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SNSやAIが発達した世界の友情の在り方に笑って泣いた『ロン 僕のポンコツ・ボット』

【個人的な評価】

2021年日本公開映画で面白かった順位:27/224
   ストーリー:★★★★★
  キャラクター:★★★★★
      映像:★★★★★
      音楽:★★★★☆
映画館で観るべき:★★★★★

【要素】

CGアニメーション
ヒューマンドラマ
ロボットと少年
SNS
AI

【元になった出来事や原作・過去作など】

なし

【あらすじ】

新式ロボット型デバイス<Bボット>。それは、スマホよりハイテクなデジタル機能に加えて、持ち主にピッタリな友達まで見つけてくれる夢のようなデバイス!

そんな<Bボット>で誰もが仲間と繋がる世界で、友達のいない少年バーニーの元に届いたのは、オンライン接続もできないポンコツボットのロンだった。

出会うはずのなかった1人と1体が‟本当の「友情」“を探すハートウォーミング・アドベンチャーが今、始まる!

【感想】

これ、いい映画でした。ストーリー展開のテンポもいいですし、次から次へと事件が起こるので飽きずに観れます。しかも、笑って泣けるっていう。

<とても現実味のあるお話>

少年とロボットの交流っていう設定はオーソドックスなんですが、SNS全盛期の今の時代だからこそ観て然るべきかなとも思う映画なんですよ、これ。

Bボットって、言ってしまえば超進化したスマホ×ロボットみたいなデバイスです。今のiPhoneに備わっているような機能を持ちながら、持ち主の嗜好を学習し、それに合う友達を見つけてくれるんです。映画では勝手に友達見つけて、勝手にフレンドになってるから、ちょっとそこまでは、、、って僕は思いましたけど(笑)若い子なら欲しがるでしょうね、これ。

そういう機能面だけ見れば、今のSNSとそんな変わらないんですよ。まあ、自然な音声認識が可能で、勝手に持ち主の後を付いてきてくれるっていうところは、ちょっとした近未来かもしれませんが。何にせよ、世界観としてはとても身近に感じられます。

<人間らしさを持ったロン>

そこで、主人公のバーニーの元にやってきたのが、ひょんなことから配送トラックから落ちて不具合が生じたBボットのロンです。壊れてますからね、通常のBボットに備わっている機能は起動せず、逆に安全装置も外れているというちょっと危ない不良品なんですよ。

でも、そういう"普通じゃない"存在からこそ、そこにドラマが生まれます。
正常なやり取りができないので、なかなか持ち主の言う通りには動きません。安全装置が外れているので、いじめっ子をやっつけることもできます。それでも、"友達を作る"という目的は果たそうとします。言われたことだけを忠実に守るプログラムより、よっぽど人間らしいんですよ。そこがロンの最大の魅力です。

<人間がやるべきことをロボットがやる皮肉>

アニメーションだからそう見えるってのももちろんあるとは思いますが、バーニーとロンの交流は、もはや人間の友達同士のやり取りにしか見えません。いつもいっしょにいて、わからないことがあれば教えてあげて、本気で笑い合える仲です。『ターミネーター2』でも、「父親代わりの男は大勢いたが、その役を果たせるのはこのマシンだけ」っていうサラ・コナーの印象的なセリフがあるんですけど、本来は人間がやるべきことなのに、ロボットの方が適任だっていうのが、皮肉ながらも心に響くところです。それは、このロンを見ていても感じました。

<SNS社会の問題>

さっき、今の時代だからこそ観るべきって言ったのは、このBボットがスマホの延長のような側面もあるからなんです。ゲームで1位になることにこだわったり、いかに「いいね!」をもらえるかばかり気にしたりして、本気で友達のことを見ていないっていうシーンも描いていて。ここがまさに現代のSNS社会と同じだなって。そういう話自体はいろんな映画やドラマ、ニュースでも目にしますが、まさかこんなところでも描かれるなんて思いませんでした。うまく時事性を持たせた形ですかね。

<"普通じゃない"からこそできることがある>

その後いろいろあって、ロンの不良品ゆえの人間らしさが世界を変えていくことになります。なるんですが、このBボットを開発した会社も、まわりの大人たちも、ずっとロンを「危険物」と捉えて処分しようとしていたんですよ。でも、そんなロンだけが、本当の意味で友達を作るという役目を果たしていたんですよね。

人間がやるべきことをロボットがやるっていう皮肉もそうなんですが、結局、ドラマを生んだり、世界を変えたりする存在っていうのは、こういう"規格外"だったり、"異質なもの"だったりするのかなっていうのも感じます。"正しいこと"をしている以上に、正しいことがあるっていうメッセージとでも言いましょうか。現実世界では、そういう存在ってなかなか理解されないことが多いですけどね。やっぱり人間や組織って、前例がないとなかなか動けないので。。。

<その他>

本当に予想以上にいい映画です、これ。テンポよく進むし、笑いと涙もあるし、SNS時代の人付き合いについても考えさせられるところがあるので。ぜひ映画館で観ていただきたい作品ですね。

ただ、ひとつ気になったのが、あれだけ頑丈なBボットなのに、トラックから落ちただけで不具合が発生するんだって。作中、もっとひどい目に遭っているのになあ(笑)


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