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コンサートの常識を覆す『SLEEP マックス・リヒターからの招待状』

【個人的な評価】

2021年日本公開映画で面白かった順位:29/64
   ストーリー:★★★★☆
  キャラクター:★★★☆☆
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★★☆
映画館で観るべき:★★★☆☆

【以下の要素が気になれば観てもいいかも】

ドキュメンタリー
睡眠
眠るためのコンサート

【あらすじ】

あるときはロサンゼルスの野外のグランドパークで、あるときはシドニーのオペラハウスや、アントワープの聖母大聖堂で。そしてパリ、ベルリン、NYといった世界各地の会場で開催された真夜中のコンサート。

演奏されるのは、ポスト・クラシカルを代表し、映画『メッセージ』に楽曲を起用したことでも有名な天才音楽家マックス・リヒターによる“眠り”のための楽曲「SLEEP」。

脳科学者デイヴィッド・イーグルマンのリサーチのもと作られた8時間以上にも及ぶ楽曲が丸ごと、真夜中から明け方にかけて演奏され、観客は会場に並べられたベッドに横になって眠ることも、歩きまわることも自由。

そんな驚くべきイベント「SLEEP」の全貌が、マックス・リヒターとプロジェクトを支え、公私にわたるパートナーであるユリア・マールのインタビューと共に描かれる。

まるで、観客も実際にコンサートに参加したかのような、極上の癒しと覚醒を体感する、奇跡のドキュメンタリーが誕生。

【感想】

革命ですよ、これ。コンサート革命。だって、眠るためのコンサートってヤバくないですか?普通、コンサートと言えば、「観客は演奏を聴くためのもの」っていうのが常識じゃないですか。それをね、聴いててもいいし、寝ててもいいし、歩きまわってもいいっていうんですよ。通常のコンサートは演奏者が主体なのに対して、これは観客が主体。だから、彼らの自由だと。眠りという静かで安らかな行為をもって、常識破壊という革命を起こしている映画でした、これは。

そもそものコンセプトがいいんです。慌ただしく時が流れる現代は、企業にとってはいいかもしれないが、果たして個人にも同じことが言えるのか。マックス・リヒターはそこに疑問を持ち、一度そういった流れから解放されて、リラックスできる環境を提案したいという想いから、今回のコンサートを企画したそう。

映画で流れてくる音楽は、興奮も感動もなく、空気のように自然な感じです。それは、脳科学者である友人といっしょに作ったからなんです。人間には約860億個の脳細胞があって、起きているときは個別に活動しているものの、眠っているときは集団的に動くそう。それが、ゆっくりとした脳波に表れてるんですけど、その脳波のリズムと合うにはどういう音楽を作ったらいいかっていうのを、マックス・リヒターは考えるんです。そこでできたのが、低周波のみで構成された音楽。それは、胎児が子宮内にいるときと同じ環境らしく、非常に心地いいらしいんです。

だからこそ、これは映画館で観るべき映画なんです。映画館のように音響設備がしっかり整ったところで。家だとなかなかわかりづらいかもしれませんね。ただ、ちょっとでも疲れていたり、眠たいときにこれを観ると、、、多分寝落ちします(笑)いや、そういうコンサートのドキュメンタリーなんでいいんですけど、、、映画として観るからには最後まで起きていたいですよね(笑)

マックス・リヒターって、今回初めて名前を知ったぐらいなんですが、若い頃は苦労したそうで、自らの創作活動の費用の捻出や家族を養うために、映画音楽も手掛けてきたとのこと。その代表作のひとつが『メッセージ』なんですけど。多分、本人としては自らの創作活動を優先したかっただろうけど、ライスワークで映画の音楽を作れてしまうのだから、才能しか感じませんよね(笑)

そんな彼の言葉ですごく印象的なものがありました。「創作活動は、自分の今いる世界から、新しい世界へ連れて行ってくれる。 その先に何があるかということは問題ではなく、その新しい世界へと一歩踏み出す過程が大事なのだ」と。心にしみました。

この「眠るためのコンサート」、日本ではやらないのかな~。一度体験してみたいですね。


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