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同じ家族でも"望み"が交錯する人間ドラマが見ごたえある『望み』

【基本情報】

製作年:2020年
製作国:日本
 配給:KADOKAWA

【個人的順位】

鑑賞した2020年日本公開映画ランキング:37/148
 ストーリー:★★★★☆
キャラクター:★★★★☆
    映像:★★★☆☆
    音楽:★★★☆☆

【あらすじ】

一級建築士の石川一登(堤真一)とフリーの校正者の妻・貴代美(石田ゆり子)は、一登がデザインした邸宅で、高校一年生の息子・規士(岡田健史)と中学三年生の娘・雅(清原果耶)と共に幸せに暮らしていた。

しかし、規士は怪我でサッカー部を辞めて以来、夜遊びが増え、無断外泊が多くなっていた。

冬休みのある晩、規士は家を出たきり帰らず、連絡が途絶えてしまう。翌日、一登と貴代美が警察に連絡すべきか心配していると、テレビで高校生の男子生徒が殺害されたというニュースが流れる。

警察の調べによると、その被害者と規士は交友関係があり、規士が事件に関与している可能性が高いという。さらに、もう一人殺されているという噂も出回る。

規士は犯人なのか、それとも被害者なのか。家族それぞれの抱く"望み"が交錯する。

【感想】

これは濃厚な映画でした。行方不明の息子に対する家族の想いがすごく強烈に刺さります。

まだ事実関係がはっきりしないうちから、様々な噂が飛び交い、SNSで話題になり、マスコミが押し掛けてくる日々。

もし息子が犯人だったら、両親は職を失い、妹も受験ができなくなるかもしれません。その上、被害者に億単位の賠償金を支払うことにもなるし、一生まわりから非難されながら生きていかねばならない可能性だってあります。自分とは関係ないところで、人生が狂ってしまう恐怖は尋常じゃないと思います。

でも、もし息子が被害者だったらそういうことはほぼなく、世間も同情の目で見てくれるかもしれない。

いくら愛する家族の一員といえども、上記のようなことが頭をよぎると、
どうしても息子が犯人じゃなかったらいいのに、という現実的かつ残酷な考えが浮かんでしまいますよね。それは、「被害者でいてくれた方がいい」という想いの裏返しのようにも取れます。

特に、父と妹はその考えが強いように思いました。もちろん、明確には言いませんが。ただ、母は「犯人であっても生きていてくれさえすればいい」という考えを主張するので、同じ家族でも考えが分かれるところはとても印象的でした。当然、みんな犯人でないことは祈るし、そう信じたいけれど、どちらを取るかと言うと、、、そう考えただけでちょっと怖くなります。

ただ、犯人であろうと被害者であろうと、どちらに転んでも悲しみと苦しみが待っていることに変わりはありません。僕は原作を読んでいないので、果たしてどちらになるのか、その興味だけでメチャクチャ集中して観れました。

その家族間の思惑の違いを肌で感じていく中で、何よりもすごいなと思ったのが堤真一と石田ゆり子の演技です。精神的に追いやられたときの疲れた表情から、激昂して言い争うときの迫力まで、2人の演技は凄まじく、見入ってしまいます。

大切な人が加害者か被害者のどちらかになりそうなとき、当事者は何を考えるのか、深く考えさせられる映画でした。


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