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ここまで尊いゴールキーパーがかつていただろうかと思った『キーパー ある兵士の奇跡』

【基本情報】

 原題:The Keeper
製作年:2020年
製作国:日本
 配給:キノフィルムズ

【個人的順位】

鑑賞した2020年日本公開映画ランキング:36/166
 ストーリー:★★★★☆
キャラクター:★★★★☆
    映像:★★★☆☆
    音楽:★★★☆☆

【あらすじ】

1945年、ナチスの兵士だったトラウトマン(デヴィッド・クロス)は戦地で捕虜となった。イギリスの収容所でサッカーをしていたところ、地元チームの監督の目に留まり、ゴールキーパーとしてスカウトされる。

トラウトマンは監督の娘マーガレット(フレイア・メーバー)と結婚し、名門サッカークラブ「マンチェスター・シティFC」の入団テストに合格する。
しかし、ユダヤ人が多く住む街で、トラウトマン夫妻は想像を絶する誹謗中傷を浴びる。

それでも、トラウトマンはゴールを守り抜き、マーガレットは夫を信じ続けた。やがて、彼の活躍によって世界で最も歴史ある大会でチームは優勝、トラウトマンは国民的英雄となる。

だが、トラウトマンは誰にも打ち明けられない"秘密の過去"を抱えていた。そして、その秘密が思わぬ運命を引き寄せてしまう。

【感想】

実在したゴールキーパー、バート・トラウトマンの伝記的な映画です。こういう実話ベースの映画って淡々と進んでいくことが多いんですが、これはサッカーを題材にしていることもあってか、前半はともかく、後半は非常にドラマチックで感動する展開だったと思います。

本日最初に観た『十二単衣を着た悪魔』で、「男は形で能力を示せ」みたいなセリフがありましたけど、彼はまさにそれを体現したような人なんですよ。

ウィキペディアで、バート・トラウトマンを調べてみると細かくわかるんですけど、彼は若い頃からスポーツに慣れ親しんでいたためか、収容所にいたときにはすでにキーパーとしての腕前はかなりものでした。飛んでくるボールはすべてはじき返す勢いで。そこから現地のクラブで活躍し、マンチェスター・シティFCにも入団するのですが、ついこの前まで戦争をしていたから、イギリス人からしたらドイツ人は多くの命を奪った戦犯にしか見えないんですよね。なので、スタートからまわりは敵だらけというわけです。

当然、たくさんの誹謗中傷を浴び、それだけでも精神的に大きなダメージを受けるとは思うんですが、「戦争はもう終わったから」と数少ない理解者の支えを経て、輝かしい戦績を上げていく過程は涙なしには観られません。

特に、彼のために多くの人を説得した妻の力強い発言は本当にかっこよかったです。「ドイツ人というだけで傷ついている人を束になって叩くのは、もはや加害者である」と言い放ち、最後まで夫を信じ続ける姿は圧倒されました。当時はまだ女性が発言するということすらままならない時代だったと思うので。

そして、トラウトマン本人も試合中の接触事故で大ケガを負いながらも棄権することなく、試合を続行し、チームを優勝に導く姿はまさにヒーローでした。ここがね、僕は一番心を震わせた瞬間ですよ。

でも、物語はそこで終わりません。彼の抱えるトラウマや家族に起こる悲劇、そこからの脱却など、映画だから脚色はあるとは思うんですが、そのドラマチックに変化するストーリーは非常に見ごたえある内容でした。

これ、サッカー好きならもちろんのこと、サッカーを普段観ない人でも面白いと感じられる映画じゃないかと思います。感動必至のヒューマンドラマでした。

それにしても、デヴィット・クロスの顔がたまにブリー・ラーソンに見えるのは気のせいでしょうか(笑)

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