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他人になることで見つからない自分を埋めた若き日のデヴィッド・ボウイを描く『スターダスト』

【個人的な評価】

2021年日本公開映画で面白かった順位:174/229
   ストーリー:★★★☆☆
  キャラクター:★★★★☆
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★☆☆

【要素】

ヒューマンドラマ
音楽
洋楽
デヴィッド・ボウイ

【元になった出来事や原作・過去作など】

・音楽
 デヴィッド・ボウイ『ジギー・スターダスト』(1972)

【あらすじ】

1971年、『世界を売った男』をリリースした24歳のデヴィッド(ジョニー・フリン)は、イギリスからアメリカヘ渡り、マーキュリー・レコードのパブリシスト、ロン・オバーマン(マーク・マロン)と共に、初の全米プロモーションツアーに挑む。

しかし、この旅で自分がまったく世間に知られていないこと、そして時代がまだ自分に追いついていないことを知る。ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、アンディ・ウォーホルとの出会いやファクトリーなど、アメリカは彼を刺激した。

兄の病気もデヴィッドを悩ませていた。いくつもの殻を破り、やがて彼は世界屈指のカルチャー・ アイコンとしての地位を確立する最初の一歩を踏み出す。《デヴィッド・ボウイ》になる前のデヴィッドの姿。

本作は、後にデヴィッド・ボウイの最も有名な別人格“ジギー・スターダスト”を生み出すきっかけとなった瞬間の舞台裏、キャリアのターニングポイント、それに関わった人たち、そして彼の内面と心の葛藤、時代の最先端を見つめる彼の変化を描く。

【感想】

来ましたね、デヴィッド・ボウイ。とはいえ、僕は洋楽をまったく聴かないので、『戦場のメリークリスマス』に出ている人のイメージしかありませんが(笑)それにしても、この『スターダスト』。思い返せば、SOPHIAの『黒いブーツ ~oh my friend~』(1998)の歌詞に出てくることを思い出します。「カバンを安全ピンで留めて MAKE UP FACE 伸びきったTAPE "ZIGGY STARDUST"」と。

<歌よりも人間ドラマに寄せた作り>

正直、デヴィッド・ボウイのファンでもない限りは、あんまり響かないかもなあという印象です。『ボヘミアン・ラプソディ』(2018)や『ロケットマン』(2019)のように、歌を聴かせる作りではありません。あくまでも、別人格であるジギー・スターダストが生まれるまでを追った人間ドラマなので、歌がいっぱい出てくることを期待していると、少しがっかりしてしまうかもしれません。

<相棒の存在の大きさ>

今となっては伝説的な扱いのデヴィッド・ボウイも、『世界を売った男』(1971)の評判はよくなく、彼の音楽を理解してくれる人はいなかったんですよ。そんな中、彼の才能を信じ、いっしょにどさ回りをしてくれたロンの存在は大きいですね。彼がデヴィッドをいろんなところに連れて行き、関係者を紹介してくれていたので。とはいえ、デヴィッド・ボウイはその独特の世界観から、相手に迎合するような態度を取らなかったため、いつも人を不快にさせて、そのたびにロンが苦労するというパターンではありましたけど(笑)

それでも、ロンはデヴィッドを見捨てませんでした。このことから、“1人の熱狂”からすべては始まるんだなと思いましたね。もちろん、最初からデカい規模で受け入れられるなら、それに越したことはないです。でもまずは、1人でも自分の才能を信じてくれる人を見つけることが大事なのかもしれないなーって。その人の熱量がどんどん伝播していくんじゃないかと思います。

<その人に合ったやり方>

あと、デヴィッドにはデヴィッドなりのやり方があるっていうのも感じましす。インタビューアーにペコペコして、曲のよさを語るっていうのは、必ずしもみんながみんな得意なわけじゃありません。デヴィッドは歌えるんだから、もうそれで表現していくしかないんですよ。まさに、物事には“その人にあったやり方”があるというのを痛感しました。結局、作中でデヴィッドがこなしてきたインタビューが活きたかどうかは定かではありません。「デヴィッド、キミは何者だ?」という質問に答えが出せず、悶々としていたときに、ロンから「それなら他人になればいいじゃないか!」と言われたことがきっかけで生まれたジギー・スターダスト。そこからデヴィッド・ボウイの名は一気に広まることになるので、本当に何がきっかけでヒットに繋がるかはわかりませんね。これはマーケティングの観点から生まれたものではなく、デヴィッド・ボウイという類稀なる存在だからこそ成せる業。再現性はないけれど、夢があっていいなと思いました。

<歌をもっと聴きたかった>

ただ、どうせならもっと歌を聴きたかったですね。一応、デヴィッドが売れる前の細々とした歌唱シーンはあるものの、あまり魅力は伝わってきませんでした。ロンの一言で方針を固めてから、ヒットしていく過程も描いていればそういうのも観れたんでしょうが、「他人になる」と決めた後のシーンが、もう売れっ子になったところで、しかもそれがラスト20分。最後にライブのシーンが少しある程度だったので、そこはやや物足りない感じはありましたね。

<その他>

この手の映画としては、歌も少なく、伝記的映画らしく淡々と進んではいますが、世界的スターの苦悩と革命が知れる点では、有意義な作品だと思いました。


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