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戦犯扱いされていた原田選手に金メダルを取らせた25人のテストジャンパーたちの物語『ヒノマルソウル ~舞台裏の英雄たち~』

【個人的な評価】

2021年日本公開映画で面白かった順位:21/117
   ストーリー:★★★★★
  キャラクター:★★★★★
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★★☆

【以下の要素が気になれば観てもいいかも】

ヒューマンドラマ
スキージャンプ
1998年長野オリンピック

【あらすじ】

長野オリンピック・ラージヒル団体で、日本初の金メダルを狙うスキージャンプチーム。そこに、エース原田のジャンプを複雑な想いで見つめる男―元日本代表・西方仁也(田中圭)がいた。

前回大会・リレハンメルオリンピックで、西方は原田と共に代表選手として出場するも、結果は銀メダル。4年後の雪辱を誓い練習に打ち込んだが、代表を落選。失意の中、テストジャンパーとしてオリンピックへの参加を依頼され、屈辱を感じながらも裏方に甘んじる。

そして迎えた本番。団体戦の1本目のジャンプで、日本はまさかの4位に後退。しかも、猛吹雪により競技が中断。

メダルの可能性が消えかけたとき、審判員たちから提示されたのは、「テストジャンパー25人全員が無事に飛べたら競技を再開する」という前代未聞の条件だった…。

命の危険も伴う悪天候の中、金メダルへのかすかな希望は、西方たち25人のテストジャンパーに託された―。

【感想】

これは日本人として押さえておいた方がいい映画だと思います。1998年長野オリンピックのスキージャンプ競技の舞台裏が知れる貴重な映画ですよ。

<キャストのハマりっぷりがすごい>

まず推したいのが、原田雅彦選手と船木和喜選手が、本当に原田と船木だったことなんですよ。邦画の伝記映画って、洋画と比べると、実在の人物と演じている役者の見た目が違うことがけっこうあるんですが、この2人に関してはパッと見てで、「あ、原田と舟木だ」って思いましたもん。顔の形が近いっていうのもあるんでしょうけど、特に原田選手を演じた濱津隆之さんは、表情の作りもうまくて、原田選手の優しそうな雰囲気や、これは言い方がよくないかもしれませんが、少しヘラッとした感じも見事に再現出来ていて、あの有名なインタビューのシーンなんかは、まんま原田選手でした。

<これは原田選手の辛さに寄り添った映画でもある>

このオリンピックがやっている頃、僕は14歳でした。でも、当時観てなかったんですよね。もともとスポーツ観戦自体まったくせず、それはオリンピックも例外ではなかったことと、あと単純に競技の時間は学校があったので、観れる状況でもなかったってのもあります。

だから、原田選手も実際のジャンプよりもインタビュー映像ばかり目にする機会が多く、みんなモノマネするし、僕の中ではお笑い要素が強かったんですよ。

ところが、です。この映画を観ると、そんな自分を恥じたくなりました。1994年のリレハンメルオリンピックで、原田選手の飛距離が伸びなかったことにより、金メダル確実と言われていた日本が銀メダルになりました。彼はメディアに叩かれ、1年以上も嫌がらせされたようです。

そんな中での長野オリンピックですよ。表には出さないまでも、本人のプレッシャーは想像を絶するものがあったと思います。でも、「自分さえ失敗しなきゃ、岡部も葛西も西方も、みんな金メダリストだった。自分がみんなの人生を変えてしまった。だから自分だけが勝手にあきらめるわけにはいかない」という意志のもと、再びジャンプに身を投じるんですね。結果は金メダルでしたが、競技後のインタビューで「またみんなに迷惑かけるんじゃないか」っていうセリフがあって(実際のインタビューでもそうおっしゃっていましたが)、心にずしんと来るものがありました。

なので、リレハンメルオリンピックから長野オリンピックまで、その状況をリアルタイムで観てきた人は、なおさら感慨深く感じる映画だと思います。

<西方仁也選手の苦悩>

その原田選手と同学年で、輝かしい実績を残してきたのが西方選手です。中学生の頃から頭角を表し、将来有望な選手だったようです。それが、リレハンメルオリンピックで金を取れるはずだったのが銀に終わり、さらにケガも重なって長野オリンピックでは代表に選ばれず、裏方にまわることになってしまいました。表舞台で金を取れるはずだった人が、裏方にまわらざるを得ないときの悔しさときたら、、、凡人の身で簡単に「わかる」とは言えませんが、僕も競技は違えど部活に打ち込んだ身として、共感できる部分はありました。

そもそも、スキージャンプ団体戦って、水泳や陸上のリレーと近いものがあると思うんですよね。個人種目の連帯責任というか。僕は水泳をやっていたので、そこの部分はわかります。

チームプレーならね、よほど決定的なものでない限りは、ミスの責任の所在はある程度分散されるイメージがありますけど、この"個人種目の団体戦"って、結局ひとりひとりのミスはその人にすべての原因があるから、ミスした自分も責任を感じるし、他の人からしても「自分はちゃんとやったのにあいつのせいで」ってなりがちじゃないですか。

西方選手は、自分のせいじゃないところで銀メダルになり、しかもその原因となった原田選手は次の長野オリンピックで代表に選ばれたんですよ。「なんであいつはあそこにいて、俺はここにいるんだ」って、その悔しさと嫉妬はとてつもなく大きかったと思います。

全然テストジャンパーの役割に身が入らなかった彼ですが、他のジャンパーたち(特に、小林賀子(小坂菜緒 )選手)の想いを聞いて、自分のやるべきことを見据え、「原田に金を取らせます」と言い切ったところはかっこよかったです。日本の金メダルへとつなげた西方選手の想いや、テストジャンパーたちの努力は、単なるスポ根の域を超えた感動がありました。

<その他>

この原田選手と西方選手が、あのときお互い何を思っていたのかは、こちらにスペシャルインタビューが掲載されているので興味があればご覧ください。映画に書かれていることがけっこう実話だったりして、これを読むだけでジーンときました。

この映画、本当にいい作品ですし、長野オリンピックは伝説になっているので、日本人として観て損はないと思います!


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