弘徽殿女御の人柄に惹かれる『十二単衣を着た悪魔』
【基本情報】
製作年:2020年
製作国:日本
配給:キノフィルムズ
【個人的順位】
鑑賞した2020年日本公開映画ランキング:153/165
ストーリー:★★☆☆☆
キャラクター:★★★☆☆
映像:★★★☆☆
音楽:★★★☆☆
【あらすじ】
伊藤雷(伊藤健太郎)は就職もせず、日雇いのアルバイトを続ける日々。ある日、「『源氏物語』と疾患展」の設営に参加し、イベント会場に流れる『源氏物語』の登場人物紹介で「デキた弟・二宮」と「後塵を拝した長男・一宮」の関係を知り、自分の境遇と重ねた。彼の弟もまた頭脳明晰だったからだ。
バイト後、恋人と顔を合わせたのだが、なんとフラれてしまい、おまけに帰宅途中、近所の知り合いから弟が京大医学部へ合格したことを教えられて、祝賀会をやる家に帰りづらい雰囲気に。
当てもなく彷徨っていたところ、その心の内と同期するように、空には雷鳴がとどろき、激しい雨に見舞われると、雷は不思議な光に吸い込まれて、気を失ってしまう。
やがて目覚めたものの、どういうわけかそこは1000年以上も前の平安時代、女流作家・紫式部によって書かれたあの『源氏物語』の世界だったのだ。
バイトの土産だった頭痛薬が弘徽殿女御(三吉彩花)に効いたことから陰陽師として重用されることになり、彼の平安時代での生活が始まる。
【感想】
これも無事に公開されてよかったねという映画ですね。伊藤健太郎と、もはや公式サイトからは外されているけれど、伊勢谷友介も出ているから(笑)
しかし、内容としてはとても惜しい感じがしました。主人公が源氏物語の世界に入り込むといういわゆる“異世界モノ”。異世界モノってあんまり邦画の実写ではないですけど、世界観が剣と魔法ではないため、パッと見は『幕末高校生』や『JIN-仁-』などの“タイムトリップモノ”に近い印象です(そう考えればポピュラーなジャンルですね)。
その設定はよかったんですが、こういうのって福田雄一監督作品のようなドコメディか、『JIN-仁-』みたいに次から次へと波乱が起こるシリアスな話の方が相性いいと思うんですよ。今回はそのどちらでもないので、惜しいと感じた次第です(笑)
平安時代に入った後は、『源氏物語』の話に沿って進むので、もはや主人公のいる意味があんまり感じられなかったんですよね。例えば、彼の存在によって物語が改変されてしまうとか、早く元の世界に戻らないと存在が消えてしまうとか、そういうのがあればもっと緊迫感みたいなのもあって楽しめた気もしますが。。。まあ、そういうSF寄りじゃないってことだとは思うんですが、そうなるとこの映画って一体何なんだって思いますよね。
その疑念を払拭するのが、弘徽殿女御なんです。もともと気の強いキャラクターあるんですが、まさに“女帝”感あって、三吉彩花にハマっていましたね。女帝といっても暴君ということはなく、未来を見据えた上で勝つことにこだわるタイプ。ゆくゆくは若い世代に負けることも厭わないし、むしろそれを楽しんでいるようなところもあったから、“悪魔”と言うほど悪者ではないんですよ。人の上に立って然るべき人という印象を受けました。「男は形で能力を示せ」というセリフは心に刺さりますね。まさに、「早すぎたキャリアウーマン」像を描いているなっていうのは感じました。
なので、この映画、弘徽殿女御という人物にフォーカスした話なんですよ。正直、彼女以外はモブと何ら変わりなかったですし。どうせなら、彼女との交流を通じて主人公が成長するっていう形になっていればよかったんですけど、あんまりそこが伝わって来ないのも、また惜しいと思えるポイント(笑)
なお、今作でも、またもや戸田菜穂が主人公の母親役をやっているので、もはや鉄板になってきましたね。
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