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「世界よ、これが日本のアベンジャーズだ」と言いたくなる『セイバー+ゼンカイジャー スーパーヒーロー戦記』

【個人的な評価】

2021年日本公開映画で面白かった順位:43/149
   ストーリー:★★★★☆
  キャラクター:★★★★★★★★★★
      映像:★★★★☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★★☆

【以下の要素が気になれば観てもいいかも】

特撮
仮面ライダー
スーパー戦隊
石ノ森章太郎

【あらすじ】

本の執筆でスランプに陥り悩んでいた飛羽真(内藤秀一郎)は、ユーリ(市川知宏)の薦めである本を受け取る。しかし、開くと辺りが光に包まれ、目が覚めると人間と機械が共存する"ゼンカイジャー"の世界にいた。

同じ頃、介人(駒木根葵汰)の身にも同じことが起こり、倫太郎(山口貴也)と出会っていた。どうやら、あらゆる世界が混ざり合っておかしなことになっているようだ。

元に戻すべく飛羽真は介人と協力し、さらに歴代の仮面ライダー、スーパー戦隊の力も借り、2大ヒーローたちは集結する。

そして、鍵を握る謎の少年との出会い。

「仮面ライダー」、「スーパー戦隊」の始まりを描いた、2大ヒーローの生みの親・石ノ森章太郎が託した願いを紐解く、ヒーロー誕生の秘密とは。

【感想】

仮面ライダー50周年とスーパー戦隊45作品を記念した作品。僕が特撮ヒーローの映画を観たのは『五星戦隊ダイレンジャー』(1993)以来、実に28年ぶりですね。あれは同時上映の『仮面ライダーZO』を観たいという親父に連れて行かれたので、半分は無理矢理だったんですけど(笑)

<エモさ爆発!>

この映画では、これまでのすべての仮面ライダーとスーパー戦隊が一堂に集結する作品で、もはや死語っぽさあるんであまり使いたくはないんですが、「エモい」という言葉がこれほど合う作品はないんじゃないかと思いました。

僕は小学校を卒業してから、特撮ヒーローにはほとんど触れていなんですけど、小さい頃に観ていたヒーローたちがズラッと並ぶシーンは本当に圧巻でしたね。まだ自分の中に、あの頃の自分がいたと思うと感慨深いです。まあ、思い出補正がだいぶ強いですけどね。ちなみに、今回は人数が多いからか、スーパー戦隊はレッドのみでした。

<過去作は制覇していなくても大丈夫>

僕のモットーとして、シリーズモノやリメイク作品は、必ずオリジナル作品をすべて鑑賞してから最新作を鑑賞するというのがあるんですけど、さすがにこれは無理でした。劇場版も含めると全部で4,000話近くもあるので。。。とはいえ、この映画を観に行くぐらいの人は、小さい頃にいくつかは仮面ライダーもスーパー戦隊も観ていると思うので、それで十分だと思いますよ。マーベル作品を観ないまま、『アベンジャーズ』を観るとこんな感じなんだろうなって感じです(笑)もちろん、全部制覇している人からしたら、余計に楽しめるとは思いますけど。

<ストーリーは非常に惜しい>

昔憧れたヒーローたちが勢ぞろいする姿はそれだけで大興奮なんですけど、ストーリー的には惜しいなっていうのが正直な感想です。この映画はどちらかと言えば、仮面ライダー寄りで、世界観も『仮面ライダーセイバー』が元になっています。45冊の『スーパー戦隊の禁書』と35冊の『仮面ライダーの禁書』の封印が解かれ、現実と物語の世界が曖昧になっていくというものなので、お互いがお互いの世界に迷い込んでしまうっていう流れです。

ただ、、、、そこで止めて欲しかったんですよ。仮面ライダーとスーパー戦隊の世界だけに留めておいていただけたらもう少しわかりやすかったと思うんですけど、それに加えて、『西遊記』や『里見八犬伝』の世界も交じってくるんで、「あれ、こんな世界観のヒーローいたっけ?」とちょっと混乱してしまいます。特に、過去作品を全部観ていない場合は、「そういうヒーローもいたんだな」って納得してしまいそうですが、上記の2作品は単純に文学作品の世界で、特撮ヒーローとは関係ありません。

<謎の少年の設定が曖昧なのがもったいない>

そして、本作のキーパーソンである謎の少年・章太郎(鈴木福)の存在。もう名前からして、一発で誰かわかっちゃいますよね。この章太郎の立ち位置が曖昧だったのが、非常にもどかしかったです。これを読んでいる人はみんな大人で、もう答えがわかっていると思うので言ってしまいますが、仮面ライダーおよびスーパー戦隊の生みの親、石ノ森章太郎先生です。彼が若い頃の姿をしてみんなといっしょにいるんですが、彼は何なんだろうって。

そもそも作者とその創作物であるヒーローたちが同一世界にいるということは、作者が物語の世界に入り込んだという設定なのでしょうか。それはつまり、ヒーローは自分たちのことを、現実世界に生きる存在ではなく、架空の存在だったと認識するのかってところが判断つかなくて。確か物語の終盤でヒーローの誰かが「俺たちも物語だったんだよ」って言っていた気がするので、おそらくそうなんじゃないかと思いますけど、あんまり深く語られていないんですよねー。せめて「自分の世界に戻っても、ちゃんと俺たちを描けよ!」ぐらいのセリフがあれば確信できるんですけどね(笑)何にせよ、物語の中に原作者を登場させて、物語やヒーローを描かせることで、特撮ヒーローの生みの親に対するリスペクトは感じました。

