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モノに宿る人の想いと断捨離との関係が奥深い『ハッピー・オールド・イヤー』

【基本情報】

 原題:Happy Old Year
製作年:2019年
製作国:タイ
 配給:ザジフィルムズ、マクザム

【個人的順位】

鑑賞した2020年日本公開映画ランキング:51/207
 ストーリー:★★★★☆
キャラクター:★★★★☆
    映像:★★★☆☆
    音楽:★★★☆☆

【あらすじ】

舞台はタイ・バンコク。スウェーデンに留学していたデザイナーのジーン(チュティモン・ジョンジャルーンスックジン)は、帰国後、母と兄のジェー(ティラワット・ゴーサワン)と3人で暮らす自宅のリフォームを思い立つ。かつて父が営んでいた音楽教室兼自宅の小さなビルを、北欧で出会った"ミニマルスタイル"なデザイン事務所にしようというのだ。

しかし、ネットで自作の服を販売する兄は"ミニマルスタイル"をよく分かっておらず、母はリフォームそのものに大反対。内装屋の親友・ピンク(パッチャー・キットチャイジャルーン)には、年内中に家を空っぽにするよう言われるが、残された時間は1ヶ月弱。

とりあえず、家中にあふれかえるモノを片っ端から捨てて"断捨離"をスタートさせるジーン。雑誌や本、CDを捨て、友人から借りたままだったピアス、レコード、楽器を返して回る。

しかし、元恋人エム(サニー・スワンメーターノン)のカメラ、そして、出て行った父が残したグランドピアノは捨てられないまま、時間が過ぎていく。

果たしてジーンはすべてを断捨離し、新たな気持ちで新年を迎えることが出来るのか?

【感想】

いい公開タイミングですね。年末の大掃除の今だからこそ観たい映画ですよ。まさに、断捨離エンターテインメント。そして、それををフックにしたヒューマンドラマになっています。

これは今日感度高い映画だと思います。だって部屋の整理ですからね。その部屋の整理始めて、懐かしいモノが出て来て、思い出に浸って、手がストップっていうのは誰もが経験したことがあるはず。

でも、本作のジーンは合理的に判断していきます。「思い出に浸らない」、「感情に流されない」、これを徹底して。日本の某お片付けコンサルタントのように、「ときめき」がないものは容赦なく切り捨てていくんですよ。

結果、昔友達からもらったCDがゴミ袋に入っているのを、その友達が見つけてしまい、険悪なムードになってしまいます。確かに、あげた方もいらないとわかっていても、いざ捨てられてるのを見たら悲しい気持ちになりますよね(笑)

そこからジーンは、ドライに捨てまくっていた行為を改め、友人から借りたままだったものは返していくことにするんですが、それをきっかけに元恋人と再会するんですよ。そこで、彼にした仕打ちへの後悔や、彼への想いなどが蘇り、話はヒューマンドラマへと変わっていきます。

ここがね、この映画のうまいなって思うところなんですよ。「断捨離→元カレから借りたままのものを返す→そこから始まる人間ドラマ」っていう非常にわかりやすい自然な流れで、腹落ちしかしないっていう。

元彼との結末は映画を観ていただくとして、断捨離から生まれる人間ドラマは元カレだけじゃないんです。返してもらったモノで喜ぶ人もいれば、過去の出来事を根に持ち、怒る人もいる。モノはモノでしかないのに、そこに込められた人の想いってのは様々なんだなっていうところに奥深さを感じましたね。

みんなも絶対あるはずです。いらないのに捨てられないモノ。もちろん、機能や物質的価値を鑑みて取ってある場合もあるでしょうが、案外思い出だったり、思い入れだったり、そういうのが理由で取っておくこともあるんじゃないでしょうか。僕も何年か前までは小学校や中学校のノートや教科書、
テスト、プリント類など全部取ってありましたから(今はほとんどないですがw)。

そういう過去に縛られてしまうのが人間らしいですよね。そして、モノを捨てるときというのは、想いを断ち切ったとき、もしくは断ち切ると覚悟を決めたときなんでしょうね。この映画を観て感じるのは、「モノと想いのつながり」とどう折り合いをつけていくかってことです。何でもかんでも捨てればいいってわけではないし、「ときめき」で決めてもいいけど、もっと自分なりの折り合いのつけ方を見つけた方がいいなと思いました。捨ててから後悔しても遅いですからね、特に思い出が詰まるモノに関しては、よく考えてから断捨離しましょう。


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