実写版とまるで異なる『ジョゼと虎と魚たち』

【基本情報】

製作年：2020年
製作国：日本
　配給：松竹、KADOKAWA

【個人的順位】

鑑賞した2020年日本公開映画ランキング：47/204
　ストーリー：★★★★☆
キャラクター：★★★☆☆
　　　　映像：★★★★☆
　　　　音楽：★★★★☆

【あらすじ】

趣味の絵と本と想像の中で、自分の世界を生きるジョゼ。幼い頃から車椅子の彼女は、ある日、危うく坂道で転げ落ちそうになったところを、大学生の恒夫に助けられる。

海洋生物学を専攻する恒夫は、メキシコにしか生息しない幻の魚の群れを
いつかその目で見るという夢を追いかけながら、バイトに明け暮れる勤労学生。

そんな恒夫にジョゼとふたりで暮らす祖母・チヅは、あるバイトを持ち掛ける。それはジョゼの注文を聞いて、彼女の相手をすること。

しかし、ひねくれていて口が悪いジョゼは恒夫に辛辣に当たり、 恒夫もジョゼに我慢することなく真っすぐにぶつかっていく。

やがて縮まっていく二人の距離。これまで限られた世界しか知らなかったジョゼは恒夫との触れ合いを通じて、外の世界へ飛び出すことを決めるが……。

【感想】

実写版と全然違うじゃん！っていう驚きの映画でした。原作の小説は読んでいないので、どちらが原作に近いかはわかららないのですが、それにしても違いすぎるだろっていう。もはや完全なるリブートですね。

どっちが好きかは好みによりますが、僕は実写版の方が好きでした。実写版の方が生々しかったんですよね。ジョゼは暗いし、恒夫はスケベな大学生でセフレ持ち。ジョゼとの情事も『寄生獣』並みに食べるようなキスが印象的だし、ラストは恒夫が半ば逃げるように別れるという哀愁漂う人間らしい作品だったように思います。

それに対して、アニメはとにかく綺麗な純愛モノ。画の綺麗さもそうなんだけど、より前向きで明るい希望に満ちた作品となっています。当然、男女の絡みなんて一切なく、肉体的よりも精神的なつながりを重視したような感じですね。

特に、キャラクターの描かれ方が大きく変わっています。ジョゼはわがままではあるんですが、どちらかと言うとツンデレ感が強く、実写版のような暗い印象はほとんどありません。また、恒夫との交流を通じて、絵を仕事にしようとする主体性もありました。

恒夫はスケベとは程遠く、吉沢亮を彷彿とさせるようなスラッとしたイケメンで、ダイビングが趣味という爽やかボーイです。しかも、書いた論文が海外の大学の教授の目に留まるほどの頭のよさも併せ持つんですよね。

彼らが織り成すストーリーもだいぶ違います。恒夫を巡るジョゼと舞の対抗心が垣間見えたり、後半で訪れる悲劇など、実写版よりもストーリーに波があって、ドラマチックな展開になっていました。正直、物語の構成としてはアニメ版の方が面白いと思います。現代風にアレンジされているので、若い子なんかはアニメの方が好きかなって勝手に思っちゃいます。

なので、綺麗な純愛モノを観たいならアニメ版、生々しい人間ドラマを観たいなら実写版、という感じですかね。どちらもすごくいい作品であることに変わりはないです。

アニメ映画『ジョゼと虎と魚たち』公式サイト