見出し画像

まさに"サークル・オブ・ライフ"だった『ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方』

鑑賞した2020年日本公開映画ランキング:10/49
驚き😳:★★★★☆
感動😭:★★★☆☆
自然🌲:★★★★★
動物🐕:★★★★★

予告からして「まだ都会で消耗してるの?」的な話かと思ったのですが、むしろ田舎の方が消耗してるじゃないかっていう(笑)いやでも、これすごいですよ。『ライオン・キング』以上のサークル・オブ・ライフ。『ドクター・ドリトル』以上の動物たちのバリュー。人間社会じゃ到底なしえないダイバーシティ。ドキュメンタリーゆえの驚きと感動。・゜・(ノД`)・゜・。

【どんな映画?】

事の始まりはジョンとモリ―が殺処分直前の犬を保護したことに起因します。その鳴き声がうるさくてアパートを追い出されるハメになってしまったんですね。料理家だったモリ―は元々本当に体のいいものを作りたいと思っていたので、夫婦そろって郊外へと移り住むのですが、そこは200エーカー(東京ドーム17個分)の荒れた土地でした。果たして、ここを緑いっぱいの土地にすることができるのでしょうか。

【感想】

この映画の面白さは2点あります。

ひとつは都会に住んでいた2人がイチから農場を作るという過程。
伝統農法を目的として投資家を募り、上記の土地を購入するものの、あまりの広さと荒れた状況にお手上げ状態。そこで農業に詳しい人を雇ったり、手伝ってくれる仲間を募集するところから始まります。井戸を直し、ため池を作り、土を耕し、植物を埋め、動物を放つ。気の遠くなるような作業の中、長い間伝統農法を提唱していたアランの「正しくやる時間はないが、やり直す時間はいくらでもある」と言う言葉を信じて、観察とトライアンドエラーをひたすら繰り返します。

そして、もうひとつがあらゆるトラブルを自然の力で解決するところ。
とにかく、緑いっぱいの土地になるまでには時間がかかるため、本当にちゃんとできるのかと、みんなお先真っ暗感があったのですが、アランの言った通り、年月を経るごとにどんどん動植物の共存が行われ、循環していくんです。そうなると自分たちが放った動物とは別に、野性の動物も交じってくるのですが、一番厄介なのがコヨーテ。

やつらは飼っている鶏を何百羽と食い殺していくのですぐに駆除したいところですが、それだと伝統農法の意に反してしまいます。そこでどうするかというと、飼っている犬を番犬として、鶏を守らせるんです。そうすると、コヨーテたちは鶏ではなく、ホリネズミ(モグラみたいなやつです)をターゲットにするため、鶏が食べられなくて済みます。

逆に、コヨーテの数が足りないと、ホリネズミの数が増えてしまいます。このホリネズミもまた厄介で、彼らが増えすぎると、木の根っこを食べられてしまい、そうなると被覆植物が死んでしまうので、雨が降ったときに地面に水が吸収されづらくなるんだとか。だから、ホリネズミは消えた方がいいんです。さらに、フクロウやヘビも放って、空と陸の両方からホリネズミを減らそうとします。

ところが、ホリネズミも減らし過ぎると、彼らの担う土の中に空気を入れるという役目がなくなってしまうので、数のバランスは難しいと感じました。

同じようなことは他のところでもあり、カタツムリは木の葉っぱを食い散らかしてしまうので、駆除剤などを使わないためにアヒルに食べさせます。
果物を荒らすムクドリは鷹に食べさせ、植物を荒らすアブラムシはてんとう虫に食べさせ、牛の糞に産み付けられるウジ虫は鶏に食べさせ、あらゆる動物の役目をしっかり見極めた上で、トラブルに対処しているのが圧巻でした。

しかも、動物たちが死んだ場合、その死骸は農場に生息する90億もの微生物が分解して土に還すというのだから、これまさに『ライオン・キング』でムファサが言っていたことまんまじゃないかと思いました。"サークル・オブ・ライフ"ここに極まれりですね。

今ではもうしっかり循環の仕組みができているのですが、ここに至るまでの時間と苦労は凄まじいと思います。予想外の出来事や人の手ではどうしようもないことがある中で、長い間の観察を経て初めてわかることも多いです。
都会にいると、何かとすぐに結果を求められると思いますが、一度この映画を観て、長い目で見ることの大切さや、人間は「生かされているんだ」ということを感じてみてもいいんじゃないでしょうか。

あの荒れ果てた土地がここまで緑いっぱいになるのが感慨深すぎたのと、そのきっかけを与えてくれた一匹の犬の存在が尊すぎて涙出ちゃいました。・゜・(ノД`)・゜・。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?