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言葉を話せず耳が聞こえない世界の絶体絶命感が凄まじい『殺人鬼から逃げる夜』

【個人的な評価】

2021年日本公開映画で面白かった順位:85/200
   ストーリー:★★★★☆
  キャラクター:★★★★☆
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★☆☆

【以下の要素が気になれば観てもいいかも】

韓国映画
ホラー
猟奇的殺人犯
耳が聞こえない

【あらすじ】

お客様相談センターで手話部門を担当しているギョンミ(チン・ギジュ)は、自分と同じく聴覚に障害のある母親(キル・ヘヨン)と2人暮らし。

ギョンミはある夜、血を流して倒れている女性を発見する。助けを呼ぼうと慌てるギョンミだったが、近くに潜んでいた連続殺人鬼のドシク(ウィ・ハジュン)に捕まってしまう。

一瞬の隙をついて逃げ出し、非常ベルを押すギョンミ。しかし、管制センターからの問いかけは彼女には聞こえない。

事件現場を目撃してしまったギョンミは、ドシクの次のターゲットにされてしまう。家にまで押しかけ、命を奪おうとするドシク。全力で逃げるギョンミだが、耳も聞こえず、言葉も話せない彼女には、追いかけてくる犯人の足音も聞こえなければ、助けを呼ぶ言葉も届かない。

ギョンミの逃走とドシクの追撃が、今、始まる───!

【感想】

耳の聞こえない主人公が殺人鬼から逃げ惑う話だけど、その設定が秀逸な映画でした!耳が聞こえず言葉を発せられない状況が、こんなにも辛いなんて。怖いかどうかってよりも、ただただもどかしい映画だったと思います。

<聞こえない恐怖>

韓国映画でこの手の話だと、目の見えない主人公が偶然ひき逃げ事故に居合わせてしまう『ブラインド』(2011)って映画がありますね。僕は観てないんですが、そのリメイク版である『見えない目撃者』(2019)は観ていて、そのスリリングな展開が面白かった記憶があります。あれは目が見えない分、音や気配に頼らなくてはならない映画でした。

一方、今回の映画は音が聞こえない分、視覚が一番大きな情報源となります。聴覚障がい者用に、音に反応して光るセンサーや周囲の音の大きさを示す装置など、視覚で音を認識する方法は用意されているんです。いるんですが、それで音がしているのはわかるものの、どの方向かまではわからないんですよね。そこは目で追うしかなくて。当然、自分の視野に入る範囲内でなければ特定はできません。そこがこの映画の怖いところでして。"確実にいる"のに把握できないっていう。

<伝えられない恐怖>

そして、この映画でもうひとつ怖いなと感じたところがあります。それは、言葉をうまく話せないがために、恐怖を伝えたり、助けを求めたりすることができないこと。被害に遭っているのに、すぐそこに殺人犯がいるのに、誰にも伝えられないんですよ。まわりの人もどうしていいかわからないですし、挙句の果てには、殺人犯の言う都合のいいことを信じてしまうことも。

ジャンル的にはホラーですけど、幽霊とかスプラッターとかではなく、人間の感覚が制限されてしまう不自由さが、この映画における一番の怖いところでした。

<惜しいなと思ったところ>

このように、設定も秀逸ですし、韓国映画らしく、キャストさんたちの感情むき出しの演技もすごくいいんです。ただ、後半はちょっと間延びしちゃったって感じでしたね。。。ずっと同じように逃げているだけの構図なので、少し飽きてしまう部分がありました。

あと、犯人の殺人の動機が特にないことや、ラストのクライマックス部分が「何でそうしたんだろう」っていう疑問もなくはないです。まあ、猟奇的殺人鬼ってことなので、特に犯行動機なんかはないのかもしれませんし、ラストのところも、ああいう形にしないと犯人が止まらなかったっていうことなのかなとも思いますが。

<その他>

上記の通り、ツッコミどころもちょっとはありますが、全体的にスリリングな展開で楽しめます。邦画のサイコホラーではなかなかああいう勢いの作品って少ないじゃないですか。なので、そこはさすが韓国映画だなって感じます。映画館向きの作品だと思うので、観るなら劇場で観るのがオススメです。


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