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次々と重なる出費に笑いと涙がほとばしる金欠エンターテインメント『老後の資金がありません!』

【個人的な評価】

2021年日本公開映画で面白かった順位:42/230
   ストーリー:★★★★★
  キャラクター:★★★★★
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★★☆
映画館で観るべき:★★★★☆

【要素】

コメディ
ヒューマンドラマ
お金
結婚式費用
葬儀代
失業
浪費

【元になった出来事や原作・過去作など】

・小説
 垣谷美雨『老後の資金がありません』(2015)

【あらすじ】

主婦・後藤篤子(天海祐希)は困っていた。家計は妻に任せっきりの夫・章(松重豊)の給料と、篤子がパートで稼いだお金をやりくりして、フリーターの娘・まゆみ(新川優愛)と、大学4年生の息子・勇人(瀬戸利樹)を育て上げた。憧れのブランドバッグも我慢して、老後の資金をコツコツと貯めてきた……はずなのに!

身の丈に合っていたはずの篤子の生活が、突如綻び始める。入院していた義父の死に際に、章の妹・志津子(若村麻由美)から喪主を押しつけられ、葬儀代400万円近くを支払うことに。折しも、密かに正社員登用を期待していたパート先をリストラ。

なかなか次の仕事が見つからないところに、まゆみが結婚相手を連れて来た。年収150万円のバンドマン・琢磨(加藤諒)は、地方実業家の御曹司につき、盛大な披露宴を希望しているという。しかも、費用は両家の折半で、
最低でも300万円負担することに。

700万近くあった貯金があっという間に底をついてしまいそうな中、今度は章の会社がまさかの倒産!?結婚30周年目前、夫婦そろって失職するハメに。いよいよ毎月9万円の姑・芳乃(草笛光子)への仕送りさえ捻出できなくなった篤子は、志津子夫婦との話し合いの席で、芳乃を引き取ると口走ってしまう。

やむなく姑との同居がスタートするも、元・老舗和菓子屋女将は超がつくほどの浪費家だった…!芳乃の豪快な金遣いに加えて、今度はいきなり「生前葬をする」と言い出した!?ありとあらゆるお金の問題に振り回されてきた篤子の我慢は、ついにピークに達する!!

果たして篤子は、この絶体絶命のピンチを切り抜けることができるのか?!

【感想】

これは笑っちゃうほど面白おかしい映画でしたね!お金あるあるのエピソードがてんこ盛りで、老若男女問わず楽しめる金欠エンターテインメントですよ!特に、冠婚葬祭を一通り経験しているであろう30代以降の人なら、より一層この家庭内不況に共感できるかもしれません(笑)

<人生の節目に訪れる大出費>

この映画のポイントは、やはり日本人なら多くの人が共感できるその設定にあります。葬式、結婚、節約、浪費、、、どれもお金にまつわる中で頭を悩ませるところですよね。中でも葬式と結婚は、見栄を張りは出したらキリがない沼ですよ。

葬儀は、故人が地位ある人で、盛大にやりたいとなると、いくらでもお金かけられちゃいますよね。主役は故人なのに、もはや残された人の自己満足でしかない気もしますけど(笑)棺とかどうせすぐ燃えちゃうのに、そこまでこだわる意味が、僕にはわかりませんが。。。

結婚式も大変ですよねー。これも派手にやりたいってなったら、かける費用にキリがありません。聞いた話ですが、「祝いごとなんで」という悪魔の一言で合理性のなさを正当化されてしまうのは怖いです(笑)

<現実的な問題を明るく楽しく描く>

そんな中で、夫婦そろって失業するわ、姑は浪費家だわで、お金は次から次へと飛んで消えて行きます。これ、実際にあったら相当悲壮感漂いますよね。。。下手したら「あー、死にたい」って暗い雰囲気にもなってしまいます。それを、コミカルなキャラクターと演出によって明るい笑いに変えているのが、この映画のいいところだなって思いました。

あと、変に金策に走らないのもよかったですね。むしろ、そこはまったく問題じゃないんですよ。「どうやってお金を稼ごう」とか「どうやって支払いを減らそう」とか、そういう正解がないところには触れていません。「お金がない現実とどう向き合っていくか」という深いテーマを投げかけているんです。それは、「人生において何が大切なのか」という部分にも通じており、ラストで描かれる篤子たちの選択には清々しさがありました。

まあ、"気の持ちよう"みたいな精神論と言われたらそれまでですが、結局セルフコントロールできるのって自分自身だけなので、そういう意味でも正しいメッセージかなって。

<笑えるだけじゃないのも推しポイント>

この映画、ちょいちょいお笑い芸人なんかも出てきて、出オチ感満載で笑えるなど、全体的にコメディ調なんですけど、笑って終わりかと言ったらそうじゃないんですよね。家族の絆というか、結局人間は誰かといっしょにいたいんだなーっていう涙ちょちょぎれる感動エピソードもあったりするんです。お金のあるあるに共感しながら、笑って泣けるなんて最高じゃないですか!

<その他>

天海祐希さんはご存知の通り、元宝塚歌劇団ですよね。草笛光子さんも松竹歌劇団という1928年から1996年にかけて存在したミュージカル歌劇団の出身なんですよ。その“歌劇団OG”による掛け合いも見どころなので、ぜひこれは映画館で観て欲しいですね。


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