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人類史上最も胸糞悪いビジネス会議だった『ヒトラーのための虐殺会議』

【個人的な満足度】

2023年日本公開映画で面白かった順位:10/10
  ストーリー:★★★★☆
 キャラクター:★★★☆☆
     映像:★★★☆☆
     音楽:-(BGMなし)
映画館で観たい:★★☆☆☆

【作品情報】

   原題:Die Wannseekonferenz(The Conference)
  製作年:2022年
  製作国:ドイツ
   配給:クロックワークス
 上映時間:112分
 ジャンル:伝記、ヒューマンドラマ
元ネタなど:史実「ヴァンゼー会議」(1942)

【あらすじ】

1942年1月20日正午。ドイツ・ベルリンのヴァンゼー湖畔にある大邸宅にて、ナチス親衛隊と各事務次官が国家保安部長官のラインハルト・ハイドリヒ(フィリップ・ホフマイヤー)に招かれ、高官15名と秘書1名による会議が開かれた。議題は「ユダヤ人問題の最終的解決」について。「最終的解決」はヨーロッパにおける1,100万ものユダヤ人を計画的に駆除する、つまり抹殺することを意味するコード名。

移送、強制収容と労働、計画的殺害など様々な方策を誰一人として異論を唱えることなく議決。その時間は、たったの90分。史上最悪の会議の全貌が80年後のいま、明らかになる。

【感想】

これはこの世に生きる者として観ておいて損はない映画ですね。ものすごく衝撃的な内容でしたし、歴史を知るという意味でもとても有意義です。

<タイトル通りの虐殺会議>

ヒトラーによるユダヤ人の大量虐殺は多くの人が知っていることでしょう。学生の頃、歴史の授業で必ず通る道ですよね。また、過酷な環境に追いやられたユダヤ人を題材とした映画も数多くあります。でも、その大量虐殺の方法について話し合われた「ヴァンゼー会議」を扱った劇場公開映画は、これが初めてじゃないですかね。調べたところ、2001年に『謀議』というタイトルで、アメリカとイギリスで共同制作されたドラマはありましたけど。

これ、すごいですよ。「いかに効率よく大量のユダヤ人を殺すか」について、淡々と議論が進められていくんですから。「そんな非人道的なこと、本当にやるんですか?」みたいなことを言う人、一人もいないんですよ。学校でも会社でも、大体、会議で10人以上集まると、誰かしら「そんなことやりたくないんだけどな」っていう人いますよね。「別に興味ないのに呼ばれました」みたいなのも(笑)なので、このヴァンゼー会議でもそういう人がいるのではないかなと期待したんですが、全員が「ユダヤ人を殺すこと」について疑いの余地がないんですよ。まあ、トップのヒトラーがやれってんだから、やらない理由はないんでしょうけど。。。やらなかったら自分が殺されるかもしれませんしね。。。

<衝撃的な内容なのに見え方はとてもビジネスライク>

大の大人が15人も集まって、ひたすらユダヤ人1100万人の処分の仕方をあれこれ話し合います。しかも、明確に「殺す」とは言わないんですよ。「ユダヤ人問題の最終的解決」ってぼかして。他にも「特別処置」とか。そういうところにビジネスっぽさを出すのが妙にイラッとするんですけど(笑)

この膨大な数のユダヤ人たちをどうやって移送しようかとか。銃殺だとコストがかかるから1ヶ所にまとめて毒殺にしようかとか。使えるユダヤ人だけ残して、使えないのから消していこうかとか。ハーフやクォーターは断種しようかとか。そんなおぞましい議論を淡々と続けるんですよ。。。もはやユダヤ人を人として見ていないんですよね。モノとか家畜以下の存在とでも思ってるんじゃないでしょうか。正気の沙汰じゃありません。人の心を失っているとしか言いようがないです。。。そして、大したトラブルもなく、会議は90分で終了します。結果は、、、歴史が示す通りです。。。

<映画として面白いかは別>

とても勉強になる内容ではあるんですが、、、正直、映画として面白いかというと、、、うーんって感じですね。だって、90分の会議をじーっと眺めてるだけですからね。自分が関係ない会議とか眠くなるじゃないですか(笑)あれと同じで、最初はあまりのおぞましさに興味津々で観てるんですけど、だんだんと睡魔がやってきます。そもそも90分って会議としても長いですよね。僕はギリギリ大丈夫でしたが、寝ちゃう人はいるんじゃないでしょうか(笑)エンドロール含めて、BGMも一切なかったですし。

同じ会議モノの映画なら、『日本のいちばん長い日』(1967)の方が僕は面白いと感じました。あれは会議以外のシーンもありましたし、何よりも日本人としての当事者意識が働きやすいですから。

<そんなわけで>

歴史を知るという意味では有意義な内容です。ユダヤ人の大量虐殺という史実は有名だけれど、それを実行に移す前段階で、その手順や手法などを話し合っていたというのは、言い方はよくないかもしれないけど興味深かったです。

それにしても、この会議に参加した人たちだけじゃなく、実際にユダヤ人を殺害した兵士たちは、後悔の念などは抱かなかったのでしょうか。日本では原爆を落としたアメリカ兵へのインタビューなんかやってたりしますけど、ホロコーストについてはどうなのか気になりますね。。。


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