のところに預けられて、みんなはただ週10ポンド払うだけだったので。まあでも、「自分たちで所有してる」って事実が大事なんでしょう。それだけで育ててる気にはなれますし。

あと、ドリームがレースに出るときはみんなで応援できるってのも組合馬主ならではと言えます。全員で競馬場に行って、馬主席からレースの状況を見届け、全力で声を張り上げて応援する。チームみたいな雰囲気を味わえますよね。そして、このレースがなかなかスリリングなんですよ!僕は競馬を一切やりませんが、ドリームが後方から追い上げていくシーンは、「あとちょっと!あとちょっと!」とかなり興奮しました(笑)

<組合馬主であるがゆえのデメリット>

一人当たりの負担を抑えて馬主になれるのが、この組合馬主のメリットではありますが、もちろんいいことばかりじゃありません。共同で権利を持っているがゆえに、意思決定がジャンひとりではできないという歯がゆさもありました。ドリームの今後を考えたときに、ジャンはドリームを儲けの道具として考えていなかったので、どこかに売り払うなんてことは言語道断ではありましたが、中には彼女に完全同意していない人もいるわけで、そこは協議で決めようなんて話も。この映画に限らず、関係者が増えると自分の裁量は減っていって悔しい想いをすることもありますよね。。。そんな暗雲立ち込めるような状況が訪れつつも、ジャンの情熱があったからこその結末には感動しましたけど。

<そんなわけで>

全体的にやや駆け足感はあるものの、年始に観る心温まる映画としてはオススメできます。何かと合理的な考え方が称賛されがちな世の中ですが、こういう合理性だけでは計れない「好き」とか「推したい」って思える対象を持つことは人生を豊かにしてくれると思います。みなさんも自分だけの「好き」を大切にしていただきたいです。

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