<終盤の乱闘シーンはもはやお祭り>

物語の終盤では、歴代の仮面ライダーとスーパー戦隊(のレッド)たちが入り乱れて、敵との大乱闘を繰り広げます。小さい頃に観ていたヒーローたちが大暴れするから、ノスタルジーからくるエモさはあったんですが、声が納得できなかったんですよね~。アカレンジャーと仮面ライダー1号だけはそのまま?っぽい感じでしたが、他の歴代ヒーローたちは声が高すぎて。。。おそらく今の若い子の声を使っているんでしょうが、コレジャナイ感がすごくて。。。せめて昔の作品の音声データを使って欲しかったですね。

それにしても、ここのシーンは「昔のヒーロー出しておけばおじさん喜ぶでしょ?」的な感じが強かったです。特に誰かをフィーチャーすることはなく、ひたすら歴代のレッドと仮面ライダーが敵と取っ組み合いをするっていうだけなので。しかも、引きの画が多いので、遠くからだとどのヒーローかがわかりづらいっていう。なので、各ヒーローの上に、戦隊名のロゴが出ていました(笑)いい工夫だと思います。

<もはやヒーロー云々よりも原作者に対する感謝の気持ちの方が強い>

パッと見はすべてのヒーローが集結して大暴れするっていう構図ではあるんですけど、そこに人間ドラマやキャラクターの深掘りってのは感じられなかったんですよ。それは、強大な敵を倒すことと章太郎のエピソードが、うまくかみ合っていなかったのが要因かなって思うんですよね。ヒーローたちが活躍する話にしたいのか、原作者へのリスペクトを出したいのか。その両方が綺麗に描ければよかったんでしょうけど、どちらもちょっと中途半端になってしまったかなって。

ただ、こうやって文章を書いていて思うのは、これは石ノ森章太郎先生への感謝の気持ちを表したかったんじゃないかなってことです。作中で、章太郎少年が芽依(川津明日香)に懐くシーンがあるんですよ。僕はてっきり思春期の男の子が、綺麗なお姉さんに夢中になっちゃうやつかなって思ったんですけど、その後いろいろ調べていたら、ちょっと泣ける話がわかって。実は、石ノ森章太郎先生にもお姉さんがいらして、彼が漫画家になる夢を唯一応援してくれた人らしいんですよね。だから、この映画はけっこう石ノ森章太郎先生のメタファーがあるんだなって。それを踏まえると、歴代のヒーローたちが集うことよりも、原作者への感謝やリスペクトを改めて表現したかったのかなーって。

なので、ヒーローたちが大暴れするところは子供向けで、原作者に関わるエピソードは大人向けってことですかね。僕は一回観ただけだと、なかなかすぐにそこまではわかりませんでしたが。。。この映画、尺が100分なんですけど、そのうち20分ぐらいは、次の新しい仮面ライダーである『仮面ライダーリバイス』のエピソードに使っちゃってるんで、どうせならフルで今回の映画にしてもよかったかもしれません。そうすることで、ヒーローの戦いも原作者への感謝の気持ちも、もう少しうまくまとめられた気がしないでもないです。あるいは分作にするとか。でもそうすると子供向けの映画じゃなくなるのか。。。あー、バランスが難しい!(笑)

なので、個人的には、『ゴーカイジャー ゴセイジャー スーパー戦隊199ヒーロー大決戦』(2011)の方が、話もわかりやすい上に、かつてのヒーローを演じた役者さんも起用してて好きですね。

<改めて思うマーベルのすごさ>

この映画を観ると、やっぱりマーベル作品、中でも『アベンジャーズ/エンドゲーム』ってすごいなって思いますよ。全体的な映像クオリティもそうですけど、キャラクター全部出して、その全員に見せ場を作ってますからね。今回の映画も、せっかくの記念作品なので、オダギリジョーさんや佐藤健さん、菅田将暉さん、竹内涼真さん、吉沢亮さん、松坂桃李さん、横浜流星さん、志尊淳さん、みんな勢ぞろいしたらやばかったですけど、さすがにそこまではありませんでした(笑)他に特徴的だなって思ったのが、仮面ライダー50周年のロゴの映像が、マーベルスタジオのロゴに似ているのと、『仮面ライダーリバイス』に出てくる仮面ライダーリバイがヴェノムっぽいデザインってことですね。やっぱりマーベルのことも意識しているんでしょうか(笑)

<その他>

本作を観ると、改めて日本のアベンジャーズは特撮ヒーローだなって思います。一時期、ジャンプとかでもクロスオーバーがあってもいいよねって考えたこともあるんですが、よく考えたら世界観や戦闘力がバラバラすぎて、格闘ゲームで戦うぐらいならいいけれど、ストーリーにはしづらいかなって感じました。どんなに全集中の呼吸を使っても、超特大かめはめ波は防げないでしょうし(笑)その点、現実世界を舞台に戦い続けている仮面ライダーやスーパー戦隊はクロスオーバーしやすいですよね。

かなり長々と書いちゃいましたが、今回の映画は歴代の仮面ライダーとスーパー戦隊が一堂に集結することで、ノスタルジーからくるエモさが爆発する作品なので、ストーリーはちょっと惜しいところもありますが、今ヒーローが好きな人、今は離れちゃったけど小さい頃憧れていた人、みんなに観てもらえたらなって思いました。


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