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大御所歌手とアシスタントによる夢に向かって進んでいく映画『ネクスト・ドリーム/ふたりで叶える夢』

【基本情報】

 原題:The High Note
製作年:2020年
製作国:アメリカ、イギリス合作
 配給:東宝東和

【個人的順位】

鑑賞した2020年日本公開映画ランキング:27/199
 ストーリー:★★★★☆
キャラクター:★★★★☆
    映像:★★★☆☆
    音楽:★★★★☆

【あらすじ】

マギー(ダコタ・ジョンソン)の仕事は、子供の頃から憧れていたハリウッドの歌姫グレース(トレイシー・エリス・ロス)のアシスタント。音楽プロデューサーになるという夢を抱き、きらびやかな世界で働いていることを幸運に感じているが、実際は雑用ばかりの日々。

そんなある日、彼女は魅力的な歌声を持つデヴィッド(ケルヴィン・ハリソン・Jr)と出会い、運命が大きく変わり始める。

一方、歌姫のグレースは、過去のヒット曲ばかり歌っているが、本人は新しいアルバムを作りたいと思っていた。しかし、長年連れ添ったマネージャーのジャック(アイス・キューブ)から提案されたのはラスベガスでの長期公演。彼はグレースの新作アルバムに興味を持つ人がいるとは思っていなかったのだ。ラスベガスでの公演は安定したキャリアではあるが、過去のヒット曲を歌うことになるため、新作を出したいグレースの想いは揺らいでいた。

そんなグレースを見たマギーは、「本当にやりたいことをやらなくていいの?」と食ってかかるが……。

【感想】

これはいい映画でした。"『プラダを着た悪魔』を彷彿とさせる"ってあったので、この映画のために先日初めて『プラダを着た悪魔』も観たんですけど(笑)

で、結論、『プラダを着た悪魔』とは近からずとも遠からずって感じでした。確かに鬼上司のような歌手と、それに翻弄されるアシスタントっていう関係性は似ているものの、中身はけっこう異なりますね。

あちらは自分に絶対の自信を持つ編集長と、ファッションに興味のないジャーナリスト志望の女性アシスタントの話ですが、こちらは自らのキャリアに迷いを見せる歌手と、音楽プロデューサーになりたいがために、裏でこっそりプロデュース業をしちゃうアシスタントの話。一見似ていますが、今作の方がボスである人物の葛藤や、主人公が持つ芯の強さや行動力が目立つ作りとなっているのが特徴的でした。

そこが、今作の面白いところでもあるんですよ。マギーは音楽プロデューサーになりたいという強い意志があるので、グレースに振り回されながらも、彼女の歌をこっそり自分でアレンジして提案するし、まわりに対しても自分の意見をしっかり言えるんですよ。さらに、デヴィッドにはアシスタントであることを隠し、音楽プロデューサーだと偽って、2人で新しい曲作りを始めるほど、夢に対してあふれんばかりの情熱を持てるところが魅力でした。こういうところは、『プラダを着た悪魔』のアンドレア(アン・ハサウェイ)には見られなかったところかなーと。

一方、グレースはすでに音楽業界における大御所であり、自分の実力に自信はありつつも、昔のようにヒットが出せないことに行き詰まりを感じているんですよね。だから、新作アルバムを出したい想いがあっても、まわりの言う通り、過去のヒット曲を歌い続けるしか道がないのかも、、、と葛藤するところが、大物歌手とはいえ人間なんだなと思えるところでした。

そんなグレースにずっと憧れを持ち、自身も自分のやりたいことに邁進しているマギーだからこそ、「新作を出したいならやるべきだ」と期待と信頼を込めて食ってかかんですけど、そこが現実を見る年長者と夢を追い続ける若者の想いが交錯する印象的な場面です。

僕も歳を重ねてきたからわかるんですが、やっぱりなかなかチャレンジってしづらくなってくるんですよね。特に大物歌手になって知名度や富などを手にしたら余計にそうかもしれません。グレースも40歳を過ぎて全米で1位を取った女性は4人しかおらず、その中で黒人が1人だけだったことを踏まえ、やりたくてもなかなか一歩を踏み出せないというところは共感できました。

綺麗ごとかもしれませんが、そんなグレースに夢をあきらめないで欲しいと訴えるマギーのような存在って大事だと思いますし、身のまわりにいてほしいですよね。

「やりたいことがあるならあきらめずにやるべきだ」っていうメッセージを大物歌手とアシスタントという2人の女性を通じて描き出すこの映画は、自分のキャリアについて思うところがある人は観てもいいかもしれません。

なお、グレース役を演じたトレイシー・エリス・ロスは、あのブラック・ミュージック界の大御所ダイアナ・ロスの娘なんですよ。また、デヴィッド役のケルヴィン・ハリソン・Jrも歌がうまいことで有名らしいです。そんな2人の優しく力強い歌声もこの映画を楽しめるポイントでした。

海外の映画の役者って、演技だけじゃなくて、歌や踊り、武術において、高い技能を有している人がいるから、キャラクターがとても魅力的に映りますよね。


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